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銀座にこだわり続けるということ。「銀座シェ・トモ」市川知志さん


外食産業きっての晴れ舞台・銀座に生きる料理人、「銀座シェ・トモ」市川知志さん。外食不況といわれるこの時代、逆風の煽りをもっとも受けがちな日本一の高級繁華街・銀座にあえて飲食店を出店し、店を営むとはどういうことなのか。銀座にかける想いを聞いた。

『ベル・フランス』や『レザンドール』といった銀座の店でトータル4年働いたので、実は銀座には馴染みがありました。でも自分の店を銀座に持とうとはまったく考えていませんでした。9年前に裸一貫で独立した白金の店で生涯過ごそうと思っていましたからね」という市川さん。ところが2007年のある日、店の常連客であったポーラの鈴木郷史社長から、今度建て直すポーラ銀座ビルに出店しないかと誘われる。鈴木社長とは数年間の付き合いで信頼関係を築いていたので、「やります!」と即決していた。「毎日店から一歩も出ないで、ひたすら料理を追求してきた僕の姿勢を、お客さまとして評価してくれてのオファーでしたから、うれしかったですね。自分だけの力では、とてもこのビルに乗り込むのは不可能でした。もちろんオーナーとして、リスクを負っての出店でしたが、うまくいくという根拠のない自信がありました」

銀座らしい豪奢な内装に
銀座らしからぬ手頃な価格

09年10月、銀座1丁目の新生ポーラ銀座ビル11〜12階に「銀座シェ・トモ」オープン。吹き抜けになった2フロアのうち、とりわけ銀座らしいのは、鋲締めの椅子やシャンデリアなど、クラシカルな調度品で統一された、本場フランスのグランメゾンを彷彿とさせる12階だ。「こんな時代だからこそ、あえて笑っちゃうぐらいゴージャスな内装にしたかったんです。11階も夜になると、 数メートルの高い窓から銀座の夜景が一望できて、なかなかいい雰囲気ですよ。銀座って、足を踏み入れるだけでなんだかワクワクする特別な街ですよね。その高揚感を体現したのが、この店なんです」

オープン以来、予約が殺到している「銀座シェ・トモ」だが、その人気の秘密は、いかにも銀座らしい豪奢な内装と最上のクオリティを備えた料理でありながら、銀座らしからぬリーズナブルな価格であるというギャップに尽きるだろう。4皿のランチコースが2890円、6皿のディナーコースが5780円というのは、白金店と同じ設定だ。「雇われのときは昼6000円、夜15000円の店にいたけれど、そ れでは接待か富裕層でないと、日常的に来てもらえない。僕はひとりでも多くの日本人に、本格的なフランス料理を食べてもらいたいという想いがあるんです。あえてこの銀座で、きちんとしたフレンチを手頃な値段で提供するのは、自分でも意義があることではないかと思っています」今年3月に「アトリエ・ド・アイ」と店名を変えてグランドリニューアルする白金店はスタッフに任せ、これからは完全に銀座店に注力するという市川さん。さらなるパワーアップが期待できる一軒である。

銀座シェ・トモ
東京都中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル11-12F
03-5524-8868

text 松田亜希子  photo杉田学

本記事は雑誌料理王国2011年3月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2011年3月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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