点心の技と考え方を学んだ村山さんが、その成果をもとに考えた新しいひと皿。
スペシャリテであるラビオリのスタイルも取り入れた「鮟鱇のカルツォーネ」が完成した。
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村山さんは早速、「老麺」の仕込みに挑んだ。イーストを使って酵母をおこし、朝と夜、1日に2回元種の一部を取って新しい種を作ることを繰り返し、1週間が経った。
この自家製「老麺」をもとに、宮田さん直伝のレシピでパオズの生地を作る。「かん水とアンモニアパウダーは入手できなかったので、重層で補いました。ラードは使わず、バターを使ってみます」と村山さん。
餡の素材には鮟鱇を選んだ。コラーゲンをたっぷり含む鮟鱇を使う事で、具材をしっかり固めることができると考えたのだ。鮟鱇はフィレ部分を取り置き、それ以外の部位は茹でてから煮込んでコラーゲンを抽出。宮田さんに教わった叉焼包(チャーシューパオ)の餡の〝つなぎ〞役にする。フィレは細かく切って魚醤(ガルム)と砂糖、バターと一緒にソテー。煮込んだ皮と合わせて〝つなぎ〞と混ぜ、さらに火にかけて水溶き片栗粉を加え、しっかり固く仕上げる。
生地は綿棒で伸ばし、餡を置いて半分に折ってから半円に切り抜く。これは、イタリアで「ルーナ」と呼ばれる、半月を模したラビオリの包み方だ。
鮟鱇のフィレ以外の部分は煮込んで餡の〝つなぎ〞に使う。フィレは煮込んだ皮と一緒につなぎと合わせる。餡は片栗粉を加えて加熱し、固める。
老麺を使った生地。餡を包んだ後、「ルーナ」というラビオリの形に仕立てる。
蒸し器で6分間。ふたつに割ってみると生地の一部が生っぽい。「ダメだ」。生地の厚さを1ミリ前後に薄くしてもう一度チャレンジ。今度は、生地はしっかり膨らんでイースト臭さもなく、鮟鱇の餡はゆるすぎず固すぎず、ほどよく仕上がった。
「村山さんのひと皿」に仕上げるため、付け合わせもひと工夫。20度に保ってじっくり濃縮させた青ミカンのシロップと野菜を和え、ケーパーを加える。さわやかな酸味のあるサラダと一緒に味わうと、点心とはまた一味違う味の広がりが生まれる。村山さんはこのひと皿を、「鮟鱇のカルツォーネ」と名づけた。