プロが伝授!自家製辛み調味料レシピ3選


4000チャイニーズレストラン 菰田欣也さんのラー油

油だけでなく下に沈んでいるトウガラシもぜひ味わってみてください

ラー油は四川料理になくてはならないポピュラーな調味料。それだけに、料理人はオリジナルな味を出すために、独自に工夫を凝らしている。そのひとり、「4000チャイニーズレストラン」のオーナーシェフ菰田欣也さんは、こう考える。

「僕の感覚では、ラー油の油は料理からはじかれる感じがします。ですから僕は、下に溜まっているトウガラシの粉に重きを置いています」

だからこそ、トウガラシの粉にも味をつける。

「熱した油とトウガラシを合わせるとき、トウガラシが焦げてしまわないように、トウガラシに十分水分を吸わせます。昔は水を使っていたのですが、トウガラシの味を重視するようになってからは、トウガラシ自体にもしょう油やオイスターソース、紹興酒などで味をつけるようになりました」と菰田さんは話す。

ほかにも、「油を沸かすときに山椒などを入れると風味がさらに増す」「天ぷらなどを揚げたあとの油を使うとコクが出る」など、ラー油の味は作り方や合わせる調味料で、さまざまに変化するという。

この日作ってくれたラー油も実際に食べてみると、トウガラシの辛みに旨味や香ばしさが加わって、これだけでも美味。温野菜サラダのドレッシングや炒め物のソースなど、幅広い場面で活躍してくれそうだ。トウガラシの種類や、油を沸かすときに入れる乾燥トウガラシの量で、辛さが調節できる点も、用途を広げられるひとつの要因だろう。

四川の気候風土が”辛み文化”を生んだ

「辛い四川料理」は、高温多湿な四川の気候風土のなかで誕生した。「1年を通して曇り空が多く、夜降った雨が朝には上がって、気温と湿度がグンと上がります。晴れの日は少なく、湿り気の多い空気が体にまとわりつくような毎日です」

四川の人々は山椒やトウガラシを使った辛い料理で発汗を促し、体内に溜まった湿気を外に出そうとした。四川料理の辛さは、四川の気候風土と深く結びついているのだ。

とはいえ、トウガラシ料理文化は、4000年の中国の歴史のなかでは、さほど古くはないという。
「豆板醤でも、500年くらいと言われています。南米から入ってきたトウガラシが、四川の気候風土と合って、トウガラシ文化が発展していったようです」

近代化が進み、昨今は四川でも健康志向が高まったため、求められる料理も以前とは異なってきた。
「僕らも新たな提案をしたほうがいいのかな、と感じています」

ラー油に求められるものも、変わってきているのかもしれない。


山内章子=取材、文 星野泰孝=撮影
text by Shoko Yamauchi photos by Yasutaka Hoshino

菰田欣也さんのラー油を作ってみよう


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