トマトの原産地は、南米ペルーを中心とするアンデス高原の太平洋側の地域だろうと言われる。19世紀半ばには本格的に栽培されるようになり、農産物市場にも並ぶようになったという。ここでは、トマトの研究開発に力を入れているカゴメ株式会社の仲村亮さんにお話をうかがった。
トマトは今や、もっともポピュラーな野菜のひとつ。驚くべきはその種類の多さで、アメリカの国立の研究機関では、じつに1万種以上の種子が保存されているという。
では、なぜこれほどまでに品種が増えていったのか。それは、原産国ペルーから世界各地へ伝えられるなかで、その土地の環境や用途、人々の味の好みに合わせて、品種改良が重ねられてきたからだ。そんなトマトは、大別するとピンク系と赤系に分けられる。
このほかにも、下の図でも分かる通り、トマトは生食用と加工用に分けられる。ピンク系はほぼ生食用、赤系は生食用と加工用の両方に使われる品種が多いといわれる。
桃太郎®
生で食べるトマトの代表。酸味より甘味が強い。ピンク系の丸形トマト。
ファーストトマト
冬から春に出回る。酸味と甘味のバランスがよく、果肉がしっかり。
ミニトマト
甘味が強く、赤、オレンジ、黄色など色や形のバリエーションが豊富。
サンマルツァーノ
イタリアのトマトの代表格。
酸味と甘味のバランスがよく、旨味成分も多い。
チコー3号
果汁が少なく、ピューレやケチャップなどの加工用に使われる。
くりこま
1967年に日本で生まれた品種。低温でもよく実る。
ふりこま
1977年に日本の農林水産省野菜試験場で育成された加工用品種。
ハイピール
アメリカで開発。トマト缶用として、イタリアでも広く栽培されている。
リコペルシコン・ピンピネリフォリウム
南米ペルーのアンデスの太平洋側が原産地。直径1cmほどの果実。
リコペルシコン・ヒルスータム
原産地はエクアドル南部からペルー中部。直径約2cm、緑色や緑白色。
リコペルシコン・ペルビアーナム
原産地はペルー、チリ北部の太平洋側。直径約2cmで緑白色や紫色。
トマトの赤い色素は、カロテノイドのひとつであるリコピンの色で、トマトの色が赤ければ赤いほど、リコピンの含有量は多くなる。そのリコピンの優れた働きは、昔から各界で注目を集めているが、近年、新たに話題を呼んでいるのが、 運動によって溜まりやすい活性酸素を消去すること。継続的にトマトを食べることで、リコピンは体内に蓄積されるという。
FAO(国際連合食糧農業機関)のデータによると、国別の人口1人あたりのトマト摂取量は年間約20kg。日本人1人あたりのトマト摂取量は8.3kgで、イタリアの7分の1にも満たない。
一重項酸素(活性酸素のひとつ)を消去するためには、三重項酸素(通常の酸素)に変換する方法と、一重項酸素を分解する方法がある。リコピンなどのカロテノイドは前者の作用が、ビタミンEは後者の作用が強いことが分かっている。
野菜の栄養素は細胞壁のなかに含まれているため、加熱したり刻んだりして細胞壁を壊すことで、吸収されやすくなる。なかでもβ-カロテンやリコピンなどのカロテノイドは熱に強いので、調理したほうが吸収量は高くなるというわけだ。
上のグラフは、紫外線を照射せず、リコピンも添加しなかった場合のコラーゲン量を1とした場合のコラーゲン量を表している。細胞に紫外線を照射すると、コラーゲン量は減少する。一方、リコピンを添加してから細胞に紫外線を照射すると、コラーゲン量はほぼ変わらない。リコピンを添加した上で紫外線も照射しないと、リコピンを添加しないときに比べ、コラーゲン量は増加した。
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本記事は雑誌料理王国2015年6月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2015年6月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。