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【初心者のためのワイン講座3】ワインをテイスティングするとは?


ワインの格付けとは何か? (2)

前回に続いて「よいワイン」の一般的な評価基準について考える。ブドウを育てる畑の段階で決まっている事前的な序列が前回学んだ「格付け」。ワインを瓶詰してからコンクールに出品し、金メダルなどを与えられる事後的な序列が「メダルワイン」だ。どちらの序列も消費者にとってはワイン選択の指針となる。実際に「ジャパン・ワイン・チャレンジ」のメダルワインを比較試飲すると、味わいの「広がり」のより大きなワインが高位のメダルを得ていることがわかる。

【講師】ワイン評論 家田中克幸さん
Katsuyuki Tanaka
1962年東京都生まれ。文京学院大学でワイン文化論担当講師。ワイン専門誌などで執筆。ワインに関する講演、イベントを日本各地で行う。独自の視点と理論の明快さには定評がある。

イタリアやフランスなどの「旧世界」と呼ばれるワインに対し、オーストラリアやアメリカなどのいわゆる「新世界ワイン」には、事前的な序列がない。旧世界ワインの格付けは前回取り上げたブルゴーニュを手本として、ワインを造る前の畑の段階でワインの序列が決まっているが、新世界ワインの産地には、法的な畑の格付けが存在しないのだ。では、新世界ワインの生産者は、どのような価値基準でワインを造っているのだろうか。あるいは消費者は、どのような序列に基づいてワインを選んでいるのだろうか。そのひとつが、各種コンクールでの受賞歴を冠した「メダルワイン」だ。では、コンクールで高評価を得るワインの味わいに特徴はあるのだろうか。今回は日本で開催されているコンクール「ジャパン・ワイン・チャレンジ」でメダルを獲得したワインを取り上げた。オーストラリアの3人の生産者からそれぞれ2つのワインを選び、異なるランクのメダル受賞ワインをブラインドで比較。その結果、格付けの差は味わいの4つの要素のうち「大きさ」の違いに現れることがわかった。メダルが上位になるほど味わいが大きくなるという点は、ブルゴーニュの格付けワインの味わいが特級に近づくほど大きくなるのと同様で、興味深い。そして、金メダルワイン=味わいの大きなワインがお店やお客にとってつねに有用なのかというと、そうともいえない点も同じだ。料理に味わいの小さなものがあるように、さらっとした味わいのワインを好むお客もいる。また、大半のコンクールにはエントリー料金などの諸費用がかかるため、個性的なワインを造る小規模生産者の参加は少なく、メダル受賞ワインも少ないという指摘もある。一般的な味わいの価値観を踏まえたうえで、自店のワインの選択基準を作っていくことが重要なのである。

コンクールではどのようにメダルワインが選ばれるのか?

国・地域別にブラインドで試飲し、審査員は3 ~4名のグループ(パネル)内で協議して、20点満点で採点する。

ジャパンワインチャレンジを例に、金賞、銀賞、銅賞が誰によって、どのような基準で選ばれているのか、またそれぞれの割合はどうなっているのかを見てみよう。

◆ 審査基準

 ・ 新鮮で純粋なフレーバー
 ・ バランス
 ・ 適度な凝縮感
 ・ 複雑さ

◆ 審査方法

審査員は、パネル(審査員3 ~4 名のグループ)ごとに下記の順でワインの点数を決める。
第一審査:各審査員はワインをブラインドで試飲し、点数をつけコメントを書く。それをパネル内のメンバーでディスカッションし、パネルとして点数を決める。意見に相違があるときは審査員長または副審査員長の意見を重視する。2 日間で約200 本を試飲する。
第二審査:第一審査の結果、金賞の点数を獲得しているワインをもう一度審査し、ワインのスタイルと地域ごとに最優秀ワインを1本ずつ決める。

◆ 賞の種類

金賞:18.5 点以上(全体の約2 ~5%)
銀賞:17 点以上18.5 点未満(全体の約5 ~10%)銅賞:15.5 点以上17 点未満(全体の15 ~20%)最優秀賞:金賞の中から1 本
シール・オブ・アプルーバル:14.5 点以上15.5点未満(全体の20 ~25%)
ベスト・バリュー賞:小売価格2000 円以下、 16.6 点以上のすべてのワイン

JWC ジャパン・ワイン・チャレンジとは
日本におけるワイン教育と普及を目的に1997 年から開催される。インスティテュート・オブ・マスターズ・オブ・ワイン(Institute of Masters of Wine)会長や、WSET(Wines and Spirits Educational Trust)国際理事をはじめとする海外の専門家と日本人ソムリエやワイン評論家らが、世界各国からエントリーされた約1350 種のワインを鑑定。
ジャパン・ワイン・チャレンジ事務局●www.japanwinechallenge.com

コンクールによって特色はさまざま

世界各地で、対象も審査員も多種多様なコンクールが開かれている

<世界のコンクール一例>

パリ農産物コンクール(フランス/パリ)
1870年代~ 約12000本出品
農産物の一環としてワイン部門が開催される。フランス国内から1万2千本以上が出品され、予選で半数ほどに絞られてから審査される。

マコンワインコンクール(フランス/ブルゴーニュ)
1954年~ 約10000本出品
ブルゴーニュ地方のマコンで開催されている。フランス全土から1万本以上が出品され、2000人の審査員が採点する。

ブリュッセル国際ワインコンクール(ベルギー/ブリュッセル)
1994年~ 7386本出品(2011年)
世界各国から3000本以上が出品される国際的なコンクール。国籍もさまざまな280名のワイン関係者が審査。100点満点で採点。

インターナショナルワインチャレンジ(イギリス/ロンドン)
1984年~ 14119本(2012年)
マスターオブワイン数十人を含む400人以上の審査員が2週間かけて審査する。世界中から出品される。07年からはSAKE部門も。

チャレンジ・ミレジム・ビオ(フランス/モンペリエ)
2008年~ 800約本(2012年)
オーガニックワインでは最大の見本市「ミレジム・ビオ」と連動して開催される認定オーガニックワインのみを集めたコンクール。

国産ワインコンクール(日本/山梨市)
2002年~ 690約本(2012年)
日本国内で生産されたブドウを100%用いた国産ワインを対象とする。2012年は690本のワインが出品された。

実際にテイスティングしてみると・・・

(A) ワイン名 (B) 生産者名 (C) 産地 (D) 品種 / ヴィンテージ

(A) M3ヴィンヤード シャルドネ
(B) ショウ アンド スミス
(C) 南オーストラリア州/アデレードヒルズ
(D) シャルドネ/2010

凝縮度が高く、ミネラル感も充分にあり、樽由来のタンニンも強めで、表面、骨格ともにかたい。前回のシャブリ1級を想起させるが、広がりは球状にとても大きく、余韻は長く、肉づきは豊かでやわらかく、明らかに「特級的」。

シャルドネ

(A) シャルドネ
(B) ウィグナルス
(C) 西オーストラリア州/グレートサザン/アルバニー
(D) シャルドネ/2010

広がりは小さく水平的で、重心は高く、下方向が欠如し、余韻も淡々として短め。トロピカルフルーツの熟した風味となめらかな舌ざわりとふくよかな肉付きがリッチでおいしいワイン。「村名的」。

ピノ・ノワール

(A) ピノ・ノワール
(B) ウィグナルス
(C) 西オーストラリア州/グレートサザン/アルバニー
(D) ピノ・ノワール/2010

酸は低く、タンニンはやわらかく大変に飲みやすい。広がりは小さく水平的で、垂直性のみならず前後感にも欠け、重心は高く、余韻は短い。しかしストロベリーやラズベリー的なシンプルでかわいらしい風味がある。「村名的」。

シラーズ

(A) シラーズ
(B) ショウ アンド スミス
(C) 南オーストラリア州/アデレードヒルズ
(D) シラーズ/2009

口に入れた瞬間はパワフルで、濃く、タンニンは強く、黒系果実やスパイスの風味がピュアで、よい質のワイン。広がりは小さく水平的で、重心が高めで短く「村名的」。ただし、「ピノ ・ノワール 」よりは若干大きく、前後感も増す。

JSMシラーズ カベルネ・ソーヴィニヨン カベルネ・フラン

(A) JSMシラーズ カベルネ・ソーヴィニヨン カベルネ・フラン
(B) フォックス クリーク
(C) 南オーストラリア州/マクラーレンヴェール
(D) シラーズ、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン/2009

風味の複雑さ、力強さ、質感のなめらかさ、タンニンの堅牢さとやわらかさ、酸ののび、肉厚な果実味のおいしさなど、飲んだ瞬間に「これは違う」と思わせるワイン。広がりは全方位的に巨大で余韻も長く「特級的」。

ヴィクセン スパークリング シラーズ カベルネ・フラン

(A) ヴィクセン スパークリング シラーズ カベルネ・フラン
(B) フォックス クリーク
(C) 南オーストラリア州/マクラーレンヴェール
(D) シラーズ、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン

炭酸ガスの拡散性をそのままエネルギーの強さや空間的、時間的な広がりと勘違いしてしまいそうだが、泡が抜けたあとになると、そのシンプルさが目立つ。広がりは小さく、水平的で短いが、フルーティさを楽しめる発泡酒。

ブルゴーニュワインの格付けとメダルワインの序列は味わいの大きさという点で類似しています。実際に「このワインは特級クラスの味」などとワインを形容することも多いので、その類似性がわかるように「特級的」「村名的」という形容詞を付け加えました。


伊藤由佳子 = 文 ソリマチアキラ = イラスト
text by Yukako Ito Illustrations by Akira Sorimachi


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