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パリでフランス料理店を開くということ。「レストラン・ケイ」小林 圭さん、知加子さん


「日本人が作るパリのフランス料理店に、世界中からお客がやってきてくれる――。将来的には、そんな店にしたいです」と、穏やかに、固い信念を語る小林圭さん。2011年3月にオーナーシェフとして「レストラン・ケイ」を開業して約9カ月。連日、昼も夜も満席だ。

 8年間勤めた三ツ星の「アラン・デュカス」では、スーシェフまで上りつめた。しかし、大グループでシェフになることは難しい。自然に、独立を考え始める。当初は、シェフのポストや資金提供をしてくれるオーナーを探したという。しかし不況もあいまって、シェフのポストは空かず、満足いく条件が見つからない。自分の力で開業する決意をし、昨年7月から本格的に始動。6軒ほど回った物件のうち、選んだのは、知人から紹介された元二ツ星レストラン。客席数は25席、80㎡という広さ。「それに伴う人数のスタッフをオーナーとして自分が回していけるのか。最初は不安でした」と打ち明ける。パリでは今、飲食店不況の影響もあり、高級店出身の料理人がカジュアルなビストロを開く傾向にある。しかし小林さんがめざすのは、「星が取れる店」。その目標を実現するためには、それに見合う物件が必要と考えた。日本の銀行から資金を借り受け、営業権を購入。同年12月に工事を始め、今年3月にオープンした。高額な営業権や家賃、物件の空きが少ないなどの理由で、開業まで最低2年といわれるパリにおいて、小林さんは幸運なスタートを切ったといえる。

 料理人は、信頼できるデュカス時代の同僚が2人、ついてきてくれた。「食材はデュカス時代に知り合った生産者が助けてくれました。 三ツ星レストランと変わらない、それ以上の鮮度のものを使っています」と話す。鴨肉に味噌ベースのソースをかけて焼いたり、ウロコをカリカリに焼いたスズキにレモン系ソースを添えたり、ひとつの皿のなかに、多彩な風味と色彩、異なる食感が表れる。

 自分のやり方を追求する考えは、メニュー構成にも表れている。「今、自分が何をお客さまに食べてほしいかは、アラカルトでは伝わらない」との考えから、昼も夜もおまかせコ ース2本のみ。小さめのポーションで4~6皿を提供する。客単価は、昼は約70ユーロ、夜は140~150ユーロ。日仏融合の料理と評されることが多いが、いまや多くのフランス人シェフが和素材を使う時代「。自分の記憶も体験も、すべてが融和した自分の料理を極めたい、そう思っています」。

Kei Kobayashi
Chikako Kobayashi
圭さんは1977年長野県生まれ。93年から東京などのフランス料理店で働き、99年に渡仏。地方のレストランを経て、2003年から10年まで「アラン・デュカス」勤務。最後の4年間はスーシェフ。夫人の知加子さんは元パティシエールで、サービスから総務までこなす。


三富千秋(パリ)・文 上仲正寿(パリ)・写真

本記事は雑誌料理王国第209号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は第209号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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