熟成豚の焼きテクニック「プリンチピオ」根岸輝仁さん


熟成豚のしっかりした味と脂身の質がシンプルな炭火焼きにベストマッチする

オーナーシェフの根岸輝仁さんは、炭火焼きというシンプルな調理方法にこだわる。その調理方法に合う豚肉はどれか。

2012年に「プリンチピオ」をオープンするにあたって、いろいろな豚肉を試した。しかし、どれも淡泊でピンとこない。そんな矢先に、知り合いから中勢以の熟成豚の話を聞いた。「食べてみたら、豚肉の味がしっかりしていて、ほのかな熟成香もよかった。価格が一般的なブランド豚とほとんど変わらなかったことも、購入を後押ししました」と根岸さんは言う。

炭火の遠赤外線で40分ほどかけて焼く

その焼き方は独特だ。炭火だが、火は直に当てない。直火が当たらないくらいの場所に熟成豚の塊を置いて、2分ごとにひっくり返しながら、40分くらいかけて、じっくり焼いていく。

「こうすると、炭火の遠赤外線でゆっくり火が通るので、表面はキュッと引き締まって旨味が凝縮し、中はしっとりするんです」

熟成豚はやわらかいので、室温に戻すことはしない。冷蔵庫から出したらすぐに塩をふり、焼いていくのもポイントだ。

「中勢以さんは、もともと鹿児島県産の上質な豚肉を使っている上に、熟成方法もしっかりしています。旨いのはもちろん、熟成肉は熟成方法も重要ですから、安心して使えるという点も使い続けている理由のひとつです」

また、使い始めて、脂身が気にならないことに気づいた。「それが熟成のせいなのか、炭火焼きのせいなのかは分からないのですが、とにかく肉と馴染んで脂身を感じさせないんです。ですから、脂身が苦手な方でも召し上がっていただけます」

3年ほど使っているが、最近はほかの豚肉が物足りなく感じる、と根岸さんは笑う。「小さな店なので、僕自身もいろいろなことをしなければいけません。ホールに出ることもあります。だから、動きはできるだけシンプルにしようと思いました。そのほうが味がブレませんから」
手間暇かけたシンプルな料理が、今日も豚肉好きを笑顔にする。

底になる面だけを残し、他の面は火に当たっていた部分を切り落とす。きれいなピンク色の豚は、その色とは裏腹にしっかりと火が入っていて味わい深い。

【レシピ】中勢以 鹿児島県産 豚肩ロース 炭火焼き

厚みのある豚肉は、噛めば噛むほど旨味が増して、肉食の楽しさを教えてくれる。刻んだフェンネルシードの草っぽい風味とも相性がいい。添えられた野菜は葉タマネギ。「熟成豚にはタマネギ系とビーツ系の野菜が合うと思うので、今日のように葉タマネギを使うことも多いです」と根岸さん

材料(2人分)
豚肩ロース(中勢以)…掃除して180ℊ/塩…適量
◦ソース
赤ワインビネガー(ランガローロ・ロッソ)、スーゴ・ディ・カルネ、
塩、バター…各適量
◦コントルノ
葉タマネギ…2本/グリーンピース…適量/オリーブオイル、塩…各適量
◦盛り付け
フェンネルシード、ヘーゼルナッツ、黒コショウ…各適量

作り方
1.豚肩ロース(中勢以)を掃除して4~5㎝厚さ、2人分で180ℊサイズにカットする。
2.塩を打って炭火で焼く(炭火は強めで。熱源から離れたところで回転させながら30~40分かけて焼く)。
3.ソースを作る。赤ワインビネガー(ランガローロ・ロッソ)適量を煮つめ、スーゴ・ディ・カルネを入れ沸かす。塩で味をととのえ、軽くバターでまとめる。
4.コントルノ(葉タマネギの炭火焼き、グリーンピースのピュレ)を用意する。葉タマネギは掃除して、オリーブオイルオイルを軽くまぶし、中がトロッと蒸し焼きになるように焼き、塩をする。グリーンピースはサヤから出して塩ゆでする。柔らかくなったところでミキサーにかけてピュレにし、急冷する。
5.盛り付けをする。皿に温めたグリーンピースのピュレを敷き、炭火焼きにした葉タマネギを置き、ソースを流す。2の豚肉を半分にカットして置き、上に粗めの塩を軽くふる。黒コショウ、フェンネルシードを粗く刻んだもの、ローストして刻んだヘーゼルナッツを散らす。

ここがポイント!

直火からあえて遠ざけ、炭のエネルギーで焼く
バーベキューコンロの右側だけに炭を入れて火をおこし、熟成豚の塊は左側に置いて、直火ではなく炭のエネルギーでじっくり火を入れていく。

中勢以からは、肩ロースを毎週1 本のペースで仕入れる。

包みをあけると、ほのかな熟成香がする。「熟成期間は15日から25日の間でお願いしています」と根岸さん。ちなみに、中勢以の熟成肉の詰め合わせは、オンラインショップで購入することができる。中勢以オンラインショップ
http://nakasei.shop-pro.jp/

中勢以 内店
東京都文京区小石川5-10-18
☎03-3830-0490

Teruhito Negishi

1973年、埼玉県生まれ。飲食店でアルバイトしたことがきっかけで料理人を志す。品川の「アロマクラシコ」のスーシェフ、蒲田の「オステリアウンパッソ」のシェフなどを経て、2012年7月に「プリンチピオ」を開業。

プリンチピオ
Principio

東京都港区麻布十番2-4-8
麻布十番舘2F
☎03-6809-4982
● 12:00~13:00LO(土・日・祝のみ)
18:00~23:00LO(日は~21:00LO)
●月休(祝日の場合は翌日休)
●コ ース 昼2800円~ 夜6800円
● 12席
● www.principio.net

山内章子=取材、文 星野泰孝=撮影

本記事は雑誌料理王国251号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は251号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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