【スペイン】創造力で廃棄物をインテリアに 世界No.1レストランの挑戦


ガラスを多用した店内には明るい日差しが差し込み、優しい色合いの木の床に柔らかな影を落とす。窓の外の緑をたっぷりと感じられる店内に案内してくれたソムリエは、私の大きなバッグを見て、淡い葡萄色のスツールを「お荷物置きに」と椅子の横に置いてくれた。「随分と軽いのですね」と聞くと、「ああ、これは実は店で使った発泡スチロールをリサイクルして、私たちが作っているのです」という返事が返ってきた。ミシュラン三ツ星、世界のベストレストラン50で2度世界一に輝いたレストラン、「アル・サリェー・ダ・カン・ロカ」での出来事だ。

何気なく置かれていたこのスツールは、ロカ3兄弟の最新のプロジェクト、「ロカ・リサイクラ」で作られたものだった。発泡スチロール製のスツールだけでなく、レストランから出るボトルなどをリサイクルして、グラスや皿を作り、店で使用するほか、インターネットでも販売している。

ジョアン・ロカは、「私たちのレストランでは、毎年2万2500本のボトルが開けられている。クリエイティビティを使って、不要だと思われるものを、便利で美しいものに変換していく」という。店の向かいにある工房で全てのボトルがリサイクルされており、同時にこれは年齢などの問題で就職が困難な人々を雇用し、支援するプログラムの一環でもある。現在は、真空調理で出るプラスティック袋をスタイリッシュで実用的なエプロンに変換するプロジェクトを進めている。


仲山今日子
元テレビ山梨、テレビ神奈川ニュースキャスター。World Restaurant Awards審査員。シンガポールに6年間在住、現地グルメ誌にも執筆中。


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