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【大阪・京都】牛肉の匠がいるレストラン5選


牛肉の匠渾身のひと皿

【大阪・新町】フレンチ
コンヴィヴィアリテ 安尾秀明さん

仔牛の内臓のみを使った独創的なフランス料理を愉しむ

ロニョン・ド・ヴォーのソテーと秋映のタタン
丁寧に火を入れたロニョンに、マデラ酒とフォン・ド・ヴォーのソースを合わせた。外側はしっかりと香ばしく、内側はきれいなロゼに焼き上がったロニョンは、プリッとした弾力と歯ごたえがあり、噛みしめるごとに独特の香りが広がる。パートナーは長野県産のりんご・秋映で作った、タルトタタンのサレ。ガルニチュールのキノコ類、安納芋のムースリーヌも、全体に華やぎを添える。

 安尾秀明シェフは「牛肉が食べたいというだけなら焼肉店でもいい。せっかくレストランに来ていただくのだから、フランス料理店でしか食べられない食材を食べてほしいんです」と言う。成牛肉は一切使わず、リー・ド・ヴォー(胸腺)など日本では馴染みの薄い仔牛の内臓のみを使う。この日の素材はロニョン・ド・ヴォー(腎臓)。独特の香りがあり、万人向けの食材ではないが、通な人は「この店にはロニョンがあるの?」と喜ぶ。年配の婦人に「昔フランスで食べておいしかったのよ。嬉しいわ」と感激されたこともある。

頼れるのは経験と勘のみーー プロならではの火入れの技

 日本のレストランがあまりロニョンを置かないのは、調理が難しいせいでもある。内臓系は、おしなべて火入れがデリケートなのだ。
 安尾さんに火入れのコツを尋ねると、「勘!」とひと言。何度で何分かを計ったことはない。「もちろん失敗もたくさんしましたよ。経験で身につけるのが『技』術者ですから」。

 調理の第一歩は、下処理だ。臭みがあるスジと脂をきれいに取り除いてゆく。その臭みを好む人もいるため、ゲストに合わせた処理を施す。「そもそも〝臭み〟という表現で、合っているのかなあ?と思います。僕はこの〝臭み〟が好きなんですよ」あえて少しだけ脂を残し、火入れを開始。強火で表面を固めたロニョンを休ませていると、次第に血の混じった水が浮いてくる。
「昔はアメリカ産の冷凍しか手に入らなかったので、この水を捨てながら焼いていました。放置すると、強い臭みが全体に回るからです」
 ところがフランス産の生なら、この水分が旨味となる。ソースの鍋に加えてゆけば、一層風味が増す。

ロニョン(レンヌ産)
ロニョンは腎臓。ヴォーは仔牛。ロニョンと言えば通常、仔牛のもののみを指し、フランス産は国産よりも小型。白いケンネ脂にくるまれたままパックで届くが、新鮮なものはツルリと取れる。内側のくぼみにあるスジと脂肪の塊は取り除く。

 ロニョンと合わせるのは、リンゴ。「甘めの素材と合うんです。季節によっては桃や杏なども使います」
 パート・フィロにポワローとデュクセルを詰めて、キャラメリゼしたリンゴをのせる。マダムの実家から届いた新鮮な秋映は、皮の濃赤が印象的だ。この色を活かしたリンゴのスライスを飾って、ひと口サイズのタルトタタンが出来上がった。

 成牛は使わないという安尾さんだが、フィレステーキしか食べられない、というゲストがいれば、もちろん作る。コース組みを好みに合わせてくれるのも魅力のひとつ。ゲストごとに違う料理を出すこともある。「店を作るのは、サービスのスタッフ。調理人は黒子に徹するべき」。ただし、調理に専念できるのは、サービスとの信頼関係があればこそ。マダムの笑顔と安尾さんの料理にひかれ、人はこの店に足を運ぶのだ。

安尾シェフの匠の技
フランス・レンヌ産 ロニョン・ド・ヴォーを活かす

ケンネ脂を取り、内側のスジと脂肪の塊をはがす。ここに臭みが溜まっているので、境目にナイフを入れて、引っ張るように取る。わざと残して香りを楽しむ料理にしてもいい。
鍋にオリーブオイルを入れて、煙が立つぐらいガンガンに熱する。均一に焼き目が付くように、表面をまんべんなく焼き固めてゆく。時間をかけすぎないのがポイント。
外側を下にして常温で休ませると、浮いてきた血と水分が中央のくぼみに溜まる。どんどん出るので、これを何度もソースの鍋に加えてゆき、後で煮詰めて風味を付ける。
再び中火で、今度はじっくりと火を入れる。また数分休ませて、最後にバターとコニャックを絡ませれば完成。焼いた鍋には水を入れて蒸発させ、残った脂もソースに加える。
Hideaki Yasuo
1972年岡山県出身。辻調理師専門学校を卒業後、同大阪校、フランス校の講師を9年間務める。芦屋のレストラン「タイス」で料理長として3年間勤務。 2006年に「コンヴィヴィアリテ」をオープンして独立。2010年よりミシュランガイドの一ツ星を連続獲得中。

コンヴィヴィアリテ
Convivialite
大阪市西区新町1-17-17
06-6532-4880
● 11:30~14:00LO 18:00~21:00LO
● 木休
16席
www.convivialite.info


藤田アキ=取材、文 畑中勝如=撮影


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