【大阪・京都】牛肉の匠がいるレストラン4選


【京都・河原町丸太町】 ビストロ
ル・キャトーズィエム 茂野眞さん

十勝ハーブ牛を、高温の油をたっぷりかけてフランス流に焼く

北海道・十勝ハーブ牛 サーロインステーキ
牛肉はある程度の厚みが必要なため、200~600gの塊にカットしてホイルに包み、常温に戻しておく。高温すぎない油で焼き、外側は焦げる寸前に見えるほどカリッと香ばしく、内側はほぼ生。粗めのフルール・ド・セルと、マレーシアの辛くないコショウを振りかけて、フライドポテトとともに供する、まさに本場フランスのステークフリットだ。

 茂野眞さんがステーキに目覚めたのは、2002年に渡仏し、ビストロ「ル・セヴェロ」で修業していた時だ。何の変哲もないステーキの、あまりの旨さに衝撃を受けた。「自分で焼くステーキとは全く違う。どうすればこうなるのか、教えを請うても『触って覚えろ』。毎日牛の解体ばかりしていました」
 それが熟成肉だと知ったのは後になってから。当時の日本人は熟成肉なんて知らなかったのだ。

 当然、焼き方も日本とは違う。浸るくらいの多めの油で高温で一気に焼き上げる。その理由はふたつ。ひとつは表面を固めて旨味を閉じ込めるため。もうひとつはなんと、「熟成香を飛ばすこと」。
「ヨーロッパには『熟成香を楽しむ』感覚はない。ドライエージングは、単に経産牛の赤身をやわらかくするための知恵。高温で焼くのは内部に入った菌を殺す意味もあります」
 求められるのは、熟成肉ステーキではなく「旨いステーキ」なのだ。

十勝ハーブ牛
一度だけ出産を経験させたF1(交雑種牛)を、ハーブ入りの飼料で32カ月まで肥育する。人工的に菌を添加せず、熟成庫内と牛の内部の菌だけで熟成をさせる加工業者に預けて、熟成度合いを注文。 30~40日間ドライエージングにかけたものを仕入れる。

 焼き上がったステーキは、外側はカリカリで、中心は「生温かい」程度。熟成香はほとんど感じられず、その分、肉らしさが格段に強い。「この旨さを伝えたくて、肉を焼いています」。茂野さんがフランスで受けた衝撃は、ここで体験できる。

茂野シェフの 匠の技
高温で一気に焼き上げる

高温になりすぎない程度に熱したサラダ油をひっきりなしにかけ続け、表面に硬いキャラメル層をつくる。油は高温にし過ぎると、一気に酸化して使えなくなるので、ギリギリの温度を心がける。余熱での火入れはしない。
Makoto Shigeno
1973年神戸市生まれ。東京のレストランに何軒か勤務の後、2002年に渡仏。「ラ・メゾン・クルチーヌ」、「ル・セヴェロ」などで7年間の経験を積む。帰国後は東京のワインバー「祥瑞」で3年半勤務。2013年2月に独立開店。

ル・キャトーズィエム
le 14e

京都市上京区伊勢屋町393-3 ポガンビル2F
075-231-7009
● 12:00~14:00、18:00~23:00(22:00LO)、 土日祝は16:00~23:00
● 水・木休
● 10席


藤田アキ=取材、文 畑中勝如=撮影


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