2024年10月21日
茂野眞さんがステーキに目覚めたのは、2002年に渡仏し、ビストロ「ル・セヴェロ」で修業していた時だ。何の変哲もないステーキの、あまりの旨さに衝撃を受けた。「自分で焼くステーキとは全く違う。どうすればこうなるのか、教えを請うても『触って覚えろ』。毎日牛の解体ばかりしていました」
それが熟成肉だと知ったのは後になってから。当時の日本人は熟成肉なんて知らなかったのだ。
当然、焼き方も日本とは違う。浸るくらいの多めの油で高温で一気に焼き上げる。その理由はふたつ。ひとつは表面を固めて旨味を閉じ込めるため。もうひとつはなんと、「熟成香を飛ばすこと」。
「ヨーロッパには『熟成香を楽しむ』感覚はない。ドライエージングは、単に経産牛の赤身をやわらかくするための知恵。高温で焼くのは内部に入った菌を殺す意味もあります」
求められるのは、熟成肉ステーキではなく「旨いステーキ」なのだ。
焼き上がったステーキは、外側はカリカリで、中心は「生温かい」程度。熟成香はほとんど感じられず、その分、肉らしさが格段に強い。「この旨さを伝えたくて、肉を焼いています」。茂野さんがフランスで受けた衝撃は、ここで体験できる。
ル・キャトーズィエム
le 14e
京都市上京区伊勢屋町393-3 ポガンビル2F
075-231-7009
● 12:00~14:00、18:00~23:00(22:00LO)、 土日祝は16:00~23:00
● 水・木休
● 10席
藤田アキ=取材、文 畑中勝如=撮影