【Drink Japan】がロンドンで大注目!日本のお酒や食の楽しさを海外で広める見本市


日本を代表する飲料・食品メーカー各社をはじめ、蔵元や地方自治体が10月半ば、ロンドンのウェストミンスターに大集結した。商業見本市「Drink Japan」で現地トレーダーや一般消費者にお披露目をするためで、結果は上々だ。

日本のアルコールを中心に広く食文化の魅力を英国内で発信することを目的とした大規模な見本市「Drink Japan」が、10月10日・11日の2日間に渡ってロンドン中心部の会場で開催された。

Drink Japanは昨年が初開催。日本の生産者と英国のバイヤーを結び、一般消費者にも実際に商品を試してもらう場として大好評を博し、今年は会場サイズも一回り大きくなった。日本各地から集まった数百種類の日本酒、ウイスキー、焼酎、ビール、リキュール、カクテル、お茶、ノンアルコール、新カテゴリーのドリンクや和食、工芸などが一堂に集まり、来場者を魅了した。気に入った商品はその場で購入も可能だ。

日本産品の輸出を促進する大きな役割を担っていることから、今年は駐英国日本国の鈴木浩大使も来場し、日本および英国からの40を超える出展者による約200ブランドを鼓舞して回った。2日間におよぶイベントは昼と夜で入場者を入れ替え、来場者は約2,000名にのぼり、そのうち現地トレード関係者は約600名と昨年に比べ大きく膨れ上がった。

視察に来られた鈴木浩・駐英国日本国大使(中央)、プロデューサー&オーガナイザーの吉武理恵さん(右)、クリス・アシュトンさん(左)。
©Drink Japan(最後の写真以外すべて)
大盛況だった2日間。約2,000名が訪れた。
サントリーのブース。鈴木大使(中央)と。

発起人として共同オーガナイザーを務める吉武理恵さんは、日本酒をはじめとする日本飲料文化の普及に20年以上携わってきた業界を熟知する功労者でありプロモーターだ。ワイン業界からスタートし、その後は日本酒業界の先駆者として、英国における業界プラットフォームを構築してきた。

吉武さんは言う。「長年英国で業界に携わってきて、<これが足りない>と思うものを立ち上げました。日本の文化や生産物は今、英国で大きな注目を集めています。官公庁ではなかなか足並みをそろえることが難しいので、民間として飲食を一つ屋根の下でプロモートするプラットフォームを作りました。志を同じくする仲間たちの協力を得て、出展者、来場者ともに満員御礼となり、無事盛大に終えることができて有り難く思っています」。

共同オーガナイザーとして世界最大級のワイン・コンペティションである「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)」のオーナーであり、IWC日本酒審査会を運営、日本政府よりクールジャパン・アンバサダーにも任命されているクリス・アシュトン氏を迎え、業界を熟知するお二人が多彩なセクターに声がけし、バランスを考慮してふさわしいブランドに参加してもらったという。

今年はメーカーだけでなく日本の都道府県からの参加もあり、日本産品の輸出促進を広く推進していく活動に、新たな裾野を見出した。

一般消費者も真剣に日本産ドリンクを試飲。すでに基礎知識を持つ人も多く、学びの姿勢があったという。
即売しながら市場の反応を直に得られる貴重な機会でもある。
協賛は酒サムライ、International Wine Challenge、JETRO London、JFOODO、JNTO、Yoshitake & Associates。舞台では「ロンドン太鼓ドラマーズ」による和太鼓演奏、日本のパフォーマンス集団「Orientarythm」によるエンターテインメントなどもあった。

Drink Japan では来場者により深く日本食について知ってもらうため「シェフ・マスタークラス」と銘打ったデモンストレーションも企画。今年は日本料理アカデミーEUが主宰したマグロ、寿司、和牛、出汁の実演などがあり、会場を沸かせた。

実は筆者は、福岡県に本拠をおく総合食品メーカー、久原本家「茅乃舎」ブランドのブースで少しお手伝いをさせていただいたのだが、現地における「日本の出汁」への理解が急速に広がっていることを実感する時間でもあった。イギリスではスープやブロスを飲む習慣があり、出汁文化は受け入れられやすい。必要なのは、出汁をいかに「正しく取る」かについての知識をつけてもらい、繊細な味わいの「本物」を知ってもらうことでもある。

今回は「シェフ・マスタークラス」実演で、久原本家の青柳啓三さんが自ら商品を使った出汁取りのデモンストレーションをされ、イギリスの家庭で本格的な日本の味を再現するために必要な知識を手際よくお伝えしていた。

また現地ではまだ飲み方がわからない人が多い焼酎を使ったカクテルを用意する「DRINK JAPAN カクテル・バー」も併設され、マスター・ミクソロジストが焼酎だけでなく、日本酒やウイスキーも使ったさまざまな可能性を提示した。

右:あご出汁のデモンストレーションをされる久原本家の青柳さん。左:ロンドンの人気日本食レストラン「MARU」を率いる丸山さんのデモンストレーション。
筆者がお手伝いした茅乃舎ブースには、アルコールで上機嫌になった来場者たちが、お酒ホッピングの合間に一服の温かい出汁を求めて押し寄せた。椎茸出汁が大人気。

吉武さんはDrink Japan の活用について、こう提案する。
「日本から来られる皆さまにアドバイスさしあげたいのは、プロダクトを一度、現地の方の舌に委ねてみたらどうかということです。日本の伝統や技をお伝えすると同時に、現地でどう受け入れられるのかを寛容に見極めることも大切です。英国なら、いわゆる『個性を受け入れ、のばす』というやり方も合っているのかもしれませんね」。

現地の食文化にすんなり入っていくためには「ローカライズ」が必要という立場で、これには筆者も大いに賛成だ。これは伝統を熟知しており、35年に渡って英国ビジネス界に身を置いてきた吉武さんだからこその見方でもある。伝統的な側面にばかりとらわれるよりも、現在あるものを、今どう楽しんでもらうかに注力し、この先の未来を共に見据える活動をしていく。そこを強調されていたのが、印象的だった。

Drink Japanは「現地のライフスタイルにスムーズに融合する柔軟さを尊重することで、よりスタイリッシュなジャパン・ブランドを打ち出していく」戦略を掲げている。この新たな見本市が今後英国でどう成長していくのか、英国に暮らす日本人として、とても楽しみだ。

Drink Japan
https://drinkjapan.uk

text:江國まゆ Mayu Ekuni

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