「発酵させた食材や調味料を駆使し、香り、辛味、苦味、甘味などの要素をハーブやスパイスで積み上げる中国少数民族料理は、フランス料理やイタリア料理、そして日本料理といったさまざまなジャンルの料理人にとっても参考になるアイデアや考え方が詰まっていると思います」。
例えば「酸鴨(鴨のなれずし炒め煮)」は、蒸したもち米で作った漬け床で発酵させた鴨肉にトマトを合わせて炒め煮にした料理。
この製法は琵琶湖の鮒ずしのルーツだともいわれているが「発酵させた鴨肉を熟成させた肉と捉えるならば、イタリア料理などに見られる生ハムやベーコンとトマトの組み合わせとも解釈できる」と中村シェフは言う。
そんな話を聞きながら鴨肉を齧れば、これが肉か? と見紛うような爽やかな酸味が口の中を巡り、うま味がひたすら長く続く感覚。まるで品の良いチーズ料理を味わっているかのような気にもなる。
食材を発酵させるという過程を自らの手で行なうことで、中華料理の本来の成り立ちが見えてくる。
中村秀行(なかむらひでゆき)
1973年埼玉県生まれ。
「東天紅」、「招福門」での修業の後、半年間かけて中国を中心に東南アジアを旅する。帰国後「菊華」の料理長を経て、「白金亭」(東京・白金)の立ち上げに参加。2009年に「中国旬菜 茶馬燕」を開く。日本中医食養学会認定薬膳アドバイザー。
中国旬菜 茶馬燕
神奈川県藤沢市南藤沢20-15
第一興産18号館6F
TEL 0466-27-7824
12:00 ~ 13:30(最終入店/土日のみ)
17:30 ~ 20:30(最終入店)
水休(不定休あり)
text 小林淳一 photo 松園多聞
本記事は雑誌料理王国304号(2019年12月号)の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は304号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。