オーナーシェフに就任して以降、さらにパワーアップしたと評判の岡野健介さん。 イタリアの星付きを経て、自身が展開する店は、ひと筋縄ではいかないリストランテ。提案するパスタも個性的に仕上がった。
スタイリッシュな雰囲気に金髪。一見サッカー選手を思わせるようないでたちの岡野健介さん。昨年の夏、前オーナーから受け継ぎ、オーナーシェフに就任。内装もリニューアルし、攻めの姿勢を崩さない。髪の色もそんな意気込みの表れだ。今回提案するパスタは、「青のりのファゴッティーニ甘鯛とウニ」。ラビオリの一種で、中にはホウボウからひいた濃厚なスープを冷やし固めたものをメインに、トマトのコンフィと生青のりを詰める。ゆでたファゴッティーニに、甘鯛のウロコ焼きとウニ、イラクサを添えてひと皿にまとめた。岡野さんは、「パスタ」という料理を最後までどう食べてもらうかを考えてパスタメニューを構築する。
「考えるポイントは流れと、パスタの役割をどこに置くかです。ひと皿の中で緩急をつけるのか、それとも最初から最後まで一体感を持たせた流れに仕上げるのか。パスタの役割は、パスタそのものをメインに考えるのか、もしくは料理ありきでパスタを寄り添わせるのか。そこに、季節感や、その時にひらめいたアイデアを加え、整えます。今回は、以前、ワンスプーンで提供したことのあるファゴッティーニを元に、メリハリを意識したひと皿に仕立てました」
81年生まれの岡野さんは、トリノ「ラ・バリック」で4年半の修業を経て、帰国。日本におけるイタリア料理の変遷や取り巻く状況を冷静に眺めたうえで、自身がやるべきことを見出している。
「日本でイタリア料理ブームが起こった当時は、イタリア料理店に行くことや、イタリアファッションを身に着けることがある種のステイタスでした。でも、今はそういう時代ではありません。もはや現地の修業を経たシェフは珍しい存在ではなく、向こうのクリエイティブをそのまま持ち込んだとしても、イタリア料理店が飽和状態のなか、“自分らしさ”を追求しなければ、この先厳しいと感じました」
もちろん、軸足は血肉化した「イタリア」に置きつつ、岡野さんの眼差しは、イタリアにもない、自分にしか作れない料理へ。規定種目にプレイヤーの個性が顕著に表れるのと同様、イタリア料理の象徴、「パスタ」にこそ、シェフの個性が如実に反映されると考えている。
「その皿にイタリアらしさを感じる人、和の要素を見出す人、あるいは僕の個性としてとらえる人、さまざまでしょうが、解釈は自由。ただ、お客さまが喜んでくれたら満足です」
リストランテ カシーナ・カナミッラ
Ristorante Cascina Canamilla
東京都目黒区青葉台1-23-3 青葉台東和ビル2F
03-3715-4040
● 11:30~13:30LO 18:30~21:00LO
● 火休、不定休
● 24席
www.canamilla.jp
浅井直子=取材、文 花村謙太朗=撮影
本記事は雑誌料理王国第288号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第288号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。