巨匠マルケージのDNAを受け継ぐ者④「食材の魅力を感性で引き出す」〜エンリコ・クリッパ〜


Enrico Crippa(エンリコ・クリッパ)
食材の魅力を感性で引き出す

Profile
1971年生まれ。マルケージから1996年神戸の「ビストロ・マルケージ」のメインシェフとして派遣される。2005年アルバに「ピアッツァ・ドゥオモ」をオープン。

Ristorante Piazza Duomo
(リストランテ・ピアッツァ・ドゥオモ)
Piazza Risorgimento, 4, 12051 Alba (Cuneo)
+39 0173 366167
https://www.piazzaduomoalba.it/
営業時間:火~土 12:30 ~ 14:00 19:30 ~ 21:30
休:日·月

シニョール・マルケージが抱き続けた食材と生産者へのリスペクト。
最高の小麦畑で大切に育てられたパスタに勝るパスタはない

エンリコ・クリッパも常にそばにいた愛弟子のひとり。1996 年神戸へ派遣されレストラン「マルケージ」を任されたことから、いかに信頼されていたか想像に難くない。師は彼を「もっとも冷静でクールな弟子」と評した。その彼が、師との思い出を話してくれた。修業中、「冷製スパゲッティのサラダ、キャヴィア添え」のオーダーを連絡ミスのために皿の数が違ったことがあった。クリッパは間違っていますと師に伝えたが、「間違ったのではない。互いに説明と理解が不充分だったのだと言いなさい」と返された。マルケージは厨房にいる時も常に紳士なのである。

弟子たちにすべてのプロセスを見せ、理解して繰り返せるようになるまで見守った。ラムの肩肉やミラノ風カツレツ用の仔牛肉の下準備を任せると、背後から見守り、必要であれば静かな声で指導する。弟子たちにも人としての尊厳を持って接したのである。

野生のフィノッキオを使ったイワシのスパゲッティ
伝統的なパスタを洗練されたリストランテのスタイルに昇華した一品。野生のフィノッキオ(ウイキョウ)をゆでる。ゆで湯はとっておく。フィノッキオを小さな角切りにする。イワシをおろし、細く切る、フライパンに少量のオリーブ油を入れてフィノッキオをつぶしながらソテーする。イワシも加えてさらにつぶしながらソテーする。フィノッキオをゆでた湯でスパゲッティをゆで、先のイワシとフィノッキオをからめ、E.V.オリーブ油を合わせて皿に盛りつける。フィノッキオの葉とイカ黒スミパウダーを飾る。

text 山田美知世(Michiyo Yamada)
ミラノ在住38年。ファッションや料理に関する情報を発信し続ける。 マルケージとの交流も深い。

本記事は雑誌料理王国2020年8・9月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年8・9月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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