アジアやヨーロッパなど、外国産の発酵調味料をピックアップ。
国産品とは異なる個性的な香りや風味が、いつもの料理に新風を吹かせます。
日本や韓国の味噌のルーツは、中国の発酵食品「醤」にあるとされる。魚介を原料にした動物性のもの、あるいは穀物を使った植物性のものがあり、料理の調味やソースとなる。
沙茶醤/台湾
干しエビやカレイ、ニンニク、トウガラシを使った、魚介の旨味が凝縮した台湾版バーベキューソース。台湾では牛肉の炒め物や火鍋、水餃子のつけだれなどに使うが、魚介料理のコク出しにもなる。
桂花醤/中国
塩漬けにした桂花(キンモクセイ)の香りを閉じ込めたシロップ煮。湯圓(タンエン)など、あん入り白玉団子の温かいデザートには欠かせない。
タオチオ(ソイビーンペースト)/タイ
大豆や小麦粉、塩を原料にした味噌ペーストで、大豆の粒が粗め。中国の豆豉(トウチ)の仲間で、空心菜などの青菜の炒め物、蒸し魚のソースなど、タイ料理やベトナム料理には欠かせない。
蒜蓉辣椒醤/中国
米酢をベースに塩漬けのトウガラシとニンニクが入った、広東風チリソース。ほどよい酸味もあり、中華料理だけでなくパスタソースなどに使っても。
コチュジャン/韓国
発酵に最適な湿度と温度に恵まれた、韓国南部のスンチャン村で作られたトウガラシ味噌。主原料は韓国産米100%で、合成保存料や化学調味料を一切使わず、自然な風味で仕上げられた。
デンジャン/韓国
伝統的な製法で、大豆を原料に作られた韓国の基本となる味噌。日本の豆味噌に近い風味で、チゲ鍋によく使われる。この味噌にコチュジャンを合わせるとサムジャンになる。
サムジャン/韓国
韓国の伝統的なデンジャン味噌にトウガラシ粉、ゴマ、ニンニク、タマネギなどを合わせた少しピリ辛風味の味噌。肉をサンチュで包んで食べる時のサンチュ味噌として韓国でポピュラー。
中国醤油は日本のように料理の香りや風味付けに使うよりも、むしろ色付けを重視するため色が濃い。タイは後述の「魚醤」が有名だが、大豆原料の辛口タイプと甘口タイプの醤油も一般的。
生抽/中国
中国でもっともスタンダードな醤油で、日本の濃口醤油にあたる。「老抽」に比べると色はやや淡く、さらっとしている。調味用や卓上用醤油として使用。
老抽/中国
大豆を天然醸造で長期熟成させた中国・広東省名産のたまり醤油。「生抽」に比べると、コクがあって塩分が少なめ。色が濃くとろみがあり、煮物の仕上げの「色付け醤油」に使われる。
シーユ・ダムケム/タイ
シーユ・カオをさらに熟成させた、黒蜜のような甘口醤油。「シーユ・ダムワン」という甘口醤油もあるが、これよりは甘さ控えめ。「ムーパロー」(豚肉の三枚肉とタマゴの煮込み)に欠かせない。
シーユ・カオ/タイ
大豆原料の醤油で、日本の淡口醤油に近い塩気の強い味。つけ醤油として使うことはなく、炒め物やスープ、煮物に利用する。
中国で日常的に使われる黒酢は、北部の山西省や南部の江蘇省が二大産地で、芳醇な香りと奥深いコクが特徴。イギリスでは、ビールの原料となる麦芽で造ったモルトビネガ ーが馴染み深い。
香港赤酢/中国
もち米を主原料に、麹を加えて造られる赤味を帯びた酢。すっきりとした酸味と上品な香りが特徴。本場香港ではフカヒレ料理の隠し味や小籠包などの飲茶のつけだれに利用される。
山西老陳酢/中国
山西省で穀物(コーリャン、小麦ふすま、大麦)を原料とし、長期にわたって天然熟成。3年以上ねかせるため「老」の文字がつけられている。まろやかな酸味と深みのある香りが特徴。
モルトビネガー/イギリス
英国で一般的な麦芽を使ったモルトビネガー。「サーソン」は1794年創業の老舗メーカーで、まろやかな酸味とフルーティーな味わいが特徴。本場ではフィッシュ&チップスになくてはならない存在。
ナムソム/タイ
タイ米を使って蒸留して造られる透明な酢。現地では輪切りのトウガラシを入れて卓上用の調味料とし、フォーなどの麺類やスープなどに加える。
鎮江香酢/中国
江蘇省の鎮江で造られる、「山西老陳酢」と並ぶ中国二大黒酢のひとつ。もち米を原料に酒を醸造し、その酒を原料に5年以上熟成。甘い香りがあり、料理にコクと艶を与える。
塩辛
日本で「塩辛」といえばイカの内臓を使った珍味的なものを想像するが、海外では小魚や小エビを塩蔵して発酵させた調味料的なものも多い。
カピ/タイ
小エビを塩漬けにして発酵させ、ペースト状にした調味料。グルタミン酸含有量が多く、加熱すると香りが広がり、料理に凝縮したエビの旨味を与える。カレーペーストの原料としても使われている。
ジョッカル/韓国
韓国料理に欠かせないオキアミの塩辛。キムチを漬ける時に使用し、乳酸発酵を促し、旨味を増進させる。このほかチゲ鍋や炒め物の隠し味にも使われる。
魚介類の塩辛を濾過した液体が魚醤。イタリアでは古代ローマ時代に、すでに「ガルム」という魚醤があった。タイやベトナムなど東南アジアではもっぱら日常的に使われる。
コラトゥーラ・ディ・アリーチ/イタリア
南イタリアのアマルフィ海岸で、手作りされたアンチョビの魚醤。塩漬けにしたカタクチイワシを4~5カ月間熟成させて、壺の底にたまった液体と熟成したイワシを漉して作られる。
ニョクマム/ベトナム
ニョクマムの産地として知られるベトナム南部のフーコック島で造られた魚醤。アミノ酸含有量が豊富で旨味がたっぷり感じられる。
スペインやイタリアを生産地とするアンチョビや、日本の「へしこ」に似た魚のぬか漬けなど、水産発酵食品を紹介する。
ピクルド・グラミーフィッシュ/タイ
グラミーフィッシュという魚を、塩や米ぬかに漬けて発酵させた「プラー・ラー」といわれるタイ版の「へしこ」。独特の香りが特徴で、現地では青パパイヤのサラダなどに使う。
スモークアンチョビ/スペイン
新鮮なヒシコイワシの腹ワタを取り除いて2日間塩漬け後、ブナの木で軽くスモークしてオイル漬けに。塩分控えめで、燻製の香りが料理を引き立てる。スペイン・バレンシア地方産。
腐乳
「東洋のチーズ」の異名を持ち、
豆腐を塩漬けし、米麹や酒などで発酵させたもの。沖縄県の「豆腐よう」のもととされる。
白腐乳/中国
豆腐を塩漬けにしてカメに入れ、4~6カ月間発酵させたのち、麹に漬けたもの。塩分が高いので、中国ではおかゆに加えたり、塩の代わりに野菜炒めなどに使われる。
紅南乳/中国
中国清朝時代に、北京の宮廷にも献上されたとされる調味料。塩漬けで発酵後、紅米の麹を使用。スペアリブの腐乳蒸しなど、豚料理に合う。
沖村かなみ=文・構成 上原ゆふ子=写真
本記事は雑誌料理王国第192号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第192号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。