2024年10月21日
「牛肉って塩、コショウして焼くだけで十分旨い食材です。正直、仕事をする必要がないんです」と北山伸也さん。北イタリアで修業していた時も、肉を焼いてルッコラやパルミジャーノを添えたビステッカのようにシンプルな調理が多く、料理人の腕の見せどころが少ない素材だった。肉料理を得意とする自店でも、牛肉を使った主菜はひとつだけだ。
「サシも入りつつ、赤身がしっかり。200グラムは出したいのでコストパフォーマンスもちょうどいい」。上州和牛のクリをアッロストで提供している。 料理の決め手となるのがスペックバター。修業した店のスペシャリテが、仔牛にクルミとパン粉を混ぜたバターを乗せて焼いたものだった。「牛肉に合わせて軽く燻製をかけた生ハム=スペックを入れるのは僕のオリジナルです」。バターのみだと肉から滑り落ちてしまうのでパン粉を加え肉の上に層を作るのだ。
ナイフを入れると香ばしいバターの香りにほのかなスペックの燻製香が混じり、パン粉のさっくりとした歯触りが弾力に富んだ肉の食感を引き立てる。ひと皿入魂で仕上げるシンプルな牛肉料理。白い皿の向こうに大らかなシェフの笑顔と料理人としての矜持がきらりと光った。
タヴェルネッタ・ダ・キタヤマ
TAVERNETTA da KITAYAMA
大阪市中央区北久宝寺町4-3-12小原第五ビル1F
06-6251-3376
● 11:30~14:00LO、18:00~22:00LO
● 日休
●21席 http://tavernettadakitayama.com/
山田佐和子=取材、文 高嶋克郎=撮影