2024年11月14日
スキーリゾートへの拠点としても知られる、越後湯沢駅。筆者が訪れたのは3月末だったが、駅から見える景色も一面の雪。カラフルなスキーウェアに身を包んだ行楽客の姿もちらほらと見受けられる。そこから車で20分、訪れた秘湯・大沢山温泉にある里山十帖が、今回の訪問の目的である、地方における美食「ローカルガストロノミー」について考えるイベントの会場だった。
到着すると、入り口には、まだ2メートルほどの残雪がある。「これでもだいぶ溶けたんです、1月には5メートル近くにまでなって」と出迎えてくれたスタッフはすこし困った顔で笑う。この辺り独特の、湿気を含んだ重たい雪は、屋根からおろすのにもひと苦労だ。あまりに高く積もるので、この地域では雪かきではなく「雪掘り」というのだという。
里山十帖は、そんな雪深い場所で築約150年の古民家を生かし、デザイナーであり、編集者でもある岩佐十良氏が2012年にオープンした温泉旅館だ。人が五感を生かして様々なインスピレーションを感じることができる「媒介(メディア)としての宿」を目指している。