2022年5月24日
出張料理人として活躍し、遠州流の家元付き料理人でもある小室光博さん。茶事に通ずる丁寧な仕事と細やかであたたかなおもてなしは、訪れるものの心を捉えて離さない。2018年から閑静な住宅街にある一軒家へとステージを移し、昨年には20周年を迎えた「懐石 小室」の現在を訪ねた。
お造り
秋に獲れる鯛は、うろこが赤く染まることから紅葉鯛とも呼ばれる。器は、竜田川に流れる紅葉を描いた意匠乾山色絵竜田川図向付をモチーフに、京都清水焼を代表する澤村陶哉さんに特注したもの。脂のりのよい鯛は薄造りに、紅葉の葉に見立てて盛り付ける。
神楽坂の繁華街から奥まった場所にある「懐石 小室」。竹垣をあしらった趣ある露地を歩くと自然と期待が高まる。
京都清水焼の澤村陶哉や九谷焼の須田菁華などの作品を中心に20代から収集。器は毎月変わり、中には数週間しかお目見えしない器もある。「親方からの受け売りですが、作りたい料理にぴったりくる器があるというのは料理人として幸せなことですね」と小室さん。コロナ禍でも「未曾有の事態は今までの歩みが間違いなかったか振り返る時期。今を有意義に過ごせれば、必ずいい未来が拓く」と前を向く。