アメリカ産フライドポテト「ステーキカット」の魅力を探る、シェフギャザリングを開催!


高品質でおいしいアメリカ産ポテトを使った、肉厚で大ぶりなフライドポテト「ステーキカット」。去る4月28日、東京・日本橋にあるフランス料理店「ラ・ボンヌターブル」に9名のシェフが集い、中村和成シェフが考案したアレンジメニュー3品を囲んでステーキカットの魅力や新たな可能性を語り合った。

プロの創造力に応えるステーキカットの底力

アメリカ産ポテトの概要を紹介する、米国ポテト協会の牛丸雅生氏(中央)

年間約2000万tのポテトを生産する、農業大国アメリカ。最先端の技術を導入することで、少人数でも効率的な生産・管理を可能にし、年間を通じて安定した供給を実現している。

現在、日本へ主に輸入されているのは、アメリカ産のフライドポテト。アメリカの国民食として親しまれていることもあり、品質管理は非常に厳格で世界で唯一、長さや色、水分量に至るまで細かく規格化されている。フライドポテトに最適な品種「ラセット種」が使われており、味わいの良さに加え、揚げ色や食感などの仕上がりも高く評価されている。

今回使用した「ステーキカット」。こちらが厚切りタイプ。
こちらは下味と衣がついているコーティングタイプ。

カットスタイルは多様にあるが、日本では細長い「シューストリング」が主流で、提供方法も画一的になりがちな傾向がある。そこで今回は、アメリカではステーキの付け合わせとして定番ながら、日本ではまだほとんど普及していない「ステーキカット」に着目。アメリカならではの大ぶりなポテトをシンプルにカットしたこのスタイルは、ポテト本来の味わいや存在感をしっかりと感じられるのが特徴だ。

当日は、“厚切りタイプ”と“コーティングタイプ”の2種を用意し、多彩なジャンルのシェフ達が調理性や味わいを検証。アメリカ産フライドポテトの新たな可能性について、活発な意見が交わされた。

高品質なアメリカ産ポテトの中でもフライドポテトの主流品種「ラセット種」とは?

ラセット種はポテトの中でも特に大きいため長くておいしいフライドポテトを安定供給できる。
フライドポテトとして揚げても、外はカリッと、中はベイクドポテトのようなホクホクの軽い食感。
適度なデンプン質と糖質を含むため、フライドポテトにするときれいな揚げ色に仕上がる。
水分量が少なく、固形分が多いため、揚げるとしなびてぐにゃっとせず、外がカリッと仕上がる。

ラセット種はポテトの中でも特に大きいため、長くておいしいフライドポテトを安定供給できる。水分量が少なく、固形分が多いため、揚げると外はカリッと、中はベイクドポテトのようなホクホクの軽い食感に仕上がる。しなびてぐにゃっとしないだけでなく、揚げ油の消費を抑えるという側面もある。

同量の各国産フライドポテトを比べたとき、長さのあるアメリカ産ポテトのサービング数が多いという研究結果もあり、適度なデンプン質と糖質を含むため、フライドポテトにするときれいな揚げ色に仕上がるのも特徴だ。

つまり、ラセット種を使ったアメリカ産フライドポテトは、コストを抑えながらも、ボリューム感があり食欲をそそる“映える”ひと皿を演出できるということだ。

3つの料理を通じて見えてきた「ステーキカット」の可能性

USポテトのトルティージャ、ロメスコソース、イベリコ生ハム、ピスタチオデュカ
グラナパダーノチーズを混ぜた卵に厚切りタイプのステーキカットをあわせたオムレツ。ソースはトマトやパプリカを使った酸味のあるロメスコソース、そこにコリアンダーとクミンの香り、ピスタチオの食感を重ねる。

ディスカッションは、中村シェフが考案した3品の料理を一皿ずつ味わいながら展開された。

最初に試食されたのは、厚切りタイプのステーキカットをオムレツの具材として使用した「USポテトのトルティージャ、ロメスコソース、イベリコ生ハム、ピスタチオデュカ」。軽く揚げたポテトの甘味と食感を添え、卵料理としてのおいしさを引き立てた。通常は生のポテトで作る料理だが、フライドポテトを活用することで、下準備の工程を大幅に簡略化。調理効率と仕上がりのバランスを両立したひと品となった。

「イメージはカツ丼です」と説明する中村シェフの言葉に、参加シェフ達もうなずきながら試食。「フライドポテトだからこそ、生のポテトでは出せない香ばしさとやわらかさが両立できている」「味と食感のバランスがよく、ポテトの存在感がしっかりと残る」といった感想が寄せられた。

ステーキカットの厚みを生かしながらもフライドポテトを連想させないプレゼンテーションに関心が寄せられ、「中華では長いポテトは扱いづらいが、このように断面を生かした調理なら応用できそう」といった発見もあったようだ。厚切りタイプのステーキカット特有の厚みと形状を活かしたフレンチスタイルの盛り付けにも注目が集まった。

USポテトのリヨン風
フランスの伝統料理「ポムリヨネーズ」のポテトを、厚切りタイプのステーキカットへ置き換えたひと皿。玉ネギやベーコン、バター、ニンニク、ローズマリーの味や香りを、揚げたアメリカ産ポテトの衣に染み込ませた。

2皿目もまた、厚切りタイプのステーキカットを主役に仕立てた「USポテトのリヨン風」。こちらも通常は生のポテトでつくるが、フライドポテトを使うことでオペレーションを簡略化するだけでなく、クオリティのコントロールも実現。「ポテトとソースを合わせるだけなので、誰でも簡単に調理ができます。デリバリーなどで時間が経ってから口にしてもおいしく味わえる料理です」と中村シェフは語った。

そして他のシェフ達からは「今まで生のポテトを使っていた料理を、フライドポテトに変えるという試みは面白い」「しんなりとした仕上がりながらも、フライドポテトならではの香ばしい風味も光る」「ポテト自体のおいしさが感じられるので、ココナッツカレーの具材として使ってみたい」「グラタンやスープでアレンジしても、新たなプレゼンテーションが期待できそう」といった具体的なアイデアが次々に出され、デリバリー視点の発想にも共感が広がった。「さまざまなシーンを想定して料理を考えていくことは我々シェフの仕事」と語る中村シェフの言葉に、多くの参加者がうなずいていた。

USポテトのフリット、ビーツと鹿肉のタルタル、サワークリームオニオン
カリッと香ばしく揚げた、コーティングタイプのステーキカットに添えたのは、低温で火を入れてから藁の煙で燻した鹿肉と、ビーツを使った冷たいタルタル。シェフ手作りのサワークリームオニオンが、両者を繋ぎ合わせてコクを添える。

最後は、「やはりフライドポテトとしてのおいしさも味わってほしい」という中村シェフの思いが込められた「USポテトのフリット、ビーツと鹿肉のタルタル、サワークリームオニオン」。こちらには、クラフトビールを使用した「ビアバッター」液がコーティングされたステーキカットが使用された。

アメリカ産フライドポテトの醍醐味をダイレクトに楽しめるひと皿に対し、「鹿肉の旨み、サワークリームの酸味、そしてフライドポテトの香ばしさと、それぞれのテクスチャーが際立ち、このポテトじゃなければ成立しない料理。感動した」と絶賛の声も。また、「ポテトの存在感が強いので、ジビエ肉やラムと合わせてもバランスが良さそう」と発想したシェフもいた。

参加者の中には、レストランに加えて居酒屋も展開しているシェフがいたが、「ポテトがあると客単価が落ちるため、通常はメニューに入れていないが、こういったアレンジなら単価アップも期待できるし、ステーキカットは見た目にもインパクトがあり、他店との差別化にもなる」と前向きな評価を示していた。

味わいと技術の高さが注目を集めたコーティングタイプのステーキカット

ステーキカットの魅力を伝える中村和成シェフ。参加した9名のシェフ達も真剣な面持ちだ。

参加したすべてのシェフが、アメリカ産フライドポテトの味わいを「おいしい」と高く評価。中には「フライドポテトが好きすぎて、さまざまな産地や品種を試してきたが、思った以上のレベルの高さ」「これまで食べたポテトの中で一番おいしかった」という声もあり、その品質の高さが印象づけられた。

なかでも注目を集めたのが、下味と衣の付いたコーティングタイプのステーキカット。このコーティング技術は、現状ではアメリカ産フライドポテトのみで展開されているもので、ベースには米粉、小麦粉、コンスターチなどさまざまな種類があり、フレーバーがついたものもある。

3品目「USポテトのフリット」に使用された「ビアバッター」のコーティングポテトにも下味がついているため、塩を軽く振っただけのシンプルなスタイルで提供された。

コーティングタイプの最大の特長は、揚げたてのカリカリ感と、下味が付いているので揚げるだけで完成する味わい。加えて、その食感が、時間が経っても持続するのが大きな強みだ。その強みを伝えようと中村シェフは、揚げてから1時間以上経過したものを試食として用意。カリッとした歯ざわりに驚きの声があがっていた。

「コーティングがあることで味が乗りやすく、スパイスやハーブともよくなじむ」といった声もあり、衣の特性を活かした具体的なメニュー展開にも話が及んでいた。

「フライドポテト=付け合わせ」の先へ
食材としての大きなポテンシャル

ステーキカットのアレンジメニューを盛り付ける中村和成シェフ。

ディスカッションでは参加シェフから、スパイスを効かせた中華風炒め、カレーとの組み合わせ、ハーブ香るアヒージョ、ポテトのテリーヌやスープへの展開、さらにはニョッキやコロッケなどへの応用など、次々とアレンジのアイディアが生まれた。

一方で、「シンプルにフライドポテトとしても十分魅力的」「添える調味料で変化をつけるだけでも目を惹くメニューになる」といった声もあり、フライドポテトを“メイン食材”として捉え直す視点の広がりも見せた。

中村シェフは、「アメリカ産フライドポテトを使うことで、これまで時間がかかっていた料理も簡略化でき、品質の安定化にもつながる。そして、思った以上に懐が深い食材。アレンジを加えても負けない存在感があるので、もっともっと面白い提案ができる可能性を感じています」と語る。

食感、香り、形状、そして調理の自由度。料理人の発想を刺激する食材として、アメリカ産ポテトの新しい価値が見える場となった今回のシェフギャザリング。シェフ達の創造力とアメリカ産ポテトの汎用性が交差したことで、今後、現場でどんなメニューが展開していくかに注目したい。

参加したシェフ達の声は?

中村和成 ラ・ボンヌターブル

「知らなかったことが本当にたくさんあって、勉強になりました。普段、フライドポテトって当たり前のように食べていましたが、こうして改めて向き合ってみると、想像以上に奥が深くて、面白い世界があるんだなと感じました。」

樫村仁尊 焚き火 イタリアン ファロ

「もともとフライドポテトが大好きで、産地や品種などいろいろな芋を試してきたので、とても勉強になりました。バッター液付きのコーティングタイプのステーキカットはよい意味でジャンキーさがあって、カジュアルなお店にはぴったり。調理のしやすさも魅力的でした。香りをまといやすいので、ハーブオイルやスパイスと合わせてみたいと、具体的なイメージも湧きました。」

茂出木浩司 三代目たいめいけん

「フライドポテトは店でもよく使うので親しみのある食材ですが、今までにない厚みと長さで食感も新鮮でした。タルタルに添えられていたポテトはとくに印象的で、硬めの食感が料理を引き締めていたと思います。シンプルにトリュフ塩やケチャップで味わわせるのもいいし、潰してコロッケにしても面白そうですね。」

田中良司 赤坂四川飯店

「他ジャンルのシェフと話ができて、とても有意義な時間でした。自分自身もフライドポテトを利用した表現をしてみたいという考えが広がりましたし、コーティングポテトには特に可能性を感じました。中華でもスパイスをきかせた四川料理に合いそうで、山椒や麻辣と合わせてみたいですね。」

人長良次 リバヨンアタック

「さまざまなジャンルのシェフの考えや調理法を知ることができて、とても勉強になりました。ステーキカットの味や食感が本当に素晴らしくて、アレンジするよりも、まずはこのままの形でランチなどにとり入れて、おいしさをダイレクトに伝えたいと感じました。中華料理の炒め物の具材として使っても良さそうですね。発想が膨らみます。」

川角徳聖 京華菜 清香

「中華であの太さのジャガイモを使うことがほとんどないので、どういうヒントが得られるかを楽しみに参加しましたが、トルティージャのように形を変えれば応用できるという気づきがありました。ステーキカットは存在感があるので、スパイスとの相性もよく、ジビエやラムとも合いそう。食感もサクサクしていて存在感があり、デザートなどにも展開できる可能性を感じました。」

伊藤一城 ホッパーズ

「中村シェフの料理が本当においしくて、フライドポテトの印象が変わりました。アメリカ産ポテトのサイズにも驚きましたし、料理の素材としての可能性をすごく感じました。カレーに合わせてみたいなというイメージがすぐに浮かびました。とくにココナッツやスパイスとの相性はいいので、スリランカ料理にもぴったりだと思います。」

金子優貴 シリーズ

「個人的にフライドポテトが大好きで、メニューにのっていると、つい頼んでしまうんですよね。ステーキカットのサイズ感も食感、あのようなフライドポテトを食べたのは初めてでした。今まで出会ったフライドポテトの中で一番おいしいと感じました。中村シェフの鹿肉とビーツのタルタルは、まさに“ステーキカットじゃなきゃ成立しない”料理で、大きな衝撃を受けましたし、自分もそんな料理を考えたいですね。」

後藤大輔 ダ ゴトウ

「フライドポテトは普段はあまり使わない食材だったので、とても新鮮で楽しく学べました。香りや食感、存在感がしっかりあり、食材としての可能性を感じました。料理に香ばしさを加える役割としてや、ニョッキや肉じゃがのような煮物にアレンジするのも面白そう。当たり前に思っていたことや思い込みを見直す、いいきっかけになりました。」

金田正和 バルバッコア 虎ノ門ヒルズ

「アメリカ産ポテトの特徴を改めて知ることができ、消費者にもその価値を伝えていきたいと感じました。長いポテトはファストフードの印象が強く、形状の差別化が難しいですが、ステーキカットであれば、マリネしてブラジル風に出したり、テリーヌにして断面を見せるなど、新たな可能性も思いつきました。料理人としてどう生かすか、考える余地があります。」

米国ポテト協会
TEL 03-3221-6281
https://www.potatoesusa-japan.com/

text: Yuki Kimishima photo: Hiroyuki Takeda

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