【初心者のためのワイン講座1】ワインをテイスティングするとは?


ワインをテイスティングする、とは?

シェフや料理人などのプロフェッショナルにとって、ワインテイスティングとはワインを選ぶための手段であり「ワインの鑑賞」が目的ではない。
また、大半のお客様は、食事と一緒にワインを飲むため、「料理といかに合わせるか」という点に着目することも重要だ。
それには「味わい」を形作る要素を洗い出し、スケールにするとわかりやすい。このスケールは、ワインのみならず食材や料理にも共通するため、両者の相性を考える際にも有用だ。

【講師】ワイン評論家 田中克幸さん
Katsuyuki Tanaka
1962年東京都生まれ。文京学院大学でワイン文化論担当講師。ワイン専門誌などで執筆。ワインに関する講演、イベントを日本各地で行う。独自の視点と理論の明快さには定評がある。

実際のテイスティングの際には、ワインの味わいをどのようにつかめばよいのだろうか?
ポイントは、料理の味わいと同じスケールで判断すること。ワインテイスティングで一般的に使用される「色」「香り」「味わい」の3要素ではなく、料理やワインの味わいを形作る「要素」を抜き出したスケールだ。
色はワインと料理のマリアージュにとってさほど重要ではないし、香りは味わいを形作る一要素にすぎない。

ティスティングに重要なスケールは次の4つ!

次に挙げる4つのスケールを頭の中に持つと、味わいが把握しやすく、ワイン同士の比較や料理との相性を考えるのが容易になる。今後、この講座ではすべて、今回紹介するスケールを使ってワインの味わいを考えていきたい。

1.広がり
味わいが口中でどのように広がっていくか、またそれがどれほど持続するかを感じる。

2.重心
下の中央をイメージし、そこを起点似味わいが口中の上の方に広がるのか、下の方に広がるのか、中央にとどまるのかを感じる。

3.質感
手で触れたときと同じように、味わいの質感をイメージする。これは「ふわふわ」「なめらか」などといった言葉でも表現できる。慣れたらさらに踏み込み、(1)粗さと細かさ(2)密度の感覚(粒子同士がくっついた感じがするか、離れているか)(3)硬軟(4)厚みがあるか、ないかという4つの側面に留意してほしい。

4.風味
全体の味わいと香り。甘味や酸味、あるいは「さっぱり」「こってり」といったものだ。

このスケールは、具体的な食材の味わいをイメージすると理解しやすい。下の図表を参考に、イメージトレーニングを試してほしい。

4つのスケールに食べ物を当てはめて考えてみよう!

質感と風味には、本来はさらに多くの要素がある。たとえば、質感には厚みや粗密など。風味には、苦味や渋味などが含まれる。

実際にテイスティングしてみると・・・

(A) ワイン名 (B) 生産者名 (C) 産地 (D) 品種 / ヴィンテージ

クレマン・ド・ブルゴーニュ・ブリュット

(A) クレマン・ド・ブルゴーニュ・ブリュット
(B) メゾン・フランソワ・ラベ・ヴージョ
(C) フランス・ブウゴーニュ
(D) ピノ・ノワール/(NV)

広がりは中程度で、横長の楕円形で、余韻は中程度。
重心は最初は泡によって上に行くが、後に真ん中から下方に定位。
質感は表面がなめらかで硬く、内側が厚みがあってやわらかく、芯は硬い。
風味は少し甘く、さんは鋭角的で強い。

シゴルスハイム シースリング

(A) シゴルスハイム シースリング
(B) ピエール・スパー
(C) フランス・アルザス
(D) リースリング / 2009

広がりは小さく、横に極めて細く、縦にはとても長い四角。余韻は中くらい。
重心は相当上に定位。
質感は、表面はとてもなめらかで硬く、内側が薄くて硬く、芯の部分は若干緩い。
風味は弱く、淡く、酸が強い。

シャブリ

(A) シャブリ
(B) ドメーヌ・ジャン・グレイ・エ・フィス
(C) フランス・シャブリ
(D) シャルドネ / 2010

広がりは大きめで、やや横長の楕円形。余韻は長め。
重心は真ん中にあって安定。
質感は、表面が粗く、硬く、内側は分厚くやわらかく、芯は硬く太い。
風味は、強く、コク、熟成感やネットリとした旨みを感じ、酸は太く強い。

コート・ド・プロヴァンス ロゼ キュヴェ・マガリ

(A) コート・ド・プロヴァンス ロゼ キュヴェ・マガリ
(B) ドメーヌ・サン・タンドレ・ド・フィギエール
(C) フランス・プロヴァンス
(D) カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、サンソー、グルナッシュ / 2010

広がりは中程度で、横方向の楕円形で、余韻は短め。
質感は、明らかにタンニンを感じさせて表面が少し粗く、若干硬い。内側は薄くてやわらかく、芯は細くて緩い。
フルーティさを軸にサッパリ缶がある風味。細く染み込む酸。

オート・コート・ド・ボーヌ ルージュ クロ・ド・ラ・ペリエール

(A) オート・コート・ド・ボーヌ ルージュ クロ・ド・ラ・ペリエール
(B) ドメーヌ・バリゴー・ペール・エ・フィス
(C) フランス・ブウゴーニュ
(D) ピノ・ノワール / 2009

広がりは中から大で、横方向だが、弓なりに上顎に沿った形に広がる。
重心は明確に上にある。
表面の質感は硬質だが緻密で、内側は薄く硬く芯は細い。
風味は、カリッとした赤や青の果実に涼しげなハーブ。

シャトー・ビュイ・カステラ クリュ・ブルジョワ

(A) シャトー・ビュイ・カステラ クリュ・ブルジョワ
(B) シャトー・ビュイ・カステラ
(C) フランス・ボルドー・オー・メドック
(D) カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フラン、マルベック、プティ・ヴェルド / 2008

広がりは中程度で、横長だが、縦方向にもそれなりの長さがある四角。
重心は真ん中から下。
質感は、表面は硬く粗く、内側は分厚くやわらかく、芯は太く緩い。
弱めだが重い、黒果実とスパイスと土の風味。太く弱めの酸。

index
1.ワインをテイスティングするとは?
2.ワインの格付けとはなにか?(1)
3.【初心者のためのワイン講座3】ワインをテイスティングするとは?
4.【初心者のためのワイン講座4】土性による味わいの違い


伊藤由佳子 = 文 川村 隆 = 写真 ソリマチアキラ = イラスト
text by Yukako Ito photos by Takashi Kawamura Illustrations by Akira Sorimachi


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