トウガラシの栽培は、メキシコ中部で紀元前6000年以前に始まったとされている。
15世紀末には、新大陸を発見したコロンブスがスペインに持ちかえりやがてヨーロッパを経て、世界中で栽培されるようになった。群馬県の山間地でトウガラシ栽培を専門にする村山晋作さんを、世界中を旅する料理人 山﨑真人さんとともにたずねた。
群馬県安中市の山中に、世界中から集めたトウガラシを栽培している農家がある。村山晋作さんが営むトウガラシ専門農家だ。15年ほど前に小さなプランターで始めたトウガラシ栽培。それが今や、1000坪の畑一面に120種類以上を育てるまでになった。そんな村山さんは普段、都内でIT関係の会社に勤めている。つまり、週末を利用して就農する、副業トウガラシ農家なのだ。
そんな一風変わった村山さんを訪ねたのは、こちらも変わった料理人、山﨑真人さんだ。山﨑さんは、32歳まで都内のレストランでシェフを務めた後、ロンドン、メキシコ、ペルー、北欧・フェロー諸島、カルフォルニアを約3カ月単位で渡り歩きながら、2年ほど各地の厨房で働いてきた。現在一時帰国中で、出張料理人をしながら次の旅の準備をしている。
メキシコで働いていた「キントニル」や、同じくペルーの「セントラル」では、トウガラシの本場ということもあり、毎日の日課に、トウガラシの種とりがあったほど。日常的にトウガラシを使っていた山﨑さんだが、トウガラシ畑を見るのは初めてだという。
「ちょうど今(5月上旬)は、苗を畑に植え替える時期。ハラペーニョを植え替えています。7月には収穫が始まり、毎週40~50キログラムは収穫します。それが、霜が降りる11月下旬まで続きます。農作業としては、楽ではないですよ」と村山さん。
ビニールハウスには、たくさんの種類の苗が、植え替えを待っていた。「海外の珍しい品種は、種を取り寄せて、ためしに3株ぐらい植えてみるんです。海外の種は、かなりいい加減で、植えてからちゃんと発芽するのは1株あるかないかなんです」
これだけたくさんの種類のトウガラシを育てているのに、村山さんが専業ではなく、副業として就農していることに山﨑さんは驚いたようだ。「利益を考えだすと、売れるものを育てる必要があって、少量多品種栽培が難しくなるんです」と村山さん。「じつは、初めてのトウガラシ栽培は、ハバネロの栽培キットだったんです。しかし、実際に生った実は、ハラペーニョ(笑)。でもそのときに、トウガラシの品種に違いがあることに気づいたんです。そこからトウガラシにどっぷりはまりました」
たとえば、日本人がユズやスダチといった種類豊富な柑橘類を、用途によって使い分けるように、トウガラシも品種の違いによって料理で使い分けることがきたらおもしろい。「まずは、たくさんの種類があるなかから、自分好みのトウガラシを見つけることから始めてみてくだい」
江六前一郎=取材、文 星野泰孝=撮影
本記事は雑誌料理王国第299号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第299号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。