食の未来が見えるウェブマガジン「料理王国」

ソニーが食の分野に進出! AI・ロボティクスで新しいガストロノミーをつくる。


2020年4月、ソニーは日米欧に拠点を置く新会社「Sony AI」を設立した。Sony AIが立ち上げた3つのフラグシップ・プロジェクトの中の2つは、ゲーム・映像といったソニーの強みだが、もう1つはソニーにとって新しい領域であるガストロノミーだ。

INTERVIEW

藤田雅博氏
ソニー株式会社 AIコラボレーションオフィスVP
シニアチーフリサーチャー
株式会社ソニーAI Project Management Director

マーカス加藤絵理香氏
株式会社ソニーAI
Strategy & Partnerships, Director

実は75年前までさかのぼる!? 遠くて近いソニーと食の距離

ソニーと食は繋がりがないように思うが、そうではない。実は、ソニー設立以前、創業者の一人である井深大氏が電気炊飯器を開発して失敗したことがある。75年後の今、ソニーは再び食の分野に挑戦し、AI・ロボティクスでガストロノミーの夢を追う。

Sony AIは「AIで人間の想像力とクリエイティビティを解き放つこと」をミッションとして掲げており、AIでシェフの可能性を拡張し、ガストロノミーの新しい未来を探ろうとしている。そもそも、なぜSony AIは3本柱のひとつにガストロノミーを選んだのか?

「五感のセンシング、シェフの高度な調理技術の再現など、サイエンスとテクノロジーでチャレンジできる領域として実に魅力的で、さまざまな技術探索の可能性を秘めているからです」(加藤氏)。さらには、「われわれSony AIのメンバーが単純にガストロノミーが好きだという背景もあります」(藤田氏)。

現在進行中のプロジェクトから、ソニーの描く新しいガストロノミーの可能性を見る

それでは、現在取り組む2つのプロジェクトを見て行こう。1つは、大量の食データからAI技術により、人間では思いつかない食材の組合せをGUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェース)で提案するツールの開発だ。例えば左図では日本酒とルビーチョコレートの組み合わせを提案している。おいしくヘルシーで自然環境にも優しく、ひらめきに満ちた料理レシピをシェフが考案する手助けとなる。「ユーザーとなるシェフへのヒアリングを行ない、このツールの開発を進めています」(加藤氏)。

もう1つは、レストランや家庭の新たな調理ツールとして、料理人のサポーターとなるロボット開発だ。料理における動作は複雑で、素材を切るだけでも、食材や料理の種類によりさまざまなバリエーションがある。現在、ソースの盛り付けを再現するロボット(右図)を開発中で、シェフの繊細な動きの再現が求められる挑戦的な領域だ。「目指すのはスーシェフのようにシェフを支えるロボットです。現在のプロトタイプは人と同じぐらいの作業速度ですが、いずれ人を上回るスピードへ到達させたい」(藤田氏)

 これらのプロジェクトには、世界中のスマートフォンのカメラでトップシェアをとるソニーのイメージセンシング技術と、aiboなどで培ったロボティクス技術、あらゆる事業を支えるAI技術などの強みを活かすと同時に、食のプロの知見も積極的に導入。Sony AIでは、10数名のシェフや食のプロフェッショナルにインタビューを実施し、近日中にその内容を公開する予定だ。

レシピのAI支援ツールのGUI

シェフとAI・ロボティクスが共に働くレストランが三つ星を獲る!?

料理の味や見た目のみならず、サービスの質や空間作り、テーマ設定など、ガストロノミーに求められる領域は非常に幅広い。ソニーにとっては、シェフはクリエイターやアーティストであり、AI・ロボティクスで新たな調理手法や進化した調理ツールを提供する。ロボットに単純作業を任せたり、人間の固定観念を打破するようなインプットを得たりして、シェフとAI・ロボティクスが協調すれば、未だかつてないほど高いクオリティとクリエイティビティあふれる料理コンテンツを創造できるはずだ。遠くない将来、シェフとAI・ロボティクスが支えあって働くレストランがミシュラン三つ星を獲る時代がくることを期待したい。


text 徐航明

本記事は雑誌料理王国2020年12月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年12月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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