定量データを支えるのは、定性的な経験値。物語を編む力も求められる。
実は、最も大切なことはレシピでは伝わらない。というのが「カレーのOS」の思い。特に「塩」「油」「水」「火」の使い方を“数値”で伝えるのには限界があるからだ。そして、それらを使いこなす「手加減」も重要な要素となる。ここでは、そんな重要事項を「カレーのOS」のツイート的に羅列してみた。
塩加減は、水を入れた直後に味見し、煮込みが終わってから再び味見する。
塩が足りなければ最後に調整できる余地を残しておこう。
★最終的にカレーの味を決めるのは塩。
★塩はスパイスの香りも引き立てる。
★ちょうどいい塩加減は困ったことに全員違う。レシピに書いてある塩の量は信用しないで!
★僕の好みの塩分濃度は、カレーの重量に対して1%~1.05%
★塩の銘柄を一度選んだら、同じものを使い続けてみて。
油のパンチ力を上手に使おう。
油は多ければ多いほどおいしく感じるかもしれない。
★油は加熱を効率的にする。鍋中の素材の表面全体にまんべんなく油が絡むよう、鍋肌や鍋底に当たった部分を混ぜながら加熱すると、熱の伝わりが円滑になる。
★きれいな油脂分を分離させて盛れば自分の食べたい量の油を摂取できる。
★野菜には、ある程度の量の油によって引き出される香味やうま味がある。
★強い香りを持つ油を活用すると油そのものがスパイスのような役割を果たすことも。
★ カレーでは調理の前半に油を加えることが多い。
★油には鍋中にある素材の熱伝導率を上げる効果がある。
水は鍋中の素材を融合して均質化してくれる便利な道具。
どこにいて何をしているかをイメージしよう。
★ゴムベラで鍋底や鍋肌をこするようにかき混ぜる。
★煮立ったらまた混ぜ、蒸気を鍋の外へ逃がし、味を深めながら煮る。
★脱水と加水をコントロールできれば、レベルは格段に上がる。
★味が決まらないときは、煮詰めるか塩を足す。
★前半に脱水、後半に加水。これがカレー作りの基本。
★(4人分の場合)仕上がり800mlのカレーを目指す。
★しっかり脱水してしっかり加水するのと、中途半端に脱水して少なく加水するのは同じ量になるけれど、前者の方がおいしくなる。
★肉も野菜も意外なほど水分を含んでいるから、水の代わりに素材の水分を引き出すのも面白い。
火は味と香りを深めてくれる最強のパートナー。
★玉ねぎを炒めるときは“強火~中火~弱火で炒める”のが鉄則。
★鍋中の温度はめまぐるしく変わる。新しい素材を加えれば温度は下がるし、ゴムベラを動かさなければ温度は上がる。
★“強火で炒め、弱火で煮込む”のがいい。
★鍋中は、火を強めたらどうなった?火を弱めたらどうなった?そのとき、どんな味が生まれる?それを常に観察してほしい。
★煮込むときには“火の通りにくい順に加える”といい。
すべては「塩」「油」「水」「火」を扱う「手加減」次第。
text 水 亨一 photo 八田政玄
本記事は雑誌料理王国2020年6・7月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は2020年6・7月号発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。掲載されている商品やサービスは現在は販売されていない、あるいは利用できないことがあります。あらかじめご了承ください。