名レストランの料理には美味しいパンが欠かせない――。このベーカリーガイドでは、料理人の指名を受けてパンを焼く名の一流ベーカーをご紹介。料理人のリクエストや哲学をくみ取って、料理を支える最高のパンを作り上げる、ベーカーたちの思いとは?
日本の小麦と農産物でパンを作り、日本独自のパン食文化を大阪・本町から発信して16年。米山雅彦さんは「レストランのパンの価格が上がらず、店の作業性が落ちないバランスを考えるので、そんなすごいストーリーはない」と言うが、だからこそ、信頼を寄せる飲食店は少なくない。
「まずはシンプルなバゲットを食べてもらって、求めるイメージを聞き出します」。「パンデュース」の米山雅彦さんは、レストランからパンの依頼を受けると、バゲットを指標にする。用意するバゲットはスタンダードなものと冷蔵長時間発酵のもので、クープの有無で食感の異なる4種類。焼き色や小麦味の濃さや酸味、甘味など、細かな要望を聞いた後、サンプルをつくる。
「プレスキル」の佐々木康二シェフは言う。「米山さんは要望を聞きながら、小麦にもこだわって試行錯誤してくれます。糖質に気を遣わなければならないお客様がいらっしゃるときは、低糖質のパンを焼いてくださいます。私のイメージを超える美味しいパンでした。本当に頼りになります」。
現実問題として、商売としてはお互いに成り立ちにくいのがパンの卸しだ。ことに生地から一つひとつカスタマイズするとなると、どうしても単価が上がってしまう。厨房のオペレーションを考えても、1軒のレストランのオリジナル生地のためだけにミキサーを回すのは非現実的でもある。そこで既存の生地を組み合わせることで、要望に近づけていくことが多い。同じ生地でも、レストランでのリベイクを前提に焼きを浅めにしたり、サイズや形を変えることができる。パンの価格が上がらず、作業性が落ちないバランスを考える。そんな米山さんは現在30店ほどのレストランから頼りにされている。
米山さんは神戸の「コムシノワ」でパンを焼いていたので、パン職人にしてはさまざまな食材や農産物に触れる機会が多かったが、パンデュースをスタートさせてからは、料理人と共に畑を訪れたり、産地や銘柄、生産者限定の小麦を用いるなど、日本ならではのパン食文化を実現させている。
米山雅彦
1971年兵庫県出身。大学卒業後「カスカード」を経て神戸の「コムシノワ」で西川巧晃シェフに師事。スーシェフを務める。2004年大阪・本町で「PAINDUCE」を開業。その後「アドパンデュース」「デトゥットパンデュース エキマルシェ大阪駅店」「パンデュースパーク大丸心斎橋店」「暮らしのお店 しあわせを運ぶパン屋」などの立ち上げに携わる。
パンデュース
大阪府大阪市中央区淡路町4-3-1 FOBOSビル
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8:00~19:00(土祝は18:00まで)
日休
text: Mihoko Shimizu photo: Katsuro Takashima