リヨンを美食の街にした、もう一方の立役者はリヨン市民である。19 世紀末以降、社会構造の変化により、ブルジョア家に仕えていたメール(女性料理人)たちが、街で店を開いた。それらは「メール・リヨネーズ」(リヨンのおふくろ)と呼ばれ、リヨン料理が国内に知れ渡るきっかけとなった。しかも、こうした料理店で修業を積んだ若者が、後に偉大な料理人に成長していった。
例えば、ポール・ボキューズ氏は、メールを代表するヴジェニー・ブラジエの店「メール・ブラジエ」に入り腕を磨いたことで知られる。ボキューズ氏は、後にこの店を「味の高等教育機関」と呼ぶほど、大きな影響を受けたと話している。
美食の街の夜にぜひとも行きたいのが、「ブション Bouchon」と呼ばれるリヨン伝統のビストロだ。
リヨン市民が足しげく通う庶民の食堂であり、豚肉やソーセージなどの加工品、またアンドゥイエットなどの内臓料理など、リヨンの伝統料理が並ぶ。場所や店にもよるが、25~35ユーロほどで、前菜、メイン、デザートをしっかりと食べることができる。ワインもグラスで5ユーロ前後が主流。2人でも100ユーロ以内で収まるので、リーズナブルだ。
レストランからブションまで。リヨンの夜は更けるほどに輝く。
石畳が続く旧市街のなかでも、ブションが連なるサン・ジャン通りの南入口付近にあるモダンなレストラン。パブを思わせるようなウッディな内装で、リヨンの若者たちが、カップルや友だち同士で気軽に利用している。
前菜は「レンズ豆とリヨンソーセージ」「カボチャのスープ ヤギのチーズのクリーム」など。メインはパスタ料理を中心に、醤油やエキゾチックな香辛料を使った、グローバルな料理を楽しめる。
La Route des Pâtes
49 Rue Mercière, 69002 Lyon
☎+33 (0)4 72 41 87 33
● 12:00~14:30、19:00~23:00 土のみ昼~15:00、夜~23:30
●無休
●前菜、メイン、デザート25€
数多あるブション・リヨネの中で、まず行きたいのがMOFキュイジニエのジョゼフ・ヴィオラさんが開いた「ダニエル・エ・ドゥニーズ」だ。ジョゼフさんは、ブションの老舗「レオン・ド・リオン」で長く料理長を務めた、腕利きのシェフだ。店内は早くから地元のゲストでにぎわっており、お年寄りが多いのも、この店の味の高さを物語っている。
前菜、メイン、デザートで30€と値段が手ごろだ。例えば前菜は、「フォワグラ入りパテ・アン・クルート」や赤ワインビネガーを使った「リヨン風サラダ」など。メインは「牛肩肉のブレゼ ボジョレー風」「ブレス鶏 モリーユ茸のクリームソース」など、メニューにはリヨンの伝統料理が並んでいる。アラカルトでも注文でき、前菜は15€前後、メイン料理は20~45€、デザートは7~8€となっている。
Daniel et Denise
156 Rue Créqui, 69003 Lyon
☎+33 (0)4 78 60 66 53
●12:00~14:00 19:00~22:00
●土・日休
●コース 夜30€
www.daniel-et-denise.fr
旧市街のサン・ジャン通りはブションが軒を連ねる。リヨンらしい豚肉料理を出す「ラ・プチ・グルトン」。
Le Petit Glouton
56/58 Rue St Jean, 69005 Lyon
☎+33(0)4 78 37 30 10
●12:00~23:00
サン・ジャン通りの南端に立ち、創業1896年という「ル・ビストロ・ド・リヨン」。店頭にあるライオン(リヨンの語源)が目印。
Le Bistrot de Lyon
64 Rue Mercière, 69002 Lyon
☎+33 (0)4 78 38 47 47
● 12:00~14:30、19:00~23:45
サン・ジャン通りの北、グヴェルヌモン広場に面する「ラ・トラブール」。悪びれた店内の雰囲気が人気だ。メニューは豚の内臓料理やシャルキュトリなどが揃う。前菜、メイン、デザート(またはチーズ)19.90€~。
Restaurant A la Traboule
3, place du Gouvernement – 69005 Lyon
☎+33(0)4 72 41 99 58
● 11:30~23:30
● 無休
www.restaurant-alatraboule.com
本記事は雑誌料理王国249号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は249号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。