月に1回程度、シェフの藤田晃成さんがまかないを作る。たいていは、新商品などのサンプルを使って、その試作も兼ねたメニューになることが多い。この日使ったイノシシのスネ肉も、広島から「ぜひ味をみてみてほしい」と送られてきたものだ。「フランスの地方を中心に修業をしたこともあって、食材を見て、ぱっと思いつくメニューは、フランスの〝名もない〟家庭料理が多いですね」
まかないなので、手順は最小限。前日に塩をふったイノシシのスネ肉を、酒(マデラ酒など)とともに真空パックし、スチームコンベクションに入れて加熱。翌日、まかないの直前に袋から取り出し、ココットにキャベツとともに入れて、オーブンで蒸し焼き(ブレゼ)にする。「まかないを食べるときはスタッフが全員揃うので、『フランスでは、イノシシが里に下りて、キャベツを食べ荒らしてた。それにイノシシはドングリが大好き。だからドングリに似たヘーゼルナッツを合わせた』などと、自分の体験を交えて、フランスの話をしています」
スタッフたちには、渡仏経験がまだない者もいる。藤田さんがフランスでの体験を、一生懸命伝えようとしているのは、「ガストロノミーをやるなら、料理の基礎、食文化への理解がないとならない」ということを、知っているからだ。
agnel d’or
アニエルドール
大阪市西区西本町2-4-4 阿波座住宅三栄ビル1F
06-4981-1974
● 12:00~13:15LO(水~日のみ) 18:00~20:00LO
● 月休
● 14席
www.agneldor.com
江六前一郎=取材、文 上仲正寿=撮影
本記事は雑誌料理王国第297号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第297号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。