日本料理の基本「だしを学ぶ」


精進だしをとる

〈できあがり分量1.2ℓ〉
水 1.2ℓ
昆布 35g
干し椎茸(香信) 15g

1.鍋に水を入れ、干し椎茸と昆布を浸ける(約5℃で5 時間)。
2.5時間たったら椎茸を取りだして加熱する。強火にして、60℃まで短時間で加熱する。60℃になったら椎茸を戻し、60℃前後を保ったまま1時間加熱する。
3.1時間加熱したあとで90℃まで温度を上げ、昆布と椎茸を取りだす。
4.アクが出てきたら取り除き、火を止める。その後、目の細かい布で漉す。

*料理によっては、干瓢や煎り大豆を加えると味に深みが出る。干瓢(20g)を加える場合は1で入れ、3で取りだす。大豆(40g)の場合は、大豆をよく煎って4で加える。アクが出てきたら取り除いて火を止め、30 分おいてから漉す。

炊き合わせ

肉類を使わない精進料理では、豆腐をはじめとする大豆製品がよく使われる。飛龍頭もそのひとつ。椎茸、昆布、煎り大豆を合わせただしで炊き、深い味わいに。

精進だし
精進料理は、仏教のひとつの宗派である禅宗によって完成された料理体系で、その考え方や技術は懐石料理に大きな影響をあたえているといわれている。精進料理では動物性の食品が禁止されているため、だしにも動物性の材料は使わない。精進だしには、乾燥された椎茸や干瓢、大豆などを水や湯で抽出したものがある。精進だしのうち、椎茸だしは重要なもののひとつで、強いうま味がある。うま味成分であるグルタミン酸とイノシン酸またはグルタミン酸とグアニル酸を同時に味わうことで、強くうま味を感じることを相乗効果と呼ぶが、イノシン酸とグアニル酸を同時に味わっても相乗効果は起こらないとされている。椎茸のうま味成分であるグアニル酸は、加熱によって酵素が働いて生成するが、グアニル酸を生成する酵素だけでなく分解する酵素も存在するため、それぞれの酵素をうまくコントロールしないと、グアニル酸が減ってしまう。グアニル酸を生成する酵素は60℃前後まで熱に安定で、椎茸の傘の裏のひだ表層に分布しており、グアニル酸を分解する酵素は、40℃でも熱に不安定で、傘の上部表層に偏って分布しているので、椎茸だしをとるときは、傘の裏が浸かるように沈め、60℃前後まで温めるとよい。干し椎茸は水にもどすと特徴的な香気が発生し、その成分はレンチオニンであると報告されている。昆布などのグルタミン酸との相乗効果をうまく使って、干し椎茸のにおいは強くせずにうま味を出すようにする工夫をするとよいだろう。

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