2025年9月中旬、フランスの食文化の紹介するイベント「フランス 美食の余韻 – FOOD EXPERIENCE」が開催。
プログラムのひとつとして、これから日本での市場拡大が期待される「フランス産牛肉のセミナー」が行われた。セミナーを通じて紹介されたフランス産牛肉の魅力を紹介する。
フランスの豊かな食文化の精髄を日本に紹介するイベント「フランス 美食の余韻 – FOOD EXPERIENCE」が、2025年9月17日・18日の2日間、東京・港区のフランス大使公邸で開催された。
ご存知の通り、フランスは美食の国であると同時に農業大国でもある。その豊穣の大地が魅力的な食材を生み出し、ひいてはユネスコ無形文化遺産にも登録されたフランスのガストロノミーにもつながっているのは疑いの余地がない。
そんなフランスの食材や伝統菓子を手がける企業22社と2団体が、フランス各地から参加。製品のクオリティだけでなく、確かなストーリーと独自のコンセプトが紹介された。
「フランス 美食の余韻」は商談会の側面と持つと同時に、現在のフランスの食の情報を得て知識を深める場でもある。9月18日に行われた「フランス産牛肉のセミナー」も、そのひとつだ。


フランスはヨーロッパ第1位の牛肉生産国。枝肉重量換算にして、年間生産量は136万トンにもおよぶ。畜牛1,690万頭、うち1,000万頭が哺乳牛。畜産農家は129,6000軒を数える。
品種についても、世界でも有数の多様さで、その数22〜25。うち10種の哺乳牛で農業コンクールの受賞歴があるほどだ。
フランスでの牛の生産は国内各地に及び、品種の違いこそあるものの、ヒューマンスケールな家族経営で行われる。農家1軒当たり平均飼育頭数は60。いわゆる大規模農場と比べると小ぢんまりとしているが、その分、のびのびと育てられ、牛たちに寄り添い、人の目がゆき届きているといえる。
これに関連して、フランスの畜牛の特徴として、ナチュラルな生産方式が挙げられる。
牧草や干し草で育つ動物の飼料(牧草、飼い葉、穀物)の85%が農場で生産され、サステナブルの観点からも、時代に沿った飼育方法といえる。
成長促進のためのホルモン剤や抗生物質は不使用なのも、現在、そしてこれからの時代に、ますます見逃せない点だ。

注力されているのは飼育だけでない。
誕生から屠畜まで個体ごとのトレーサビリティを実現している点も、重要なポイントである。市場に出る牛肉にはラベルを貼り、出所の追跡が可能だ。
厳しい規制により、食肉処理場には獣医師の駐在が義務づけられており、動物福祉の面でも、動物保護官がおり、牛にとってできるだけ快適な環境作りを行っている。
細かい格付け、34の部位に分ける厳密な処理方法など、食肉処理の技術とノウハウも、世界随一だ。
このようなフランスの牛肉は、東アジア、そして日本でも注目されていて、2020年8月、日本で月齢30か月以上の牛肉の輸入が始まった。
フランスの牛肉は、概してジューシーな食感と長く持続する風味が特徴だ。脂身が少なくヘルシーな肉質でありながら、軽い霜降りなので、弾力を持ちつつ肉質が柔らかい。
セミナーでは、実食も行われ、登場したのは、ブルターニュの「EJENDU(エジェンドゥ)」というブランドビーフ。2019年にスタートしたプロジェクトにより、ブルターニュの専門家たちが最高の牛を求めて、ブロンド・ダキアーヌやオールブラックなどのフランスの極上牛を交配して誕生。専門知識のあるブリーダーにより丁寧に育てられている。
他のフランスの畜牛同様、自然飼料で育てられる。「EJENDU」の場合は牧草だが、グラスフェッド特有の臭みもなく爽やかな味わいがある。
この「EJENDU」を、サーロインはステーキ、スカートの部位は煮込みで、2品を試食した。
調理を担当したのは、“パリでもっともおいしいステーキ店”「セヴェロ」の日本店、東京・中目黒「Cellar Fête(セラフェ)」の齊田武シェフ。
渡仏11年のキャリアで 、「セヴェロ」では4年半腕をふるうなど、フランスの肉文化に精通したシェフ曰く、「サーロインは、フランスの牛肉らしい筋肉質ながら、多くはないものの程よい脂があります。肉そのものに甘みがあり、焼いたときの香りも素晴らしい。まさにフランスの牛肉を思わせます。噛み締めて食べ応えを味わって欲しいので、厚めにカットしました。
一方スカートは繊維質。日本の牛肉と違って繊維が太く、煮込みに向いています。今回は、一回沸かした後、ブドウと一緒に低温調理にして煮込みにしました。繊維質とはいえ、筋張っているということはなく、煮込むとほろほろとほぐれ、旨みがしっかりと感じられます」。
これらの特徴を、品種、育て方、そして飼料にあると、齊田シェフは分析。特に飼料は、牧草をメインに穀物の飼料を与えることで、甘みや酸味も出て、肉の味わいに奥行きが出る、という。




「EJENDU」はブルターニュ地方のブルトンの言葉で、“黒牛”という意味。
まさに、“黒牛”らしい赤身肉をベースに、程よい脂質が融合。バランスのよさが最大の魅力だ。
EUの格付けでE+4〜E+3と評価。日本でAランクに該当するフランス産の牛肉の「EJENDU」は、質の面でも申し分ない。
全体的に肉質が柔らかいので、フランス料理のみならず、日本料理をはじめ、アジア系の料理でもその力を発揮してくれるのは間違い。まさに、今の時代と日本人の味覚に合った牛肉といえるだろう。
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text: Noriko Hane, photo:Hajime Souma
