アメリカ産ポテトの魅力。カリッとホクホク、食べ応え抜群のステーキカットを、一流シェフがアレンジ!


アメリカ産ポテトは、広大な大地と最先端技術が生んだ高品質な食材。その魅力を存分に引き出す料理の代表格といえば、アメリカ人の国民食として誰もが知るフライドポテトだ。
今回は東京・日本橋のフランス料理店「ラ・ボンヌターブル」の中村和成シェフが、大ぶりの“ステーキカット”スタイルのフライドポテトを使ったアレンジメニューに挑戦に挑戦。シェフが捉えた素材の魅力と、アレンジのアプローチをひも解く。

農業大国アメリカでは、ポテトが年間約2000万tも生産され、日本を含め世界中に輸出されている。そのため、ポテト業界では設備投資の動きも活発で、農場から製品化まで最先端の技術が導入されており、少人数でも広大な農地の管理や大量生産が可能になっている。こうした効率化が、天候に左右されにくく通年での安定供給を支えているのだ。

そんなポテトを使ったアメリカの国民食といえば、フライドポテト。主流で使われる「ラセット種」は細長くてサイズが大きく、水分が少ないので、揚げると外はカリッと、中はまるでベイクドポテトのようなホクホクの食感に仕上がる。またでんぷん質と糖質の配合のバランスがよく、きれいな揚げ色がつきやすいのも特徴。また揚げたときに油を吸収しづらいので、揚げ油の消費を抑えられるのも飲食店にとってはありがたい食材である。

そして、多様なカットスタイルも、アメリカのフライドポテトの魅力。たとえば、表面が波打つ「クリンクル」、らせん状の「ループ」、網状の「ラティス」。そして、ステーキと一緒に提供される「ステーキカット」は、太さと厚みがあり、よく肉料理に添えられる。

ステーキカット(厚切りタイプ)
ステーキカット(コーティングタイプ)

今回は東京・日本橋にあるフランス料理店「ラ・ボンヌターブル」の中村シェフが、アメリカ産冷凍フライドポテトの「ステーキカット」2種を使い、それぞれアレンジメニューを考案。真っすぐでシンプルなステーキカット(厚切りタイプ)はスペイン風オムレツに、衣と味が付いているステーキカット(コーティングタイプ)はタルタルやサワークリームを添えた冷菜に仕立てた。ここからは、料理の解説を、中村シェフのコメントと共にお届けする。

USポテトのトルティージャ、ロメスコソース、イベリコ生ハム、ピスタチオデュカ

中村シェフのアレンジメニュー1品目は、「USポテトのトルティージャ、ロメスコソース、イベリコ生ハム、ピスタチオデュカ」
トルティージャはポテトと卵を一緒に焼くスペイン風オムレツ。今回は具材に生のポテトではなくフライドポテトを使うことで、下準備の手間が不要に。焼き上がったオムレツに、トマトやパプリカを使ったロメスコソースの酸味と、コリアンダーとクミンの香り、ピスタチオの食感を重ねた。

「トルティージャをいちから作ろうとすると、生のポテトの皮をむいたり、下準備で火を入れたり、結構な手間がかかってしまいます。品質の高いアメリカ産のポテト本来の味わいがしっかりと感じられる、肉厚なステーキカットだからこそ、生のポテトの代用として使えるのではないかと考えました。またこのステーキカットは一度揚げてから冷凍してあるため適度に水分が抜け、ポテトの味わいが凝縮しているので、オムレツの具材に入れてもしっかりと主張してくれます。オムレツの断面を見ていただくと、ポテトがぎっしりと詰まっていて壮観でしょう!」と中村シェフ。

USポテトのフリット、ビーツと鹿肉のタルタル、サワークリームオニオン

続いてアレンジメニュー2品目は、「USポテトのフリット、ビーツと鹿肉のタルタル、サワークリームオニオン」だ。
コーティングタイプのステーキカットをカリッとするまで揚げて、楽しむ一皿。添えたのは、低温で火を入れてから藁の煙でいぶした鹿肉と、ビーツを使った冷たいタルタル。中心に置いた、シェフ手作りのサワークリームオニオンが、両者を繋ぎ合わせてコクを添えている。

「ステーキカットは、本場アメリカでは肉料理に添えるのが定番ですよね。そのスタイルを踏襲して、コーティングタイプは、肉と合わせてみたいなと考えました。ポテトのカリッとした心地よい食感を出発点に、味わいも食感も多様で、食べていて楽しい一皿になっていると思います。そこで、低温調理をしてから燻した鹿肉とビーツのタルタルで多様な食感と味わい、サワークリームの酸味とコクを添えました。
驚いたのが、このコーティングタイプのステーキカット、揚げてから20~30分経ってもまだカリカリの食感が持続するんですよ。ホテルや大きなレストランなど、厨房から客席まで距離があるようなレストランでは、 “持続性”のある素材は重宝されると思います。
またラセット種は油を吸いづらいことも実感しました。鹿肉とビーツのタルタルにオリーブオイルを加えたり、濃厚なサワークリームを添えても、食後感が重たくなりません」と中村シェフ。

ホテルやレストランで重宝されそう、と太鼓判を押す。

このステーキカット、あえてランダムな形にカットされているのも、シェフを魅了する理由の一つ。日本でよく見かける細いフライドポテトに比べて高級感があり、盛りつけると立体感が出しやすいのだ。「数千円するグルメハンバーガーに添えても見劣りしないし、ハイエンドなフレンチレストランでも宴会料理などで重宝されそうですね」。

なお、アメリカの約2000のポテト生産者を代表する、米国ポテト協会日本代表事務所の牛丸雅生さんによると、「アメリカ産冷凍フライドポテトは品質管理が厳格。長さや色、水分量まで細かく規格化されているんです」との事。そのこだわりによる品質の高さが、シェフの創造力を刺激するのだろう。

高品質なアメリカ産ポテトの中でもフライドポテトの主流品種「ラセット種」とは?

ラセット種はポテトの中でも特に大きいため長くておいしいフライドポテトを安定供給できる。
フライドポテトとして揚げても、外はカリッと、中はベイクドポテトのようなホクホクの軽い食感。
適度なデンプン質と糖質を含むため、フライドポテトにするときれいな揚げ色に仕上がる。
水分量が少なく、固形分が多いため、揚げるとしなびてぐにゃっとせず、外がカリッと仕上がる。

中村和成 なかむら かずなり

1980年、千葉県生まれ。「シェ松尾」「ラ・リオン」などで研鑽を積み、西麻布の「サイタブリア」へ。同店をリニューアルオープンした「レフェルヴェソンス」(現在ミシュラン三つ星)でスーシェフを務めた後、2014年より東京・日本橋「ラ・ボンヌターブル」のシェフに就任。積極的なSNS発信でファンを増やし、現在はレストランの監修も手掛ける。

ラ・ボンヌターブル
東京都中央区日本橋室町2-3-1 コレド室町2 1F
TEL 03-3277-6055
11:30~13:30LO、18:00~20:00LO
月休

米国ポテト協会
TEL 03-3221-6281
https://www.potatoesusa-japan.com/

text:Cuisine Kingdom photo:Hiroyuki Takeda

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