伝統と革新を問う料理コンクール 第21回“ジャン・シリンジャー杯” エントリーのポイントと参加の意義を審査員と経験者が語る


『第21回メートル・キュイジニエ・ド・フランス“ジャン・シリンジャー杯”』が2025年7月より、いよいよ開催される。(エントリー締め切り7月15日必着、第一次のルセット審査7月22日)。今回から年齢、性別に加えて経験年数と料理ジャンル(職種)、国籍も不問となり、門戸がこれまで以上に拡大された。そこで、同コンクール参加の意義やエントリーする際の注意点、考え方や審査におけるポイント、参加後の歩みを聞くべく、第21回の審査員を務める滝本将博氏、第17回大会と『第69回プロスペール・モンタニエ』の優勝者である林 啓一郎氏へのインタビューを下記の記事と動画でお届けする。

『メートル・キュイジニエ・ド・フランス“ジャン・シリンジャー杯”』とは、フランス料理の伝統の継承と発展を目的に「フランスレストラン文化振興協会(APGF)」が2年に1度主催するプロ向けの料理コンクール。

フランス・パリに本部があり、オーナーシェフで構成される会員組織「メートル・キュイジニエ・ド・フランス協会」の後援を得て開かれる権威あるコンクールのひとつだ。

特徴は日本で唯一「皿盛り」の料理をテーマとしていることや同日にサービスのコンクールである『メートル・ド・セルヴィス杯』も開催されるため、料理人とサービスが交流できること。さらに、優勝者はフランスで最も伝統を持つ『プロスペール・モンタニエ国際料理コンクール(以下、プロスペール・モンタニエ)』の出場権を得られること。近年はプレゼン力やトーク力が問われるコンクールもある中で、料理に対する考えのプレゼンは1次審査の書類上のみ。準決勝と決勝の2回にわたって厨房審査が行われる実技重視のコンクールとして知られる。

林氏は、同大会に2度出場。2013年に参加した1回目は準決勝の厨房審査において制限時間オーバーで敗退する一方、試食審査では上位だったことが後から分かり、心残りがあったという。そこで、心残りの払しょくと、勤めていたレストランの知名度を上げるという目標も加わり、2017年に再挑戦した。

出場前に抱いていた同大会へのイメージは「他の有名なコンクールはプラッター盛り(大皿盛り)を作る課題が多い中、「皿盛り(一人前盛り)」が課題のコンクールなので、レストランで働く上で普段の仕事を評価してもらえると思った」と話し、優勝を狙った2回目の参加時には、『プロスペール・モンタニエ』出場権が得られることもモチベーションに繋がったと話す。

下記の動画では、エントリーする際に必要な写真の撮り方や注意点、レシピの書き方、メニュー名についてなどのポイントを細やかに解説。その他、公正を期した審査システムや今回から変更された参加条件、今回の課題についても語ってもらった。

なお、林氏が第17回の『ジャン・シリンジャー杯』で制作し優勝を飾った料理「真鯛と豚足のドーム仕立て 赤ワイン風味のジュ」は料理王国のYouTubeで公開中。第17回の予選テーマである鯛と豚足料理の実演を通し、与えられた課題と制限時間から同料理にした理由、メニュー決めや制作のポイント、時間短縮のコツなどを紹介しているため併せて見て欲しい。

林氏は、大会参加前はコンクール出場経験者の先輩や友人にポイントを聞いたり、事前に開かれる講習会に参加したりするなど情報収集を行い、2回目の出場時は某国際大会の日本代表経験者である当時の上司(『プレスキル』佐々木康二氏)から指導を受け、まかないの時間を利用して毎日、同じメニューを作り続けたという。

ただし、林氏が現在講習会を行う際、参加希望者に伝えるのは「過去に用いられた技術や考えは参考にして欲しいけれど、メニューは参考にしないように」という警鐘。

なぜなら、講習会で過去に紹介された料理は審査員にとっては驚きがなく「数年前に誰かが作っていた料理」と一蹴されるためだ。『ジャン・シリンジャー杯』のみならず、国内のコンクールが終わると優勝者の技術を披露する講習会が各地で行われ、その知識や技術が共有されるのは定石。「それらを超える新しいアイデアや技術が必要。経験が浅い人ほど、過去の入賞作品に引っ張られてしまうことがあるので、同じ方向に行かないことは意識するべき」だと語る。

『ジャン・シリンジャー杯』に出場して得たものは、大会を通して食材に向き合う時間の中で培う知識と経験により、「得意な食材や調理がぐっと増えたこと」と話す林氏。

昨今のホテルやレストランにおける働き方から食材と向き合う時間を取る事や料理をイチから提供まで作る機会が減る中で、得意分野が増えるのは素晴らしく、またとない機会だといえる。

なお決勝まで残り、表彰式のガラパーティーに出席すると200〜300名の業界関係者や一般の要人が集まり、同業者やサービスだけでなく各界においてネットワークを繋げることも可能。こうした料理コンクールとサービスのコンクールを同日に行い、未来を担う料理人とサービスが一堂に集まって、一堂に各業界関係者にお披露目することは、同コンクールが当初から目指していることであり、フランス本国にもない『ジャン・シリンジャー杯』の特徴だ。

さらに優勝者は、パリで開催される『プロス・モンタニエ』での活躍が期待され、これまでの歴代優勝者や審査員を中心にサポートメンバーが組まれ、ブラッシュアップしながら世界の強豪に挑むことになる。

大会参加後は、林氏をはじめ歴代出場者の活躍から言わずもがな。経験と知識、度胸やメンタルを培うべく、ぜひ下記の動画を参考にしてチャレンジし、未来を自身で描いて欲しい。

ジャン・シリンジャー杯のエントリーはこちらから
https://apgf.hp.peraichi.com/

・エントリー締切(ルセット必着)
2025年7月15日(火)
・エントリー費
12,000 円

text: 佐藤良子

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