2025年3月24日
坂田さんには、かねてより「40歳までに自分の店を持ちたい」という希望があったという。
「私がレストラン業界に入った頃というのは、オーナーシェフの店が一大ブームとなっていました。そして次第に感じたのが、イタリア料理業界では、料理人がどんどん育っていく一方で有名なサービスマンが育っていないという現実です。もちろん素晴らしい諸先輩方はいらっしゃいましたが、店の数ほど多くはなかったように思います。でも、お客さまが店に求める期待値は今後ますます上がり、トータルでバランスの取れた店へのニーズが高まるだろうと。そうなった時に、必要不可欠なものとして力を発揮するのがサービスだと考えるようになりました」
オーナーソムリエとして坂田さんが「ラ・バリック」を開店したのが36歳のとき。料理を担当するのはシェフの伊藤延吉さん。坂田さんと「アカーチェ」時代をともに過ごした同志であり、よき理解者だ。
「彼は私より1カ月ほど早く入社していましたが、厨房の空きを待つ少しの間だけ、ホールで一緒に働いたんです。彼が厨房に入ってからは、仕事を覚えるスピード、食材の組み合わせのアイデア、そして人とはちょっと違う料理でありながらおいしく作るセンスに惹かれました。お互い入社して1年くらいの頃に、『将来自分の店を開くので一緒にやらないか?』と誘ったら、あっさりOKしてくれましたね」
その後、互いに別の店や海外での修業を経て合流。坂田さんは満を持して「ラ・バリック」を開店した。「これだけたくさんいる料理人の中から理想的な人物を見つけるほうが、自分がオーナーシェフとして店を出すより近道ではないかと、正直そんな思いもありました」