2023年11月20日(月)、米国ポテト協会が主催する「米国産ポテトクッキングセミナー〜ヤングシェフポテトチャレンジ〜」が、東京・世田谷の「東京山手調理師専門学校」で開催された。これは三部構成で行われ、第1部では、米国ポテト協会の大野晃一氏とポテトの協賛企業、シンプロット・ジャパンの依田剛氏が登壇し、米国産ポテトの魅力を紹介。第2部では調理実習室へ場所を移し、元「ディーン&デルーカジャパン」の総料理長で、現在は「DELI & RESTAURANT GOOD STOCK(グッドストック)」のオーナーシェフを務める村上英寿シェフが、「ポテトフレークのフィッシャーマンズパイ」のデモンストレーションを実施。第3部では、本セミナーに参加した東京山手調理師専門学校調理総合科2年の約40人が村上シェフのレシピ&つくり方に倣って、「ポテトフレークのフィッシャーマンズパイ」づくりにチャレンジした。
第1部で最初に登壇した大野氏は、「米国ポテト協会は、全米2,000に及ぶ商業用ポテト生産者のためにマーケティングを行う団体で、フローズンポテト、ディハイ(乾燥)ポテト、生鮮ポテト、チップス加工用ポテト、種イモの5種類のポテト製品の販促を行っています」と説明。「アメリカ産のジャガイモは日本産のジャガイモの倍以上の大きさがあり、それだけ長いフライドポテトができる」「他国産のジャガイモに比べ水分量が少ないので、カリカリ、ホクホクしている」「米国のフライドポテトの主な原料であるラセットポテトには適度なデンプンや糖分あるため、安定して美味しそうな色に仕上がる」など、大野氏は米国産ジャガイモの特徴を解説する。
また、学生たちはヨーロッパ産ジャガイモと米国産ジャガイモでつくったフライドポテトをそれぞれ試食し、その差を自らの舌で確認。ヨーロッパ産のジャガイモでつくったフライドポテトは白っぽいが、アメリカ産のジャガイモでつくったフライドポテトは茶色っぽい。「ヨーロッパ産のジャガイモでつくったフライドポテトはしっとりとした食感で少し水っぽい感じ。一方のアメリカ産のジャガイモでつくったフライドポテトは、外はカリカリ、なかはホクホクで美味しい。今までフライドポテトの味をそんなに気にすることはなかったけれど、産地によって味わいが全然違う」と驚きの表情を見せる学生は少なくなかった。
さらに、シンプロット・ジャパンの依田さんは、「アメリカ産のジャガイモでつくったフライドポテトは歩留まりが高い。長いフライドポテトができるので、少ない重さでも見栄えがするというメリットがあります」と話し、アメリカ産のジャガイモの優位性に触れた。
続いて第2部では、村上英寿シェフが登場。「ポテトフレークのフィッシャーマンズパイ」のつくり方を披露してくれた。
まずは、アサリの出汁とポテトフレークを合わせてマッシュポテトをつくる。裏越ししたジャガイモのようになればOK。塩、コショウで味を調えておく。続いてフィリングをつくる。サーモン、ホタテ貝、エビを適度な大きさに切り、バターで炒めたタマネギと合わせてさらに炒める。耐熱容器の内側にバターを塗り、フィリングを入れて高さを揃え、その上にチーズを乗せ、さらにポテトフレークも重ね、塩・コショウで味を調えたらオーブンに入れ、こんがり焼き色がついたら「ポテトフレークのフィッシャーマンズパイ」の完成だ。
「ジャガイモは季節によってデンプンが多すぎることがあります。ですから、そういったジャガイモの味わいに難があるときにはポテトフレークはとてもいいと思います。手早くパパッとマッシュポテトをつくることができるのも、忙しい厨房では重宝すると思います。今回のフィッシャーマンズパイの他には、コロッケなどもいいですね。ただ、生のジャガイモよりは旨み成分が若干少なく感じてしまうので、油脂や旨み、甘味を少し上げてあげるほうがいいと思います。その意味では、チーズコロッケなどはいいと思います。乳製品が加わるし、油で揚げているので油脂も加わりますしね」と村上シェフはポテトフレークに向く料理も教えてくれた。
第3部は、いよいよ学生達の出番だ。5人ずつくらいの班に分かれて、「ポテトフレークのフィッシャーマンズパイ」づくりをスタート。トントンという食材を切る音やジャージャーというシーフードを炒める音などが実習室に響き渡るなか、学生達は「ポテトフレークのフィッシャーマンズパイ」を完成させていく。実習をやり慣れているせいか、各班で自然に役割分担ができていて、各人が各人の役割を果たしているのが見ていて気持ちいい。
全チームの「ポテトフレークのフィッシャーマンズパイ」がオーブンに入れば、完成するまでは村上シェフのトークで会場が盛り上がる。シェフは自分の料理人人生を語りながら、「料理人に必要なのは探究心と集中力と社交性です。どれも一朝一夕に身につくものではありませんが、意識するのとしないのでは大きな差がつきます。この3つを意識しつつ、自分の目指す料理人になってください」と学生達にエールを送った。
完成すれば、試食タイム。ポテトフレークはマッシュポテトそのもので美味しい。実習室には、学生達の笑顔が広がっていた。
text:山内章子 photo:平松唯加子