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【飲食店の法律相談所 #10】急な閉店と解雇通告。どのように対応すればよいでしょうか?


Q.急な閉店と解雇通告。どのように対応すればよいでしょうか?

フランス料理店のシェフでした。オーナーから誘いを受けて、現店のシェフになりました。オープン1年ほどたった先日、急に「今週で店を閉める、お前も解雇だ」、と一方的に通告を受けました。
私以外にもスタッフが3名おり、彼らの生活のことも考えると、この通告は到底納得できません。すくなくとも閉店1カ月前には言うべきだと思いますし、完全に裏切られた気持ちです。どのように対応するのがよいのでしょうか。
(30代、フランス料理店 シェフ)

A.オーナーの夜逃げや行方不明などの場合は、労働基準監督署へ

シェフとして引き抜かれてきたお店がいきなり閉店というのでは、なかなか納得できないかもしれませんね。閉店といっても、いろいろなパターンがありますから、状況別に考えてみましょう。

解雇予告手当の支払は必要

解雇をするには、客観的で合理的な理由が必要です。単に「気にくわない」というだけでは解雇できないわけです。今回のように、赤字など経営上の理由もひとつの根拠にはなりますが、このような解雇は、従業員側に落ち度のない解雇です。したがって、お店側として、解雇しないために努力をしたか、という点も重要になります。

現在のお店が、チェーン店のように、別の店舗もある場合には、他の近隣店舗への異動という手段もありますから、「この店を閉めるから解雇」というわけにはいきません。もちろん、他の店舗の人員との兼ね合いもありますから、他の店舗があるからといって、絶対に解雇が認められないわけではありませんが、少なくともしっかりと検討する必要があるということです。したがって、このような場合には、そもそも解雇が無効であることも含めて、しっかりと交渉すべきでしょう。

反対に、オーナーがひとりでやっているような個店の場合、「閉店」というのは文字通り、完全に店を閉めるということです。店を閉めるのであれば、従業員は解雇せざるをえませんので、解雇自体を争うわけにはいかないでしょう。

もちろん、解雇はやむをえないとしても、1カ月前に通知するか、1か月分の解雇予告手当の支払いは必要です。

しかしながら、個店で閉店ということであれば、オーナーや会社は破産する可能性もあります。そうした状況では、現実的に支払いを期待することができなくなることも、珍しくありません。

未払賃金の立替払制度について

破産するような場合、そもそも未払いの賃金や退職金が存在する場合もあります。 そのような場合には、未払賃金の立替払制度というものがあるので、利用するとよいでしょう。要は、国(正確には「独立行政法人労働者健康安全機構」)が、お店に代わって、未払い分の賃金を支払ってくれます。原則として8割が支払われますが、金額の上限もありますし、それこそ、解雇予告手当やボーナスなどは含まれませんが、泣き寝入りするよりは、はるかによいでしょう。破産している場合には、裁判所の手続が行われているはずですので、破産の証明は簡単ですが、夜逃げや店だけ閉めて連絡がとれないというように、事実上の破産の場合には、本当に破産しているのかどうかを調査する必要が出てきます。場合によっては、支払いまで半年程度かかる場合もありますので、まずは、最寄りの労働基準監督署に相談してみましょう。

飲食店専門弁護士 石﨑冬貴
1984年、東京都生まれ。神奈川県弁護士会会員。横浜パートナー法律事務所所属。飲食店法務を専門的に取り扱うほぼ唯一の弁護士。著書に『なぜ、飲食店は一年でつぶれるのか?』(旭屋出版、2018年)がある。

本記事は雑誌料理王国2019年8月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 2019年8月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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