「アル・ケッチァーノ」奥田シェフ流【パスタ論】


噛むことで、口の中で具とパスタが一体化していく過程にドラマ性をもたせたい。

ソースによってあおりを変える

パスタをソースに投入後、フライパンの中で振ると、パスタの主原料である「小麦粉」に、ソースの「水分」と「熱」が加わる。そして、振ることによって、パスタとパスタがこすれ合い、とろみに変化していく。そして、振れば振るほどソースのとろみが強くなる。このとろみを活かすため、トマトソースはしっかりあおり、とろみをつけたくないクリームソースやオイルベースは、振らずに混ぜ合わせる。

トマトソースはしっかりふって乳化させる。

トマトソースは、あおってとろみを出し、パスタにからめて仕上げます。夏は酸味を少し強めにしたいので、あおりは控えめに。冬は酸味をとろみで丸くして濃厚に仕上げたいのでしっかりとあおります。

フレッシュトマトのフェデリーニ
トマトのフレッシュな味わいを活かしたソース。バジルでシンプルに仕上げ、トマトの旨味を際立たせている。パスタ投入後にしっかりとあおり、とろみをつけて仕上げることで、酸味のカドがとれ、丸みのある味に。

クリーム系は円を描くようにからめる。

クリームソースのパスタは、だしも塩も入った濃厚な味わい。ソースが主役になります。だから、パスタの存在感は抑え、ソースの味を前面に出すよう、パスタの表面をソースの膜で覆います。

【NG】クリームソースはあおらない。クリームソースのおいしさは、パスタの表面に膜を作り、ソースをしっかりとからませることで生まれる。振って空気を入れてしまうと、からみが悪くなる。分離してしまうことも。

舟形マッシュルームのスパゲティーニ
マッシュルームは手でつぶすと酵素の作用で黒くなり、コクと旨みが出る。これをコンソメで煮てミキサーにかけ、クリームでのばす。アル・ケッチャーノ人気No.1パスタ。

オイル系はあえるだけ。

パスタの塩分は、ゆでる際に入れた塩のみ。オイルには塩を加えません。また、パスタをからめるのは火からおろしてから。火にかけたままだとオイルと熱とでんぷんでルー状になり、うどんのような食感に。

イカとズッキーニのペペロンチーノ
イカとニンニクの風味をつけ、オイルをからめたあっさりとした味わい。ズッキーニ、トマトなどの野菜はさっと火を入れ、それぞれの味をより鮮明にたたせる。

「調理場はサッカー場と同じ。刻々と状況が変わる。それを瞬時に判断する力を、スタッフには日々の営業の中で身につけて欲しい」と奥田シェフ。

Masayuki Okuda

山形県鶴岡市生まれ。高校卒業後、イタリア料理、フランス料理、フランス菓子、ジェラート店などで修業を積む。2つの店で料理長を歴任後、2000年、「アル・ケッチァーノ」オープン。2004年、山形県庄内支庁より庄内の食材を全国に広める「食の都庄内」親善大使に任命される。なお、庄内地方の都市のひとつ、鶴岡市は2014年、ユネスコ創造都市ネットワークへの加盟が発表された。

アル・ケッチァーノ
Al-che-cciano
山形県鶴岡市下山添一里塚83
☎0235-78-7230
● 11:30~14:00LO
18:00~21:00LO
●月休
●コース 3800円~15000円(昼夜とも)
●36席
www.alchecciano.com

瀬戸由美子=取材、文 星野泰孝=撮影

本記事は雑誌料理王国253号(2015年9月号)の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は253号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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