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【レシピ付き】高良流!焼のテクニック「吊るし熟成短角牛と春菊のクーリ」


主役は赤身の旨味としっとりとした舌触りソースは薬味感覚で添える

赤身の人気を、単なるブームで終わらせないために

「短角牛の吊るし熟成は、ドライエージングとは違い、始まって2年ほどの熟成法ですから、使った経験のある人は少ないかもしれません。でもドライエージングとは異なる食感や風味が感じられて面白いです」

ドライエージングが菌の力を借りて熟成させるのに対し、吊るし熟成は、枝肉のまま日ほど吊るすことでタンパク質がアミノ酸に分解されて旨味を引き出す熟成法。ドライエージングのように風を当てたりしないので、熟成によって失われる水分量も比較的少ない。

「今回、人気の短角牛については、2種とも熟成した肉を使いましたが、これにはわけがあって、褐毛和種や短角牛の肉は、ある程度日数をかけて熟成しないと真価を発揮しない、と僕は思うからなんです」

 赤身のブームにのってレストランで食べてはみたものの、「あまりおいしくなかった」というゲストの声も耳にする。これに対して高良シェフは、「褐毛和種や短角牛には熟成期間が必須ということを知ってほしい。きちんと調理して旨味を伝えないと、単なるブームで終わりかねないし、それでは生産者の努力も無駄になってしまう」と懸念する。

 水分がほどよく残る吊るし熟成短角牛を使って、高良シェフが提案するのは、吊るし熟成短角をア・ポアン(ミディアム)に焼いて、春菊のソースと合わせたひと皿。春菊のソースの上にカリフラワーやインゲンなどをのせ、その横に焼いた肉を配したのは、「広々とした牧場の様子と、そこで肥育される牛。そのイメージを表現したかったから」。

 吊るし熟成肉は、黒毛和牛同様、焼き目を付けないように低温で焼いた後、オーブンを出し入れしながら火入れをして仕上げていく。このように焼いた肉は、黒毛和牛のようなやわらかさを備えつつも、黒毛和牛とは違った味わいがある。

「肉の味わいを強調したかったので、濃いめに仕上げた春菊のソースは、薬味感覚で肉に付けて味わっていただけたらと思います」

「和牛はこれからも進歩や変化を続けるでしょうから、料理人もそれに合わせて常に進んでいかなければ」

 その過程で、“匠”の引き出しはさらに増え、選択肢の多さが悩みにつながることもあるだろう。

「引き出しを開け閉めしながら悩むのも楽しいんです」。高良シェフは、ベテランとなった今でも生産地を巡る。食材の追求に終わりはないというその姿勢も、旨い牛肉料理の決め手であり、“匠”の条件だろう。

高良流 焼きのテクニック

焼き色を付けないように低温でフライパンの中を転がす

肉は常温に戻したら塩をふり、オリーブオイルをひいたフライパンの中へ。焼き色を付けないように弱火で全面に熱を与える。

110℃のコンベクションオーブンで、6分間火を入れたら取り出して6分間休ませる。次に同じ温度で3分間入れて3分間休ませるというのを3回繰り返す。

フライパンに少量のオリーブオイルとバターを入れ、そこにコンベクションオーブンから取り出した肉を入れて温め、ここで初めて焼き色と、香りを付ける。

表面には適度な焼き色が付き、カットしてみると均一に火が入って、きれいなミディアムに仕上がっている。

肉そのものをおいしく仕上げることはもちろんですが、ソースなどのテンションを上げることで違う旨味が引き出されることもあります。

吊るし熟成短角牛と春菊のクーリ
クーリとは、裏漉しした野菜や果物などを用いて作る濃度の高いソースのこと。皿の中央に春菊のクーリや野菜を盛ったら、そこに白コショウやエシャロット、白ワインの風味がきいたディアブルソースを注ぎ入れ、横に弱火でやわらかく焼き上げた肉を盛って仕上げる。

上村久留美=取材、文、富貴塚悠太=撮影

本記事は雑誌料理王国245号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は 245号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。


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