撮影のため、西井水産の西井社長にお願いして水槽から揚げてもらったが、通常アマテガレイはカゴに入れられ、活きのまま水槽で保管される。松山市内にある漁業協同組合の魚市場ではアマテガレイは活魚で競りにかけられる。競り落とした仲買人は、契約している市内の料亭などに価値が下がらないように活きのまま届けるそうだ。
カレイ目カレイ科。両目が身体の右側にあるのがカレイ科。左側にあるのはカレイ目ヒラメ科に属することから、左ヒラメの右カレイといわれる。日本近海には約40種のカレイが分布。その中でもマコガレイ、マガレイ、スナガレイなどがよく知られている。松山では、アマテガレイと呼ばれるマコガレイや、イシガレイ、メイタガレイ、ホシガレイなどが捕れる。ちなみに大分県日出町のシロシタガレイもマコガレイだ。松山市内には8つの漁業協同組合があるが、1本釣りでタイなどをねらう漁師が多く、カレイ専門に漁をしている人は少ない。アマテガレイは刺し網漁、メイタガレイは底引き網漁で捕獲される。
カレイといえば、大分県日出町のシロシタガレイが有名だが、そんな全国区のブランド魚に勝るとも劣らない〝アマテガレイ〞が愛媛県松山市で水揚げされている。「冬に捕れる子持ちのアマテガレイも旨いんですが、旬は初夏から8月ごろまで。松山では別名、梅雨ガレイとも呼ばれるように、アマテガレイは梅雨の時期が旨いんです。旬を迎えたころ、魚体が飴色になったアマテガレイは刺身が一番」と語るのは、松山市内で鮮魚店を営む西井水産の社長、西井紀義さんだ。
そもそも松山市のカレイはなぜ旨いのか。瀬戸内海には本州や四国から流れ込む川が多いが、川の水が供給する養分でプランクトンやゴカイ、小エビ、カニなどが育つ。それらを食べるため、同市で水揚げされるアマテガレイは旨いとされる。
しかも瀬戸内海は海底の起伏が激しく、岩礁もあれば砂場もある。海流が速い瀬戸内海で育ったアマテガレイは、豊富な運動量によって筋肉が発達し、よりおいしくなるという。
多くの漁師は、この魚を底引き網や刺し網などで捕っている。死ぬと価値が下がるため、活きのまま水揚げされ、市内の市場などで競りにかけられる。「うちでは店の目の前にある柳原港に水揚げされたアマテガレイを漁師から直接買い付けています。空輸しているので都内であれば、活魚の状態で当日届きます」
調理法はさまざまだ。アマテガレイ専門の漁師によれば、煮付けや、唐揚げ、しゃぶしゃぶなど、刺身以外にも可能性が広がる食材だ。
西井水産では店内の生け簀でアマテガレイなどを保管している。
水揚げ量が減り、今や幻となりつつあるホシガレイも西井水産では扱っていた。
西井水産は松山空港から車で約50分。電車を利用する場合、JR予讃線柳原駅より徒歩5分。「馳走屋河の」は松山空港から車で約30分。
●問い合わせ
西井水産
アマテガレイをはじめとする瀬戸内海産の魚介類を活きたまま、都内の料亭などにも発送している。
アマテガレイは時期によって異なるが、約3500円/1㎏。
愛媛県松山市柳原181-5
☎089-992-0040
冬はしゃぶしゃぶがおすすめです。カレイの中骨を強火の遠火で約20分間焼き、冷まします。その骨を冷ました一番だしに入れ、沸騰するまで強火で煮出し、アクを取ったあと、弱火で約20分間煮てください。酒、塩、醤油を加えただしで皮付きのカレイをしゃぶしゃぶにし、ダイダイの搾り汁に醤油を加えて食べます。野菜はだしの味をじゃましないレタスのみです。
「アマテガレイのしゃぶしゃぶ」。〆は鍋だしをごはんにかけて。
馳走屋河
愛媛県松山市二番町2-8-6
グリーングラスビル2F
☎089-931-7322
●18:00~23:00
●日休
●予算10000円~
中島茂信・文 高橋仁己・写真
本記事は雑誌料理王国210号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は210号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。