2023年の潮流を踏まえ、2024年の料理業界についてお聞きしました。人材不足や2024年問題、多様な声を頂きました。
「素材の持ち味をブラッシュアップした料理表現がより増えると思います」
渡辺雄一郎/ナベノ-イズム
「単なる美味しさを追求するだけでなく、何のために料理を作っているのか、食材のローカリティや
文化的背景 など、美味しさの先を追求した料理が出てくるのではないかなと思います」
桑木野恵子/里山十帖
「他業界との協働。日本の飲食業界ではあまりダイナミックな動きは起きにくいなかで、今まで無かった座組が多く生まれるような気がします(例:小規模店舗のシェフと大企業とのコラボレーション、個人店と大手デベロッパーの協働、等 )」
生江史伸/レフェルヴェソンス
「目下のところ、料理界全体が同じ方向に向かうとは考えにくい。一部レストランの料理料金の高額化による料金の二極化。」
手島純也/シェ・イノ
「2024年も原価高騰、人材不足は変わらないでしょう。インバウンドは増え、名の通っているレストランは商売的には順調だとは思います。レストランが投資対象になっているので、レストランの数は増えていくと思います。それに伴い人材不足は否めないか。若い料理人・サービス人は厚遇高給を求めて海外に流出。明るい要素はあまりないような気はします。特に東京は・・・・・。まだ成長を期待できるのは地方のレストランでしょうか。戦略を立てている所は、インバウンドや都心から人を呼び込める要素があり、地元の食材を多少は安く仕入れることが出来るので。とは言え人材不足はなかなか解消できない問題だとは思います。業界全体の労働環境、賃金体制の事があり難しい問題。企業、個人経営に関わらず、5年10年先を見据えた明確なヴィジョンを掲げ、企業努力、経営努力をしていかないと未来はないのかなと感じます」
飯塚隆太/レストラン リューズ
「2024年は2023年以上に人材の争奪戦になるであろう。そのような状況で人材を集めるには、いかに魅力的な条件で、なおかつやりがいを感じられる職場にできるかがカギだろう。そんな強い飲食店だけが生き残り、旧態依然のやり方の飲食店は淘汰される。銀行もブラックな事業所には融資しなくなる可能性も考えられる。来年以降その流れは顕著となり、飲食店の廃業件数は加速度的に増えると予想される。顧客ニーズにだけ応えるのではなく、時代の流れにアジャストしながら、独自性も打ち出し、付加価値を高めていくことが必要なのだと考えている」
前田元/レストラン モトイ
「今後も自然・社会・地球の持続可能性はさらに続いていく課題だと思います」
平木正和/アマン
「地域の食材を扱ううえで、その土地の生態系や自然環境を考慮すると、植物性を中心としたプラントベースの料理の必然性が増してくると思います。日本の水産資源が減少しているのは明らかですし、環境への負荷の大きい畜産や酪農を今後積極的に取り入れるのも永続的ではないと思います。仕入れが比較的安定しやすい野菜や、その土地に自生する野草や山菜などの天然食材を中心に扱うことが、継続的にその土地を表現する料理につながると思います。ただそれと同時に自然環境を考慮して使うべき食材とそうでない食材の見極めがとても重要です。生態系を壊さないような野草の収穫の仕方や、自然環境に負荷をかけない栽培の仕方、その食材を扱う店舗の規模、いろいろなバランス感覚が大切になってくるのではないでしょうか」
平田明珠/ヴィラ・デラ・パーチェ
「SDGs。この傾向は流行ではなく、このまま浸透していけばと思いますし、来年も続くでしょう。ローカルガストロノミーも続くとは思いますが、やはりだんだんと淘汰され始めるのでは、と感じます」
笹島保弘/イル ギオットーネ
「さらにDestination Restaurantの価値が高まると思う。日本人だけではなく、日本に来ているインバウンドのお客様も今後、日本の地方に足を運ぶようになると思う。その土地土地の魅力を伝えようとするシェフが増えているため」
糸井章太/オーベルジュ オーフ
「プラントベース、テクノロジーの導入、健康志向の食事、地元食材とサステナビリティ、エスニックフードの多様化、YouTube、TIKTOKなどによるさらなる動画配信の普及、NFTやブロックチェーンによる料理人の多角化、専門性、価値の創造」
星野晃彦/ブラッスリーポール・ボキューズ銀座
「原点回帰。来年にかぎった事ではないですが、時代の潮流がめまぐるしく変わるなかで、和洋中ジャンルを問わず、クラシックと呼ばれるもののブラッシュアップとそこから生まれる新しい料理。こういった流れが顕著になるのでは」
栗田雄平/銀座レカン
「来年はより環境問題がテーマになり、アニマルウェルフェア、ビーガン食、日本食、サスティナブルシーフード、などが、注目されるでしょう。また、ノルウェーシーフードが注目されます。日本国内にも多くのノルウェー水産物が輸入されています」
三國清三
「海藻料理が出てくると思う。また、地球に感謝する料理が広がると思う。地球に感謝する料理とは、生態系を守り、感謝する気持ちをもっ、食材をよりダイナミックに活かす料理のこと。かつてワインブームも北欧ブームも火付け役は料理界からだ。料理とは流行の先端を担う業界だから、料理界が自然のことを考えないといけない。そうすることで、一般のトレンドやムーブメントに繋がる。そういう崇高な業界に身を置いていると自覚して、地球に感謝する料理を一般レベルまで広げないといけない。こうした理由から、地方レストランの方が表現しやすくなると思う。また働き方改革で労働時間が定められたが、これは一般社会に適応する時間であって、料理界には当てはまらないため、経営者は苦境に立たされている。これをどうにかしないと飲食業界が縮小してしまう。売上は変わらないなかで、スタッフの最低賃金が国の定めに従うと見習いの給与とトップの料理長の給与の差が縮まり、スタッフの士気の低下につながってしまう。そのため、コースの料金を上げざるを得なくなる。しかしお金はかけられないので、手数をかけない自然派の料理が今後、増えるだろう。また経営者は講演活動、百貨店でのフェア、EC販売といった店舗外活動をやらなければ回らなくなるだろう。フェアやECを回すためには大量調理の経験がある人が有利になるだろう。店舗外活動を通し、「料理人はなんでもできる」という価値観に変わってくるし、そうしたマインドがないと生き残れないだろう」
奥田政行/アル・ケッチァーノ
「円安、物価高とかなり影響をうけている飲食業界は2024年も飲食店が淘汰されていく。二極化が更に進む(低価格と高価格。低価格から底上げされる)。都市での経営が困難になり、地方へと流れていく。良いことだと思う。すでに都市部は飽和状態が数年継続しているので、どんどん地方都市へ行き、雇用を生み、経済効果も増え、地域活性につながっていく。日本近海の海洋資源の衰退は少しずつ情報が料理業界にも広がってきていると思う。海を元気にするには、森、山を元気にしないといけいない。という動きが活発になるか?」
田村亮介/慈華
「ここにしかない文化、食材、風土を内包した料理を2024以降はより表現でき、そこに付加価値を感じていただける環境に進んでいるのでは」
高尾僚将/タカオ
「2024年のフードシーンの動きとして“持続可能な食の在り方”が問われると予想しています。近年、持続可能な食に対する議論が様々なところでなされ、生産者のみならず行政と一体となった取り組みが行われています。これからは、生産側だけでなく使用する我々が如何にして持続可能な食を創りだしていくかを問われると思います。その問いに対して、知見や独創性を基にした様々な提案をしていくことが料理人として求められる年になると考えています」
井上勝人/シェフズ・テーブル バイ カツヒト イノウエ
「“2024年問題”と呼ばれる働き方改革法案により物流・運送業界と建築業界が変革を余儀なくされ、様々な影響が出てくると思います。フードシーンにおいては、注文した食材が届かない、コストがさらに跳ね上がるなどの問題が加わると共に、食産業においても働き方改革の影響から、全体的に価格改正の方向に進まないと生き残れない状況になる厳しい時代が到来すると思われます」
米田肇/ハジメ
「ベターフードへの転換期。リジェネラティブな取り組みは必須となり、地球環境への配慮と美食の両立を実現するための幅広い視野と行動力を持つ飲食店がフードシーンを作っていく。食とテクノロジーは密接な関係になっていき、関わりのなかった分野と融合していくなどの挑戦する姿勢、新しい食の在り方の本質を考えることが求められる」
中村有作/コケ
「今までの料理シーンと現在・未来の環境を考え、新しい日本の食文化を構築する年」
谷口英司/レヴォ