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【名店のまかないOstu/宮根正人さん 】時間のある時に作って、後は焼くだけ!チーズがとろける「パスタ アル フォルノ」


残り物の食材を使い切って美味しい「まかない」に!

代々木公園のほど近くにある「Ostu(オストゥ)」。店名は北イタリア・ピエモンテで「食堂」を意味する言葉です。一歩足を踏み入れると、クリームイエローの壁に清潔感のある真っ白なクロス、壁にはアンティークのプレートが飾られ、どこか懐かしさを感じさせる居心地の良い空間がそこにはあります。

オーナーシェフの宮根正人さんが腕を振るうのは、ピエモンテを中心とした北イタリアの郷土料理。6年間のイタリア修行で学んだ本場の味を忠実に再現することを大切にしている宮根さんが、料理を作る面白さに目覚めたのはなんと、小学生の頃。

作る楽しみ、見る楽しみ、さらに食べる楽しみ。

「小学校2年生くらいの時に、母がパートに出るようになったのがきっかけで、放課後家に帰ると自分の好きな料理を作って食べるようになりました。それまでも、給食の献立で気に入った料理を母と一緒に作っていたので、その延長のような感じで、今度は一人で作ってみようと考えたんです」

料理本を見ながら作るほかに、自分でいろいろアレンジすることも好きだったそう。

「図画工作のようなノリで、自分の手を使って何かを作り上げる対象が料理だったんです。料理には作る楽しみ、完成品を見る楽しみに加えて、さらに食べる楽しみがある。それが何よりの魅力でしたね。中学〜高校生になってからも引き続き料理を作るのは好きで、パンやピッツァなども作るようになっていました」

初めて知ったイタリア料理


高校卒業後は調理師専門学校へ進学し、パスタ店でアルバイトをするようになった宮根さん。実はそこで初めて、パスタ、ピッツァ、ドリアなど、これまで自分が好きでよく作っていたものがイタリア料理だと知ったそう。

「学校では洋食というくくりで主にフランス料理の技法を学んでいたこともあって、イタリア料理がどんなものか、恥ずかしながら知らなかったんですね。でもここで、自分が進む方向性はイタリア料理だと確信することができました」

最初の就職先は、当時代官山にあった「アントニオ」。イタリア人のアントニオお爺さんが開いた、日本のイタリア料理の草分け的なお店でした。

「厨房には自分を含めて6〜7人の料理人がいて、その半数以上がイタリア帰り。ほかはイタリアに行く予定のある人たちで、そのような環境から自然と『自分もイタリアに行くのだろうな』と考えるようになっていました」

いざイタリアに渡ると、やはり様々な発見があったそう。印象的だったのが、トウモロコシの粉を煮込んで作る定番料理「ポレンタ」についてのエピソード。

「実は、日本で教わった作り方と全く逆だったんですよ(笑)。日本では何度作ってもシェフからOKをいただけなくて、イタリアへ来て実際に作っているのを見て『これだったのか!』と。やはり現地で本物に触れることは大事なんだと思いました」

イタリアで出会った衝撃的なまかない

「修行先は比較的保守的な人が多いと言われる北イタリアでしたが、私がまかないを担当した中ではチャーハンが人気でしたね。カレーを作ったこともありますよ」

と宮根さん。イタリアで出会った最も忘れられないまかないは、当時お世話になっていたお店のシェフのお母さんが作ってくれたという「ラビオリ」でした。

「具材は肉をバターで炒めてトマトソースを絡めただけの、とってもシンプルなもの。それなのにものすごく美味しくて、同じレシピで同じように作っても、きっとその味にはならない。長い年月をかけて同じものを作り続けることによって完成された味なのでしょう。料理は技術だけじゃないんだと思い知らされました」

イタリアの厨房でもよく食べたまかない

「Ostu」では週に一度、宮根さんがまかないを担当しているそうです。

「まかないは基本若手が担当し、私の担当は日曜日だけ。毎週「カレー」を作っています。基本は欧風カレーですが、いろいろ工夫してスパイスを使います。たまにお客様にもお出ししたところ好評だったこともあり、テイクアウト限定の『シェフ謹製欧風カレーパン』が誕生しました」

「Ostu」のまかないのテーマは3つ。

・食材を使い切ること
・美味しいものを作ること
・ジャンルを問わず自由に

今回ご紹介する「パスタ アル フォルノ」はまさに、余った食材の寄せ集めで作るイタリアのまかない料理。チーズを溶かし込んだベシャメールソースにいろんな具材を混ぜてオーブンで焼く、シンプルなグラタンです。

「向こうでは前日や朝のうちに仕込んで冷蔵庫に入れて、あとは焼くだけの状態にしておくんです。短時間で簡単に作れて、しかも腹持ちも良い。うちの店でもたまに作りますが、若いスタッフに喜ばれますね」と宮根さん。


焼いている途中で一度オーブンから出して、可愛らしい目玉焼きを加えるのは宮根さんのアイデア。チーズはピザ用チーズでもOK。具材もこのために用意するのではなく、その時にあるものを使って美味しく食べ切ることに意味があります。 「世代を選ばず、みんなで食べられますよ!」と宮根さんが太鼓判を押すまかない料理。
日々の食卓はもちろん、ちょっとしたホームパーティにもぴったりですよ。

Ostu 宮根正人さんのまかない【パスタ アル フォルノ】

材料(4人分

<ベシャメールソース用>
小麦粉…100g
バター…100g
牛乳…1L
チーズ…100g
塩・コショウ…適量
<具材用>
ハムやベーコン…100g
パスタ…150g
好みの野菜…100g
チーズ…50g
玉子…4個
オリーブオイル…適量
(1)ベシャメールソースを作る。牛乳を沸かしている間に、別の鍋を火にかけバターを溶かす。焦げ付かないよう火は弱めに。バターが溶けたら小麦粉を加え、ダマにならないよう手早くかき混ぜる。
(2)牛乳が沸騰したら(1)に加える。お玉1杯からスタートし、2〜3杯と少しずつ増やしながら加えていく。牛乳を加えるたびによくかき混ぜて均一になったら、次の牛乳を加える。これを牛乳を全て入れるまで繰り返す。
(3)全体がなじんで、なめらかになったらチーズを加える。チーズは使うタイプによって、溶けやすいよう削ったりちぎったりしておく。さらに塩・コショウで味を整える。
(4)具材は1〜2cmの大きさに刻んでおく。パスタや野菜もあらかじめ茹でておく。バットの内側にバター(分量外)を塗っておく。
(5)ベシャメールソースの中に具材を加え、かき混ぜたらバットに流し込む。
(6)表面にチーズをまんべんなくトッピングして、全体にオリーブオイルを振りかける。
(7)220度に温めておいたオーブンに入れ、10分ほどして表面に少し焼き色が付いたところで一度取り出す。
(8)大きめのスプーンを差し込み、4箇所を窪ませる。その窪みに1個ずつ玉子を割り入れ、再びオーブンへ入れて15〜20分ほど焼く。
(9)表面にしっかり焼き色が付いたらオーブンから取り出し、あればイタリアンパセリを振ってできあがり。
Masato Miyane

1974年、埼玉県生まれ。調理専門学校卒業後、「アントニオ」など都内イタリア料理店で修行を重ね、渡伊。ロンバルディア州マントヴァ「アル・ベルサリエーレ」での1年を経て、ピエモンテ州バローロ「ロカンダ・ネル・ボルゴ・アンティーコ」で約5年間を過ごす。2006年に帰国し、翌2007年にオープンした「Ostu(オストゥ)」のシェフとなる。2011年8月、同店のオーナーシェフに。

【店舗情報】
店名: Ostuオストゥ
住所:東京都渋谷区代々木5-67-6
代々木松浦ビル1F
TEL: 03-5454-8700
営業時間:12:00~15:00、17:00~20:00(木曜のみ 15:00〜20:00)
コース 昼3600円〜、夜 7000円
定休日: 水曜休
席数:16席

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田中英代=取材、文 小沼祐介=撮影
text by Hanayo Tanaka photos by Yusuke Onuma


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