2024年10月7日
しかし、ひとたびゲストを前にすれば、時間をかけて事前に用意した最適と思われる1本が、まったく別の1本に変更になることもある。「飲むのはお客さまですからね。体調やお腹の空き具合、好みなどによって、最適な1本が変わってくることはよくあります。ペアリングは料理とワインの相性だけではないと思うんです。お客さまを含めた料理とワインのペアリングも重要だと思います」と飛田さん。そのため料理は同じなのに、カウンターに座った2組のゲストの飲んでいるワインが違うこともあるという。
愛媛県鬼北町の雉は11月から1月の間だけフレッシュが手に入り味わいも違うので、そこを旬と捉え、ムネ肉は炭火焼き、モモ肉は山椒を入れたつみれにし、骨からとった出汁とともにお椀にする。雉に胡椒をかけるイメージと山椒やワインの持つボディとの同調性を意識し、ペパリーなニュアンスを持ったこのワインを選択。お椀のうま味に対してワインの酸をぶつけ、料理の味の輪郭を明確にさせることを考えた。
一方の石田さんは、食事の前にゲストの元へ挨拶に出向き、年齢や性別などをチェック。会話しながら、場合によっては料理の分量を減らすなど、最後まで美味しく食べてもらえる工夫をする。「料理人やソムリエにとっての喜びは、お客さまが最後まで美味しく楽しく、食べたり飲んだりしてくださること。そのために、サービスマンでもある私は、最大限の気配り、目配りをいつも心がけています」(飛田さん)。