—— コルビさんが日本酒に興味を持つようになったきっかけとは?
コ 私が日本に来たのは23年前のことですが、当時は日本酒にまったく興味がなかったんです。当時の日本酒は今の日本酒と比べると別物でしたから。その後、関西にいた2003年頃に初めて日本酒のセミナーというものに参加しました。そこでは蔵元の方が、珍しい日本酒をお猪口ではなくワイングラスで出していたんですよ。それがきっかけで日本酒に対する認識が変わり、日本酒を勉強し始めました。現在、店で出している日本酒はすべて蔵元から直接仕入れています。今では、全国で100ほどの蔵元とおつきあいがありますね。
—— 阿部さんとワインの出合いというのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか?
阿 もう遥か昔になりますけれど、この業界に入った当初は料理人を目指していたんですよ。ところが入った店ではキッチンがいっぱいで、サービスの仕事をするようにと言われまして。それでワインを扱うようになり、すっかりその魅力にとりつかれました。そんな中、同僚たちが自分より先に辞めてしまって、必要に迫られて本格的にワインを勉強し始めたのが20歳。33年前のことです。
—— おふたりとも、日本酒よりワインに触れるのが先だった点でも共通していますね。
阿 実は私も、昔の日本酒はおいしいと思えませんでした。
コ ここ15年くらいで、ずいぶん変わったように思います。
阿 同感です。実際のところ、ヨーロッパのレストランで日本酒を出している店はあるのでしょうか?
コ あります。私が知っている限りでは「ピエール・ガニェール」、「ル・サンク」などのグランメゾンを中心に、「新政」、「獺祭」、「醸し人九平次」などの有名どころを扱っています。でも、向こうでは日本酒の仕入れ値が日本の3倍もするので、グランメゾンくらいしか置ける店がないというのが現状です。
阿 それでもすごいですね。パリの有名なグランメゾンでも、料理と日本酒のペアリングを叶える時代になっていると考えると。
コ この5〜6年くらいの傾向として、日本の蔵元の中にも、新たな市場を求めて海外へ進出するところが増えているのが大きいですね。フランス以外にもアメリカ、アジアでは香港が、今ものすごく日本酒ブームになっています。だから日本でも、小さな蔵元だと8割を外国に出してしまうところも出てくるわけです。自国フランスでは売られず、ほとんど外国へ行ってしまうシャンパーニュと同じですね。