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知られざる逸品!中国地方料理


【潮 州】Teochew

潮州は、中国最南端の広東省東部に位置する。福建省に近い韓江下流地域にあ都市、仙頭を中心に発達した料理である。四大料理の広東料理から派生する料理で、ほかに広州料理、東江料理がある。海の幸を使った料理が主体で、広義の広東料理と比べると、繊細な味わいが特徴だ。魚露や沙茶醤など、多彩な調味料を使う点にも特徴が見られる。

シンプルかつ繊細 海鮮と調味料に特色あり

アサリの沙茶醤炒め(奥)
鶏の潮州風炒め(手前)

広東料理を得意とする「菜の花」で、代表的な潮州料理を作っていただいた。鶏の潮州風炒めは、「川椒鶏」と言うように、山椒と黒コショウを利かせた味付けでシンプルに鶏肉の旨味を引き出している。シーズニングソースやナンプラーなどアジアの調味料を使い、スープの旨味が底支えしている。添えているのは、ピーマンの葉を素揚げにしたもの。ほんのりとした苦味が、山椒の風味とよく合う。

海鮮料理が多いのも潮州料理の特徴。アサリは、潮州でよく使われる調味料のひとつ、沙茶醤と一緒に炒めた。沙茶醤は、インドネシアなどでも使われるスパイシーな調味料。沙茶醤と唐辛子少量だけでシンプルに、強火で一気に仕上げる。現地ではマテ貝などを使うことも多い。

潮州は、調味料が多彩で、沙茶醤のほか、魚露(魚醤の一種)や豆醤(醤油と味噌の中間的なもの)、ラムチョイというオリーブの実と葉を塩漬けしたものなど、日本では手に入らないものも多い。

沙茶醤
サーチャージャン

干しエビや干し魚などの魚介類をベースに、ニンニク、ゴマ、香辛料などを煮込んだ調味料。インドネシアではサテ(串焼き)などに使われる。加藤さんは、現地の味に近づけるため、市販品をベースにカレー醤などを加えてアレンジしている。

中国家庭料理 菜の花
愛知県名古屋市千種区若水3-18-2堀田ビル1F
☎052-712-1182
●11:30~14:00、
17:30~21:00LO
●木、第3金休
●予算 昼1000円/夜2000円

【湖 南】Funan

中国南部に位置し、肥沃な土壌と豊富な水源、温暖な気候に恵まれることから、中国の穀倉地帯となっている。米の収穫高は、常に国内でトップを誇る。気温と湿度が高いため、防腐と保存を兼ねた調理技術や食品加工が発達してきた。油を多く使用し、唐辛子をダイレクトに使った辛い料理が多い。小さくて非常に辛い唐辛子「朝天」は湖南の名産だ。

四川よりも刺激的 唐辛子を利かせた辛い料理

魚のカマの漬け唐辛子の
湖南風味蒸し

魚の頭の蒸し物は、湖南の代表的な料理のひとつ。塩、酒、ショウガ、ニンニクなどで味付けし、「椒醤と呼ばれる唐辛子の発酵調味料をたっぷりのせて蒸し上げる。横浜中華街の「福萬園・別館」は、湖南料理を提供する数少ない店のひとつ。赤唐辛子と青唐辛子、2種類の「椒」を使用した料理は、色合いも鮮やかだ。現地では、黒など、淡水魚の頭を用いるが、日本では入手しにくいため、同店では鯛の頭を使用している。

香りがよく、魚の臭みは感じない。カマやホホの身をほぐして「椒」と一緒に食べると、刺激的な辛さの後に、鯛の身の甘さと発酵調味料ならではのコクが感じられる。汗が止まらないほど辛いが、ついつい後を引く味わい。とくに、下唇や目玉のまわりのゼラチン質は好んで食べられる。身を食べ終えたら、鯛のだしがしっかり出たスープに麺を浸して食べるのが現地の作法。鯛の旨味と唐辛子の辛味が溶け合ったスープを堪能したい。

 椒醤
ドゥジャオジャン

湖南特有の唐辛子をきざんで塩漬けにした発酵調味料。直接的な辛味のほか、発
酵したほのかな酸味と旨味がある。四川にも唐辛子を塩漬けにした「泡辣醤」があるが、こちらはきざまずに漬けるものが多い。

福萬園・別館
神奈川県横浜市中区山
下町137
☎045-662-003
●11:00~0:00
●無休
●http://fukumanen.jp
●予算 5000円

【雲 南】Yunnan

中国の西南部に位置し、年中春のような安定した気候に恵まれている。渓谷と高山に囲まれた秘境地帯や高原地帯など地形が変化に富み、植物、香辛料、漢方食材、キノコなどの産物が多い。24以上の少数民族が居住し、お互いに影響しながら独自の料理を生み出した。また、黒豚を使ったハムの一種、「雲南火腿」は「金華火腿」と同様に珍重されている。

山の幸に恵まれた土地の漢方を生かした麺料理

伝統雲南過橋米線

米線は、雲南名物の麺で、米からできている。ビーフンとは異なり、コシがなくやわらかいのが特徴。「過橋米線」は雲南の南部にある街、蒙自が発祥とされ、100年以上の歴史がある名菜として、首都の昆明や香港などにも専門店ができている。

鶏ガラや豚骨でとったスープに、雲南特産の漢方食材が加えられ、熱々の状態で食卓に運ばれる。表面には鶏油が層になっており、スープの温度が冷めにくくなっている。まずは、薄切りにした豚肉、鶏肉、魚などをスープに入れ、火が通ったら野菜やキクラゲ、チャーシューなどを加え、米線をさっとくぐらせるのが作法。香菜やネギなどの薬味や、自家製ラー油などと一緒に食べる。

この料理の誕生には逸話がある。昔、ある秀才が小島で科挙の試験勉強に励んでいた。その妻が、夫に熱い麺料理を食べさせるため、スープに鶏油を張って冷めないようにしたのが始まりだという。いつも「橋を渡って」行くことから「過橋米線」の名がついたという話だ。

漢方食材と雲南火腿

漢方食材が豊富にあり、医食同源の思想が強い。雲南火腿は、宣威の鉱泉と四川
省の井塩(井戸から汲み出す塩水)で漬け込む。天麻魚は、魚の身に切り目を入れ、漢方の天麻(オニノヤガラ)や雲南ハムなどを挟んで蒸した雲南らしい料理。

中国雲南酒膳坊 過橋米線
東京都千代田区外神田6-5-11
MOAビル1F
☎03-3835-7520
●11:30~14:30、
17:00~0:00
●無休
●www.kakyoubeisen.com
●予算 昼1000円/夜5000円

本記事は雑誌料理王国206号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は206号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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