社会課題に目を配るトップシェフ、パティシエ、バーテンダー10人が集結。新生「丸の内シェフズクラブ」始動!


丸の内エリアで「食」を切り口に、よりよい未来を目指す活動を続けてきた「丸の内シェフズクラブ」。設立15年を機にリニューアルを敢行、第2期メンバーを決定。広い視野と高い志を持つメンバー10名が集まった。

丸ビル、東京ビル TOKIAなどの商業施設入りビルを東京・丸の内で多数展開する三菱地所。2008年よりこの地を舞台に、「食」の視点からよりよい社会を目指すプロジェクトに取り組んでいる。

その最初期から始動したプロジェクト「食育丸の内」は、2021年に「EAT&LEAD」へと引き継がれた。「EAT」すなわち「食」と、「LEAD」すなわち「導く」「伴走する」という意味の単語を組み合わせたプロジェクト名の通り、「食」のイベントを通して、多くの人たちを、より豊かな未来へと導くことを目指す。

2月6日開催の「EAT&LEADトークサロン」。左より薬師神 陸さん(ユニ)、奥野義幸さん(ブリアンツァ トーキョー)、飯尾彰浩さん(飯尾醸造)。

「食を通して社会を変える」マインドの持ち主

そのEAT&LEADの牽引役となっているのが、「丸の内シェフズクラブ」だ。こちらは2009年に、丸の内エリアで活躍するシェフたち26名――「ミクニ マルノウチ」三國清三シェフ、「リストランテ アルポルト」片岡 護シェフ、「招福楼」中村成実氏ら――が集まり、服部幸應氏(学校法人服部学園理事長・服部栄養専門学校校長)を会長にして発足したコミュニティ。主に「都市と食」に関わる社会課題に向き合い、生産者・消費者・シェフをつなぐイベントを開催してきたが、今年の2月に第2期メンバーへとバトンタッチ。そのお披露目が「EAT&LEADトークサロン」で行われた。

第2期メンバーは10名。料理人のほかバーテンダーとパティシエも参加する。

・岩澤正和さん(ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ オーナーシェフ)
・奥野義幸さん(ブリアンツァ トーキョー オーナーシェフ)
・加藤峰子さん(ファロ シェフパティシエ)
・後閑信吾さん(SGグループ オーナーバーテンダー)
・永島義国さん(バイバイブルース トーキョー シェフ)
・中村嘉宏さん(招福樓 若主人)
・樋口敬洋さん(サローネ グループ 統括料理長)
・堀内さやかさん(御料理ほりうち 店主)
・薬師神 陸さん(ユニ エグゼクティブシェフ)
・米澤文雄さん(ノーコード オーナーシェフ)
(50音順)

※メンバーの詳しい紹介はこちら(「丸の内シェフズクラブ」公式サイト)
https://shokumaru.jp/eat-and-lead/chefsclub/

メディア関係者を招いての新メンバーお披露目とトークサロンの後には、手巻き寿司パーティーを開催。新メンバーたちが手がけた、福井県産食材を用いた料理を具材とする。料理は実に多彩で個性豊か。

2022年より定期開催されている「EAT&LEADトークサロン」でファシリテーターを務めるなど、EAT&LEAD のコンセプトを体現し続けてきた経緯を持つ薬師神さんが声がけ役を務めた。「料理や製菓、バーテンダーとしてのトップクラスの能力を持ちつつ広い視野も備える、僕が普段から尊敬している方々に参加していただきたいと思いました。丸の内に縁のある人もいれば、そうでない人も。食を通して社会を変える、そんなマインドの持ち主でいらっしゃることを大切にしています」と話す。

実際、世界や日本の食関連の業界には今、課題が山積している。環境破壊につながる大規模農地開拓、水産資源の減少、第一次産業の担い手の高齢化といった産地の問題にはじまり、厳しい労働環境と人手不足、専門技術の継承の危機、食材費や人件費の高騰といった飲食店継続に関わる課題までさまざま。今、まさに食の業界に携わるプロたちには、意識の変革が求められている。

第2期メンバーに集まったのは、こうした問題に率先して立ち向かってきた人たち。普段から個々に活動し、発信しているが、集まることで大きなインパクトとうねりを生み出せるはず。新メンバー10人の活躍が期待される。

コミュニケーションをどうしている?

2月6日には第2期メンバーのお披露目会が行われると同時に「EAT&LEADトークサロン」も開催。「コミュニケーション力から見るレストラン経営哲学」をテーマに、第2期メンバーの薬師神さんと奥野義幸さん(ブリアンツァ トーキョー オーナーシェフ)、ゲストとして京都府北部、宮津市にて伝統製法で酢を醸造する「飯尾醸造」5代目当主、飯尾彰浩さんが加わりトークを繰り広げた。

ユニの薬師神さんは、フラットなチームを心がけると話す。

薬師神さんはフランス料理店ユニのシェフであるとともに、隣接する「ソーシャル キッチン トラノモン」でオリジナルEC商品の開発や企業との協業、さらには産地や被災地応援のイベントも開催するなど、多彩な動きを見せる料理人。

一方、奥野さんは複数の業態のイタリア料理店を東京駅前常盤橋タワーなどに展開する他、2022年には米国LAで「トーキョーイタリアン」をテーマにした店「マガリ ハリウッド」をオープン、23年には横浜に「中東イタリアン」をテーマにした「トラットリア タブレ」を米澤文雄さん(ノーコード オーナーシェフ。同じく2期メンバー)と開業するなど、活発な展開が注目を集める料理人兼経営者だ。

8店舗を展開するラ ブリアンツァの奥野さんは、総勢60名のスタッフを率いる。

そして飯尾さんは、自らの蔵の発展に努めるのみならず、地元での無農薬の米作りや、地元素材の魅力を伝えるイタリア料理店と寿司店の経営とバックアップを行うほか、丹後エリアで食の仕事に就く仲間と共に同地の観光活性化に取り組むなど、ダイナミックな活動でも知られる人物。

彼らが「よい企業とは?」「経営とコミュニケーション」などについて、三者三様の考えや実践の方法を披露した。

たとえば薬師神さんは、主にまかないの時間にスタッフとコミュニケーションをとり、「あそこの産地に行きたい」などやりたいことを各自が気軽に発言できる空気作りを普段から大切にしているという。と同時に、そのやりたいことを実現するにはどう時間を捻出するか、店を閉める日を増やしたら何%減価率を下げてどう利益を確保するかといった、経営に直結する話も重視。スタッフの責任感を醸成する。

飯尾醸造では、合意形成(コンセンサス)ゲームを用いたチームビルディング研修を2年に一度、スタッフ全員で受講。各々が自分の特性を把握し、周囲とのコミュニケーションに生かすという。

飯尾さんは、飯尾醸造にとってお客である、とある寿司店を営む夫妻と交わしたコミュニケーションについて紹介。その夫婦は「納得のいく鮨飯を作りたい」と、普段店で使用している米と塩を持参して飯尾醸造まで訪れ、飯尾さんと共に酢飯のレシピを考え直したのだという。

その後、その店は大繁盛店に。飯尾さんも、深いコミュニケーションによってお客の課題を解決したこの体験がきっかけとなり、「江戸前シャリ研究所」を設立。酢を造るのみならず、よりよく使ってもらうプロデューサー的な役割にまで仕事を広げた。

奥野さんは「料理人の今後」に対する自らの展望に言及。労働時間の減少で若手の技術研鑽の時間がかつてより減り、料理人全体のスキルが下がるのでは? という意見があることを認識した上で、「でも自分は、現代ならではのプラスの側面を見たい」と話す。

昔は「見て覚えろ」で教える側の努力が不十分だった。今は、早い成長を促す教え方をこちらが学び、実践し、YouTubeなども活用しながら若手を育てればよい。まだ改善できることはいくらでもある、と話した。

盛況を博した手巻き寿司パーティー。なお、シャリには福井県産「いちほまれ」と飯尾醸造のお酢が使われた。

丸の内シェフスクラブはこれから「都市と地域の協働」「食文化の継承」「シェフの可能性」をテーマにした活動を予定しているとのこと。食は、社会のあらゆる側面とリンクしている。丸の内シェフズクラブとEAT&LEADがどのような流れを作り出していくのか、楽しみだ。

EAT&LEAD公式サイト
https://shokumaru.jp/eat-and-lead/

text:料理王国


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