宮城を代表する食材として有名な牡蠣、せり、そして日本一を誇るメカジキやパプリカ。宮城県産の食材にこだわる料理人黒森シェフがその産地を訪ね、特産物に新しい物語を紡ぎ出す生産者を巡る。今回は、「牡蠣」と「せり」をご紹介します。
海に山に名物と呼べる多彩な食材が育まれている宮城県。世界有数の豊かな海と広い平野という恵まれた環境を生かし、長い歴史の中で様々な特産品が生まれてきた。そして近年では、一歩進んだ取り組みがあちこちで見られるようになっている。
宮城県で養殖されるのはマガキと言われる種類。水質のきれいな海で育ち、生食用として利用される割合が高い。種苗となる種ガキの国内有数の生産地でもあり、国内外に広く出荷される。
例えば、広島に次いで国内2位の生産量を誇る牡蠣。宮城県では、育つ海域の水質の良さから生食用牡蠣の生産を多く担っている。その中でもさらなる革新を目指す生産者がいた。
宮城県東部・東松島市で3代に渡り牡蠣養殖を手掛ける後藤水産の後藤晃一さんだ。「父の代で牡蠣の育て方をガラリと変えました」という後藤水産では、一般的には2〜3年かけて育てるという牡蠣を1年で出荷する。
浅瀬に作られた棚で日光や空気にさらし、あえて牡蠣にとって厳しい環境で鍛えた後、鳴瀬川の河口がある栄養豊富な外湾に出す。そうすることで牡蠣の養分を取り込む力が強まり、早く成長できるという。
浅瀬から湾の外へ出す「沖出し」作業はおよそ2ヶ月にも及ぶが、「手間はかかっても理想とする牡蠣が育つ」と後藤さんは胸を張る。1年で育つ牡蠣は2〜3年ものと比べて雑味が少なく、澄んだ味わいに魅力があるという。
「後藤さんの牡蠣は身が詰まっていて火を通しても縮まないんです」と黒森シェフもその品質に太鼓判を押している。
後藤水産
宮城県東松島市大塚字大塚104-1
TEL 080-1671-4233
http://www.gotosuisan.jp/