フランスの春の代名詞、ホワイトアスパラガス。ギョームシェフはバターとレモンジュースを纏わせた生のホワイトアスパラガスと、バターで焼いたアスパラガスの二つを合わせ、昆布のパウダーをかけたところに、通常硬くて使えないアスパラの茎の部分をコールドプレスジューサーで絞り出し、昆布とカツオの出汁を加え、豆腐を混ぜた「出汁」を作ってかける。
アスパラの旨味にキャビアと昆布のヨード系の旨味を重ね、クリームの代わりに豆腐出汁の優しいまろやかさを生かした一皿だ。
フレンチレストランでの提供する日本料理。違和感のない方法はと考えて、折敷の代わりに、懐紙の上に盛り付けたのが、桜鯛の昆布締め。醤油の代わりに煎り酒を少し塗り、春らしいわらびを添えて。和食の印象が強い醤油ではなく、酒で梅干しを煮出す煎り酒を使うことで、フランス料理との親和性も増している。
また、ティーペアリングは宮崎県の釜炒り茶にスダチと大葉を合わせた大葉煎茶。蒸したものよりもすっきりとしたお茶、また紫蘇と桜の香りが、想像以上に相性が良い。
東京の中心、大手町にあるフォーシーズンズホテル東京大手町。昔の江戸の料理といえば、職人の町らしくさっと食べられる屋台の天ぷらや寿司、蕎麦だった。そんな粋な食べ方を、春らしい白魚を使って表現しようと、備長炭の上に直接薄い餅をのせてパッとあぶって、手巻き寿司のように海苔の上にのせ、白魚の天ぷらと唐墨のパウダーをかけて包んで供する。目の前で餅が焼ける香ばしさ、手渡しのリズム感を含めた「江戸らしい」一品だ。
アルコールペアリングは、「ワタツミ(海神)」。古酒を混ぜ込むことで、ランシオ香のような味の複雑さとキャラメルのニュアンスが加わり、麹の豊かな香りも感じる純米酒だ。
相模湾で獲れる巨大なアカザエビをオリーブオイル で両面をごく軽く焼き、ミキュイの状態に仕上げた。
サイドは、そんな繊細で滑らかなラングスティーヌの食感に合わせ、マスタードリーフやルッコラなどのハーブと玉ねぎ、じゃがいものピュレ、卵、小麦粉を混ぜて作ったごく柔らかいニョッキに、生姜の香りのグリーンピース、生のマスタードリーフやルッコラなどの生の葉野菜にレモンブールブランソースをかけたものを合わせて。殻や頭でとったビスクはアルコールの香りよりも、野菜の甘味や海老の旨味を活かした穏やかな味わいで、逆に生姜やマスタードリーフなどでエッジをきかせている。素材感を大切にしたい、というギョームシェフのスタイルが現れている。
ワインペアリングは、柑橘類のような清々しいニュアンスのある、ロワール・サンセール、クロード・リフォーのソーヴィニョン・ブラン。
北九州・合馬の筍に薄く片栗粉を纏わせて揚げたもの、雪の中で眠っている赤ちゃん筍をそっと起こしていただいているような、えぐみのない優しい甘さ。皮を外して素揚げした甘鯛は、本来炭で焼いて余分な油を飛ばすところを、同じ遠赤外線で火入れができるピザ窯がエストにあることから、ピザ窯で油を飛ばして。ほのかな春の苦味の蕗の薹に、しっかりと出汁の旨味を効かせた餡をかけて。ゆりね、葉牛蒡と合わせ、食材の走りと旬と名残を合わせた。
ティーペアリングは、渋みが少なく、ダージリンのような華やかな香りの和紅茶で。