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あの人のシグニチャーディッシュ リストランテ ホンダ 本多哲也さん


「この店にいったら、これが食べたい!」。「このシェフといえばこの料理!」。注目のシェフたちが自らのシグニチャーディッシュを語り、その調理方法を実演してくれた。

ウニとホタテのクリームパスタ
本多哲也さん◆リストランテ ホンダ

大人数のパーティーにも応用できる人気メニューの新バージョンを考案

 手打ち麺にウニの旨味がよく絡んだ「ウニのタリオリーニ」。イカスミのソースが味わい深い「イカスミのスパゲティ北海道産の生ウニ添え」。独立して12年目を迎える本多哲也シェフには、さまざまなシグニチャーディッシュがある。
 イタリア料理をめざしながら、渡仏してフランス料理を学んだ経験も持つ。「ベースさえしっかりしていれば、ジャンルを問わず、いろいろな料理にチャレンジしてもいいのではないか」と語るだけあって、シグニチャーディッシュに対する考え方も柔軟だ。
 今回は発想を転換することによって、シグニチャーディッシュから、あらたな人気のひと皿を生み出す方法を披露してくれた。

マルケージの冷製パスタ 出会った時の興奮を込めて

「シグニチャーディッシュを自分の店で出すだけならさほど難しいことではない。けれど、それをイベント会場などで実現しようとなると、しにくいこともある」と本多さん。それでも、「シェフの代表的な料理が食べたい」と言うファンの気持ちには応えたい。そこで「ウニとホタテのクリームパスタ」を考案した。
 イカスミを練り込んだ乾麺に、ウニの風味をまとわせた冷製のパスタ。このひと皿は、「ウニのタリオリーニ」と「イカスミのスパゲティ北海道産の生ウニ添え」の両方の魅力を、合わせ持つようにしようと考えて誕生した。

冷製パスタの場合、温製と同じ分量の調味料では味がぼやけるので、「ニンニクオイル、レモン、スダチなどを多めに使ってインパクトのある風味に仕上げます」と言う。

 イメージの源泉はどこにあるのか。「20年ほど前、僕がミラノに行った時に、イタリア料理の巨匠、グアルティエーロ・マルケージさんの作る冷製パスタに出会ったんです。それを初めて食べた時の感動と驚きを、鮮明に思い出したんです」

 レストランで食べるパスタといえば「温製」が当たり前の時代。マルケージ氏は、アミューズとして冷たいパスタを出して注目を集めていた。日本のざる蕎麦にヒントを得たとも言われる。帰国して早速、冷製パスタに挑戦。キャビアを添えたり、香辛料でアクセントを付けたりして、新メニューの開発に取り組んだ。「ウニとホタテのクリームパスタ」には、そんな90年代の興奮も込められているのだ。大人数のパーティーや、厨房から距離のあるイベント会場で実際に提供してみて、ゲストから「おいしい」と喜んでもらえた点にも満足している。フォークに巻き付けられたイカスミのパスタの黒と、肉厚のホタテの白、生ウニの鮮やかなオレンジ色が、グラスの中でくっきりとしたコントラストを見せる。そんな見た目の華やかさも、人が集まる場にふさわしい。

「アミューズ的なものですから、できるだけコストも抑えました」。普段はパスタに絡めるソースにも、たっぷり生ウニを使うが、新シグニチャーでは、練りウニを溶かし込んでいる。それでも、「ウニのタリオリーニ」に負けない風味を醸しているところはさすがだ。ただし、「最後にのせる生ウニにはこだわっています」と、北海道産のミョウバン不使用の生ウニを仕入れている。
「ゆでてから時間をおいた麺をお客さまにお出しするのは、本当は心苦しいのですが……」と苦笑しながらも、完成度の高い新バージョンを仕上げた本多さん。原型となるシグニチャーディッシュへの揺るぎない自信と愛情の成せる業である。

【レシピ】ウニとホタテのクリームパスタ

イカスミを練り込んだパスタは、時間がたってもコシがあるようにゆで時間を調整。パスタの弾力と、半生に仕上げたホタテのジューシーさが互いに引き立て合い、ウニの風味とほのかな甘みが印象的なひと皿。

材料

パスタ(1人分)…5本(13ℊ)(Spaghetti al Nero di Seppia/ La Fabbrica della Pastaを使用) /オリーブオイル、塩、コショウ…各適量
● ソース(10 ~12人分)
ホタテ…2個/白ワイン…120㎖/生クリーム(38%) …300㎖/練りウニ…40ℊ/板ゼラチン…1枚
● 飾り付け用
トマトソース、ブロッコリースプラウト、生ウニ、ピンクペッパー(砕いたもの)、ニンニクオイル (オリーブオイルにニンニクのアッシェと赤唐辛子で香り出ししたもの) …各適量

作り方

  1. パスタの準備をする。パスタを6分間ボイルして、バットに広げ、オリーブオイルと絡め塩、コショウをし、落としラップをして乾かないようにしておく。
  2. ソースを作る。白ワインでホタテをポッシェして半生の状態であげておく。
  3. ホタテをポッシェした白ワインを1/3量に煮つめてクリームを加える。ひと煮立ちしたところで火からはずし、粗熱を取る。
  4. 3の白ワインソースの1/3に練りウニを溶く。
  5. 3の白ワインソースの2/3に板ゼラチンを加えて溶かし、そこに4を加えてよく合わせシノワでパッセする。
  6. よく冷ましてからエスプーマにそそぐ。
  7. 飾り付けをする。フォークに一人前(5本)のパスタを巻き、グラスに盛り付け、ニンニクオイルを2滴たらしトマトソースをのせる。
  8. ポッシェしておいたホタテを1/8カットにして、軽くアセゾネし、パスタの上にのせ、エスプーマでソースを絞る。大きめの生ウニをのせ、ピンクペッパーをふり、ブロッコリースプラウトを散らす。
グラスの中にパスタ、ホタテ、ウニのソース、生ウニの順で重ねていく。「シャンパングラスを倒した中に盛り付けても面白いですよ」と本多さん。

上村久留美=取材、文 星野泰孝=撮影 

本記事は雑誌料理王国2016年4月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2016年4月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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