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フランス菓子研究家大森由紀子さん太鼓判!絶対外さないパティスリー5選


 昨今、日本もフランスにひけを取らない菓子作りの土壌を築き上げた。さらにそこに、新たな戦力としての若手が育ってきているのはうれしいことだ。彼らは、自ら手紙を書いて修業先を探し、レシピを覚えこんで仕事をしていた一世代前のパティシエたちとは異なり、携帯やパソコンで情報を収集し、近況を発信し合う。さらに修業先のフランスでは、週35時間労働の中でいかに美味しいお菓子を作るかを工夫する。

 そのために必要なのは、効率よく仕事ができる機械や道具だ。そんな時代の流れや環境の変化によって、新しいスタイルのお菓子が生まれてくるのは当然だ。その昔、アントナン・カレームが絞り袋を作り、シャルロットを創ったとき、人々は感嘆の声を上げただろう。1950年代には、ル・ノートルが、バタークリームの代わりにノルマンディーの生クリームで軽やかなお菓子を仕上げたときも、皆が一斉にそれに従った。お菓子は進化し留まることを知らない。が、いつの時代も変わらないもの、それはその時代に合った美味しさの追及である。では、現在の日本のパティスリーにおけるおいしさへのアプローチはどんなものなのだろうか。5人の異なるスタイルのパティシエを訪ねた。

 1人目は、女性パティシエとして独立を果たした「アディクト オ シュクル」の石井英美シェフ。OLだったがパティシエの夢を捨てきれず、フランスや「アテスウェイ」「ヴィロン」など都内のパティスリー、ブーランジェで修業。2014年に念願の店をオープンした。しっかり焼きこんだフランや、表面をシュトルイゼル生地で覆って焼くスタイリッシュなパリ・ブレストが並ぶ。品数は少ないが、一つひとつから丁寧な仕事が伝わる。生地のきめと香高いラム酒風味のシロップが上品に融合しているサヴァランはお勧めだ。

【東京・都立大学】アディクト オ シュクル Addict au Sucre

「甘いものに中毒している」と言う石井英美シェフ。
東急東横線都立大学駅から徒歩5分、小さな商店街の中にある。

アディクト オ シュクル
東京都目黒区八雲1-10-6
03-6421-1049
● 10:00~19:00
● 火休、水不定休
● 4席

 次に紹介したいのは、「パティスリービガロー」の石井亮シェフ。「レピドール」のシェフだったころに挑戦したコンクールでの輝かしい受賞歴もあり、仲間のパティシエからも一目おかれる存在だ。目指すのは自分らしいフランス伝統菓子。オペラは通常アーモンドパウダー入りの生地を使用するのだが、石井シェフはヘーゼルナッツ風味を加え、味のバリエーションを広げることに成功。伝統菓子をさらに美味しく変化させている。

【東京・桜新町】パティスリー ビガロー
Patisserie Bigarreaux

石井 亮シェフ。
パリのパティスリーのようなシックな店内にはイートインスペースも併設。

パティスリー ビガロー
東京都世田谷区桜新町1-15-22
03-6804-4184
● 9:00~19:00
● 水休

 また、パティシエといっても、レストランのデザート部門に長く務めた「パティスリーシンフラ」の中野慎太郎シェフは、いかにお客にいい状態で美味しく食べてもらえるかに心を砕く。例えば「ヘーゼルナッツ」は、ソースを添えて完璧な形で提供する。「ガトー・ショコラ」は、生クリームを添えるので、生地は冷たい状態でも口どけの良い状態に焼き上げる。「ひと皿のストーリーが持ち帰れるお菓子」は、他店にはないコンセプトだろう。

【埼玉・志木】パティスリー シンフラ
Shinfula

中野慎太郎シェフ。
志木駅から車で5分。閑静な住宅街に建つ。中野シェフは、「NARISAWA」のシェフパティシエ を務めた後、独立。

パティスリー シンフラ
埼玉県志木市幸町3-4-50
048-485-9841
● 11:00~20:00
● 月・不定休
www.shinfula.com

 オーナーシェフではないが、今や店になくてはならないシェフ2人も紹介したい。1人は「オクシタニアル」の中山和大シェフ。今年の製菓の世界大会「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」にも出場する実力派だ。この店は、MOFパティシエのステファン・トレアン氏監修のもと、中山シェフが商品開発をする。生菓子の高さは低め。しかしその薄さの中に、シェフのこだわるムースと生地のバランスの良さを表現している。

【東京・日本橋蛎殻町】オクシタニアル 東京本店 Occitanial

中山和大シェフ。
MOF(フランス国家最高職人)の称号をもつステファン・トレアン氏監修。フランス菓子の伝統に、高い技術力と感性が加わった、新鮮で驚きのある菓子が魅力だ。

オクシタニアル 東京本店
東京都中央区日本橋蛎殻町1-39-7
03-5645-3334
● 10:00~19:00(18:30LO)
● 不定休
http://occitanial.jp/

 もう1人は「ラ・テール洋菓子店」の濱田舟志スーシェフだ。「ラ・テール」は、身体によい素材にこだわる菓子店だが、6年間のフランス修業を経、日本でも数々のコンクールでの受賞歴を持つ濱田シェフが、この店の底力となっているのだ。昨年のガレット・デ・ロワコンテストでも優勝。その繊細なクープ、微妙な焼き加減は、まさに芸術である。

【東京・池尻大橋】ラ・テール洋菓子店 LA TERRE

濱田スーシェフ。
「お菓子の素材は大地の恵み」をコンセプトに、作り手の顔の見える素材と自然のあるがままにこだわり、できる限り無添加を心がける。

ラ・テール洋菓子店
東京都世田谷区池尻3-27-10
03-5486-5489
● 10:00~20:00
● 不定休
http://www.laterre.com/patisserie/

フランス菓子・料理研究家
大森由紀子さん Yukiko Omori
フランス菓子と料理の教室を主宰。フランスの伝統菓子、地方菓子、田舎や日常でつくられるだしをとらないフランスの惣菜を雑誌、本、テレビなどを通して紹介している。『フランス菓子図鑑』など著書30冊以上。
16世紀のマカロンを自分なりの解釈で作ったマカロンをネット通販する。


本記事は雑誌料理王国第247号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第247号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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