パリの人たちが求める日本料理とは?


知れば知るほど深い日本料理

パリの人たちは日本の料理や酒だけでなく、背景にある文化まで知るためのコミュニケーションと情報を求めている。

寿司店や日本料理店にフランス人が求めているのは、ズバリ、味も雰囲気もオーセンティックな日本料理。器や雰囲気などの演出も含め、日本文化をどれだけ示せるかがポイントだろう。ラーメン、居酒屋、お好み焼きといった安心価格の日本料理は、フランスの若者にとって必要だが、そこから何割かは、さらに興味を深め、日本文化にも興味を持つようになる。そういう人々が求める店の存在価値は大きいと思う。

ある和食店のサービススタッフによれば、「日本に旅行に行く前に、日本料理に慣れたい」、あるいは日本から帰国して「また食べたい」と来てくれる客も少なくないと言う。

ゲストとの関係が深まるほどに必要となるのがコミュニケーション能力で、「Sushi B」の花田氏は英語が堪能だが、フランス語もマスターした。それでも、「さり気なく邪魔にならず、行き届いているフランス式のサービスにはかなわない」と、サービススタッフにはフランス人を据えている。「うちのお客さまの9割はフランス人ですから、私の意を汲んで、お客さまに寿司の知識や情報を上手に説明してくれるスタッフの存在はとても重要だと思います」。

カウンター越しに見る臨場感溢れるスペクタクル、素材にこだわった料理、そして知的好奇心を満足させる説明。これらが揃ってこそ、高級寿司店といえるのではないか。「JIN仁」では、日本酒に詳しい責任者のの仁奈氏が、この役割を担う。彼女もその重要性を痛感しているのだ。

日本酒とサービスといえば、寿司店以外の人気店もある。たとえば、昨年話題となった高級酒ビストロの「Enyaa エンヤ」。京都から来た料理人が鶏をメインに、すっきりとした品のある懐石料理と、日本酒やシャンパンをグラスで提供する。店内に日本酒の1升瓶や、シャンパンのマグナムボトルが並ぶ様子は壮観で、これがコミュニケーションのきっかけにもなる。

懐石料理とドリンクのペアリングについて、どうゲストに説明してサービスするのか、その点が興味深いのはもちろん、この店のコンセプトと演出の新しさにも注目したい。

合わせ酢にもこだわって2種類の酢を使い分けている。上品な旨味の寿司はもちろん、焼き物や和え物などの料理の人気も高い。

Masayoshi Hanada

福岡県生まれ。福岡の老舗高級寿司店で10年間修業して、アムステルダムのホテル・オークラへ。その後、パリの「眉山」を経て、「Sushi B」に。2017年、ミシュラン一ツ星獲得。

「Enyaa」では、日本料理と日本酒、シャンパンとのマリアージュが楽しめる。店内には1升瓶とマグナムボトルがズラリ。京都で20年間腕を磨いた遠藤大輔シェフの
料理は上品でお酒にやさしく寄り添う。

Enyaa
エンヤ

37 rue de Montpensier 75001 Paris
☎+33 (0)1 40 26 78 25
● 12:00~14:30、19:00~22:00( 日は13:00
~19:00)
●月休
●コース €58、€88
www.enyaa-paris.com/

Sushi B
スシ ビー

寿司は花田雅芳氏が握り、前菜やそのほかの料理は宝来功氏が担当している。8席のカウンター中心
の店内の雰囲気は日本の寿司店そのもので、米も日本産を使っているが、魚介は、ブルターニュや大西洋産など、主にフランス産を使用している。

5 rue Rameau 75002 Paris
☎+33(0)1 40 26 52 87
●12:30~13:30(木~月)、
19:00~21:00
●火休
●コース 昼€58~、夜€95~
http://sushi-b-fr.com/jp/

text by Yumiko Aihara
パリ在住。雑誌、新聞に寄稿するかたわら、パリJETROアドバイザーとして、フランスのシェフたちに食品を解説し、日本の食文化を紹介している。

本記事は雑誌料理王国279号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は279号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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