「食の宝庫」と呼ばれる山形県・庄内地方で、イタリア料理店「アル・ケッチァーノ」を営む奥田政行さん。
地元の食材の魅力を最大限に活かした料理は、人を呼び続けている。
「庄内の伝統野菜や山海の食材の魅力を伝えることが、アル・ケッチァーノの料理を作る上で大切なことです。それはパスタであっても同じ。具体的には、個々の素材の味がしっかりたっていること、味の『キレ』が大切だと思います」
パスタをまず口に入れたときに、個々の具材の味がしっかり感じられる。さらに噛むことで、具材とパスタが口の中で混じりあうなかで、食感と味の変化を楽しんでもらう。それがアル・ケッチァーノにおける「パスタの条件」なのである。
塩分濃度 1%
塩分濃度 2.5%
パスタをゆでる際に塩を使うのは「歯ごたえをよくするため」とよく言われる。なぜなら、パスタの主成分であるデンプンは、熱せられると水分を吸収し、糊化する(糊のようにベトベトの状態になること)。しかし、塩にはデンプンが水分を吸収するのを阻止する働きがあるため、塩水でゆでると糊化が遅くなり、ゆであがりにコシが残る。逆に、真水でゆでると糊化しやすく、やわらかくゆであがる。
ただし、表面の糊化を妨ぐ効果が出るのは、塩分濃度2.1%くらいから。一般にパスタの塩分濃度として用いられている1%では、真水でゆでても同じ。
塩分濃度2.5%の湯でゆでたパスタは当然しょっぱい。そこで、ゆで上げ後に「真お湯」を使ってゆすぐというのが奥田流。
このとき、上のグラフのように、合わせるソースによってゆすぎ時間を変えるのがポイント。塩を加えずにオイルだけで仕上げるパスタは、さっとゆすぐだけ。醤油ベースの濃い味のソースと合わせるならしっかりと。コンマ一秒の世界の差が味にしっかりと出てくる。この方法であれば、ソースに合わせてパスタをゆでる塩分を変える必要がなく、調整が自由自在になる。