シェフの切り札調味料「ラミ・デュ・ヴァン・エノ」榎本実さん 07年5月号


「香辛料は、香りが出やすいもの、出にくいものを見極めて量を調節します。また同じ分量でも、ホールのままか、つぶして使うかでも香りの出方が違ってくる。たとえば、ジュニパーベリー。タジンのように長時間煮込む場合は、つぶすとかえって香りが強すぎてしまう。ホールのまま低温の油でじっくり火を入れたほうが、えぐみが少なく香りがまろやかに出ます」

さらにしっかり炒めて甘味を出した大量のタマネギと煮込むことで、まろやかにしていく。だからこそ、20種の香辛料を使いながらも、ガツンとくるスパイシーさではなく、洗練された複雑な味わいのタジンに仕上がるのだ。

実は榎本さん、クスクスに添えるメルゲズはもとより、ハリサも自家製だ。9種の香辛料を使い、独自の配合で作るハリサが、これまた辛味が深い。残念ながら用途はクスクスとメルゲズのみの自家製調味料だが、「汎用性は低くても、きちんと作っていることが、レストランでは大切だと思いますから」。

ハリサ

野菜と9種の香辛料でコクのある辛味調味料に

クスクスやタジン、ケバブなどに添える、いわゆるトウガラシペースト。日本で手に入らなかった頃、タジン同様、一からレシピを考えたという。基本的にはトウガラシとニンニク、クミン、キャラウェイといった香辛料を混ぜればできてしまうものだが、榎本さんは香味野菜にトマトにビーツ、そして9種もの香辛料を使って煮込み、辛味だけではない、非常にコクのあるハリサに仕上げた。漉さずにピュレにしてしまうので、タイム、ローズマリーはフレッシュなものを。自家製メルゲズの辛味づけにも使っている。

ハリサの材料
(作りやすい分量)
タマネギ、ニンジン、セロリ
(各細切り)……………… 各100g
トマト…………………………200g
レモン汁……………………45ml
ビーツ(缶詰)………………100g
ニンニク………………………28g
ローリエ……………………1/2枚
タイム…………………………1枝
ローズマリー…………………1枝
エルブ・ド・プロヴァンス、キャトルエピス
…………………………ひとつまみ
トウガラシ…………………… 3本
チリペッパー………………… 20g
カイエンヌペッパー………… 16g
パプリカ……………………… 8g
塩……………………………… 6g
砂糖…………………………… 10g
オリーブオイル… 野菜が浸る程度

作り方
みじん切りにしたニンニク、タマネギ、セロリ、ニンジンをオリーブオイルでじっくり炒める。さらにビーツ、トマトの角切りも加え、野菜がやわらかくなったら、すべての香辛料を加える。香りをオイルに移すよう、弱火で20~30分間、香りがたつまで熱したら、ローリエをとり除き、ミキサーにかけてピュレ状にする。仕上げにレモン汁を混ぜる。

クスクスソースの調味料

クミンを主体に、辛味と香りの香辛料を20種

クスクスソースの材料
(10人分程度)
仔羊(肩肉)…1kg、ニンニク(半割り)…1株、タマネギ…8個、白ワイン…750ml弱、トマト…6個、トマトピュレ…大さじ1、フォン・ド・ヴォーの2番だし…3、ブイヨン(鶏)…750ml、ブラウンルー、オリーブオイル、塩…適量、ローリエ…2枚、クミン…ひとつかみ、トウガラシ…2本、キャトルエピス、カイエンヌペッパー、ターメリック、チリパウダー、パプリカ、コリアンダーシード、オレガノ、タイム、サリエット、ローズマリー、バジリコ、セージ、エルブ・ド・プロヴァンス、クローブ、黒コショウ、ジュニパーベリー…各ひとつまみ(親指、人さし指、中指で)、カレー粉…隠し味程度

作り方
鍋にたっぷりのオリーブオイル、ニンニク、ローリエを入れ、繊維を断つように切ったタマネギを、塩をふりながら炒める。甘味が出たら香辛料を一気に加え、低温で香りがたつまで火を入れる。その間に別に羊肉をソテーし、鍋に。白ワインを加えて煮詰め、トマト、トマトピューレ、フォン・ド・ヴォーの2番だし、ブイヨンを入れ、弱火で1時間ほど煮込む。羊肉はやわらかくなったら取り出す。漉してさらに煮詰め、ブラウンルーで濃度をととのえる。

本記事は雑誌料理王国2007年5月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は171号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。

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