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【初心者のためのワイン講座2】ワインの格付けとはなにか?(1)


ワインの格付けとはなにか?(1)

一般的に「よいワイン」と評価されるのはどんなワインだろう。今回のサンプルは、ブルゴーニュの格付けワイン。ぶどうの畑によって、特級、1級、村名、地域名という格付けが法律で認めらているが、試飲の結果、階層が上がるほど味わいの要素のうち「広がり」が大きくなるようだ。ただし、特級ワインのみが必ずしもレストランにふさわしいワインとは限らない。飲食店のプロとしては、格付けの意味や特徴を踏まえて、店の客層や料理に合わせたワイン選びをする必要がある。

【講師】ワイン評論 家田中克幸さん
Katsuyuki Tanaka
1962年東京都生まれ。文京学院大学でワイン文化論担当講師。ワイン専門誌などで執筆。ワインに関する講演、イベントを日本各地で行う。独自の視点と理論の明快さには定評がある。

今後2回にわたって、一般的なワインのよしあしの基準、すなわち「格付け」を考えてみたい。格付けには、フランスのブルゴーニュワインのように、ぶどう畑すなわちワインの供給元からすでにランクがきまっているものと、市場に流通してから決められるメダルワインのようなものの2種類がある。

今回はブルゴーニュワインの格付けの違いを探ってみよう。現在では法制化されているこの地方の畑の格付けの由来は、中性にまでさかのぼる。畑が修道院に寄進され、集約されて、秩序化されたことに端を発しており、これは現在フランスのみならず、他の国々のワインの格付方法のモデルとなっている。こうした点からも、ブルゴーニュの格付けは理解する意味があるだろう。

ブルゴーニュワインは畑で格付けが決まる。

ブルゴーニュワインは、畑によって次の4つの分類で格付けされている。

  1. 特級(グラン・クリュ・全生産量の1.5%):
    村内にある最良のクリマで醸造されたワイン。「シャブリ グラン・クリュ『レ・クロ』」など。
  2. 1級(プルミエ・クリュ・同10%):
    村内の「クリマ」と呼ばれる限定区画で醸造されたワイン。「シャブリ プルミエ・クリュ『フルショーム』」など。
  3. 村名アペラシオン(ヴィラージュ・同32%):
    その名前を名乗ることができる特定の村域で作られたワイン。「シャブリ」など。
  4. 地域名アペラシオン(レジョナル・同54%)
    ブルゴーニュの全栽培地域内で作られたワイン。「ブルゴーニュロルージュ」など。

格付けとワインの味わいの関連性

格があがるほど、口の中での「広がり」が大きいワインが多い

上の図は、ブルゴーニュワイン格付けのワインの味わいの「広がり」を図表で示したもの。ワインを口に含むと、その味わいのイメージは横や上下だけでなく、同時に奥行きをもって広がっていく。
また、こうした空間的な広がりだけでなく時間的な広がり、すなわち味の持続性(余韻)も感じることができる。

そこで、白ワインはシャブリ地区の特級(3)、1級(2)、村名(1)、それに格付けが(3)と同等であるオークセイ・デュレス(4)の計4本。赤ワインは、村名(6)と地域名(5)の2本を揃え、それぞれブラインドで比較試飲した。

その結果、赤と白どちらも、格が上になるほど味わいの要素のうち「広がり」が大きくなることがわかった。
ただし飲食店では、「広がりの大きい」特級ワインばかりが必ずしもつねに求められるとは限らない。たとえばシャブリの場合、料理によっては特級よりも収斂性のある1級ワインが合う場合や、飲みやすくリーズナブルな村名ワインが、店のコストや客層に合うこともあるだろう。
格付けの味わいの違いを理解した上で、自店のコンセプトの合わせて「使いこなせる」ようになろう。

実際にテイスティングしてみると・・・

(A) ワイン名 (B) 生産者名 (C) 産地 (D) 品種 / ヴィンテージ

 白ワイン 村名「シャブリ」

1. 白ワイン 村名「シャブリ」
(A) シャブリ
(B) ラブレ・ロワ
(C) ブルゴーニュ / シャブリ
(D) シャルドネ / 2010

口に含んだときの広がりはとても小さく、口中で感じる方向性としては、左右が中心で前方に集まっている印象。余韻は短め。
重心が高いため安定感はないが、ふわんとした質感が外から内まで一貫する点は好ましい。

白ワイン 1級「フルショーム」

2. 白ワイン 1級「フルショーム」
(A) シャブリ プルミエ・クリュ フルショーム
(B) ラブレ・ロワ
(C) ブルゴーニュ / シャブリ
(D) シャルドネ / 2010

口中での広がりは中程度。縦方向には大きいが、左右には小さく、前後もある。余韻はかなり長い。
重心は真ん中。質感は表面、内部、芯に至るまでかたく、味わいすべてに骨格のある印象で、ゆえに安定性と密度感が感じられる。

シャブリ グラン・クリュ レ・クロ

3. 白ワイン 特級「レ・クロ」
(A) シャブリ グラン・クリュ レ・クロ
(B) ラブレ・ロワ
(C) ブルゴーニュ / シャブリ
(D) シャルドネ / 2009

口中での広がりはとても大きく、全方向的に余韻は長い。
重心は真ん中。質感は肉厚で、村名ワインに似て外側から内側までソフト。シャブリで一般に言うところの「堅牢さや酸」はグラン・クリュの基準ではないことがよくわかる。

4. 白ワイン 村名「オークセイ・デュレス」
(A) オークセイ・デュレス ブラン
(B) ラブレ・ロワ
(C) ブルゴーニュ / オークセイ・デュレス
(D) シャルドネ / 2006

口中での広がりは小さめで、村名シャブリより前後があるが、基本的には水平で余韻も短め。しかし、味わいは村名シャブリよりも濃く感じる。
重心は高い。質感は表面は比較的軟らかく、内部は厚めで芯は堅牢。風味は酸が強い。

ブルゴーニュ ルージュ ピノ・ノワール

5.赤ワイン 地域名「ブルゴーニュ」
(A) ブルゴーニュ ルージュ ピノ・ノワール
(B) ラブレ・ロワ
(C) ブルゴーニュ
(D) ピノ・ノワール / 2010

口での広がりは極めて小さく、その方向性は水平。今回の6本の中では余韻がもっとも短く、重心が高く酸が残る。質感はソフトで薄い。シンプルにフルーティーでハーブ的な風味を持っている。

赤ワイン 村名「ポマール」

6. 赤ワイン 村名「ポマール」
(A) ポマール
(B) ラブレ・ロワ
(C) ブルゴーニュ / ポマール
(D) ピノ・ノワール / 2006

口中での広がりは大きめで、シャブリのグラン・クリュに近いが、上下は小さく、余韻は中程度。
重心はややうえにある。質感は表面が硬く、内部は厚く柔らかく、骨格は非常に堅牢。ミネラリーでフルーティな複雑な風味。

index
1.ワインをテイスティングするとは?
2.ワインの格付けとはなにか?(1)
3.【初心者のためのワイン講座3】ワインをテイスティングするとは?
4.【初心者のためのワイン講座4】土性による味わいの違い


伊藤由佳子 = 文 川村 隆 = 写真 ソリマチアキラ = イラスト
text by Yukako Ito photos by Takashi Kawamura Illustrations by Akira Sorimachi


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